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2022年1月19日
東レ株式会社
高効率で水素分離可能な高分子分離膜モジュールを創出
~50%以上のCO2排出量削減・省スペース化を実現~

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、水素を含む混合ガスから、水素を選択的かつ高効率に透過可能な高分子分離膜モジュールを創出しました。  開発品は、従来の分離膜モジュールと比較して、水素精製プロセスに必要なCO2排出量と、モジュール本数の50%以上の削減が期待できます。水素社会実現に向け、研究・技術開発を加速してまいります。  現在、カーボンニュートラル実現に向けた新エネルギーの活用として、水素の利用拡大が注目されており、将来の水素需要量の急増に対する省エネ・高効率な水素精製技術の確立が不可欠です。  水素精製技術の一つである膜分離法は、水素製造・利用時に不純物を除き、純度の高い水素を得るために、圧力差を利用して分離する技術であり、省エネ・省スペース化を実現するプロセスとして期待されています。分離膜のうち高分子分離膜モジュールは、水蒸気による性能低下が小さく、軽量性に優れている一方、透過水素純度や水素透過量に課題がありました。  今回、逆浸透(RO)膜で培った技術を駆使して、水素親和性材料を導入することにより、細孔構造を高度に制御した分離膜を新たに開発しました。開発した分離膜を用いた水素精製において、世界最高レベルの透過水素純度98%を実現しました。これにより、これまで透過水素純度を高めるために複数回のろ過が必要だったところを、1回の分離で純度を高めることができ、従来の分離膜モジュールと比べ、初期投資が削減できるだけでなく、省エネルギー化が可能となり、CO2排出量を50%以上削減することが期待できます(図1)。  さらに、モジュール化に際し、主要構成部材の流路材を最適設計にし、流動抵抗を低減することで、無機分離膜モジュールと比べ、2倍以上の高膜面積化を実現しました。これにより、モジュール1本あたりの水素透過性が向上し(図2)、水素精製プロセスに必要なモジュール本数を50%以下に削減できます。さらに、開発した分離膜を組み合わせることで、モジュール本数を75%以上削減でき、大幅な省スペース化が期待できます。  今後、国内外の各エンジニアリング会社との協力関係を構築しながら、水処理で培ったプロセス技術を用いて量産技術を確立してまいります。  東レは、「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」との企業理念のもと、「有機合成化学」、「高分子化学」、「バイオテクノロジー」そして「ナノテクノロジー」という東レのコア技術を駆使し、先端材料・革新技術を生み出し社会の発展に貢献してまいります。  なお、国際ナノテクノロジー総合展・技術会議「nano tech 2022」(東京ビッグサイト、2022年1月26日~28日開催)に、本技術を適用した高分子分離膜モジュールを出展する予定です。

【参考図】
図1 CO2削減効果(※東レ試算)
図2分離膜モジュール性能
※試算の前提
・モジュール同寸法
・水素純度一定運転(供給ガス組成: 水素/窒素=80:20+飽和水蒸気)
【資料ダウンロード】
https://go.mktg.toray/t012-WC-20220117-2021-01-download.html

以 上