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2008年9月1日
繊維トレンド9・10月号 2008 No.72

■海外動向

第11次5カ年計画の達成状況から見る 中国化繊工業の現状と環境対応

日本化学繊維協会 技術グループ 主任部員 大松沢 明宏

【要点(Point)】
(1)中国の化合繊生産は、ポリエステルを中心に引き続き速いテンポで拡大しており、2007年の設備能力は2,572万トンに達し、第11次5カ年計画の目標(2,500万トン)を2年目にして達成した。
(2)他方で、コスト競争力の強化が進んでいる。主力品種であるポリエステル長繊維を例に挙げると、単位当 たりの製品加工コストは1998年から2007年までの9年間で半減、エネルギー消費量も半減している。 更に、製品1万トン当たりの労働者数は150人から60人に減少しているなど、各種の合理化が進んで いる。
(3)差別化品の比率も高まっている。2007年の化合繊の平均差別化率は2005年度比10ポイント上昇し、 41%に達した。
(4)6月の中国国際化繊会議において、中国化繊工業協会は、「中国化繊工業の発展と環境保全」と題する化繊白書を公表した。同白書には、中国化繊工業の環境保全(省エネルギー対策、排水及び排煙対策など)への取り組み実績が示され、更に2010年までの対策目標が定められているなど、中国化繊業界の環境シフトの強まりが窺える。

東京、パリ、上海 自由なデザインと生き方で -デザイナー 佐藤真弓さんへのインタビュー-

横川 美都 研究員

「近くに友人がやっているショップがあるからのぞいてみませんか」仕事の打合せが終わった後で、日本人スタイリストから声をかけてもらったのが、オリジナルブランドMayumi SATOのショップ経営をするデザイナー佐藤真弓さんとの出会いでした。東京からパリ、そしてここ上海へと拠点を移してきた佐藤さんは優しい雰囲気の中に強い個性と意志を感じさせる女性です。ショップがあるのは、上海の中心部、高級百貨店やホテル、オフィスが立ち並ぶ静安寺付近からすこし南に下がった静かな裏路地、安福路。地元の人たちの生活感を残しつつ数年前から小さな画廊がポツポツとでき始め、最近はすぐそばに超高級オフィスビルや、知る人ぞ知るワインバーができるなど、欧米人の姿も多くなったこの通りに、2007年9月にお店を構えた佐藤さん。彼女が初めて上海にやって来たのは2006年2月。それまで一度も上海を訪れたことがなかったどころか、「人生のリストの中に“中国”という文字さえなかった」という彼女がどのようにしてたった1年半という短期間でショップを持つことができたのでしょうか?出会って数日後に、さっそくインタビューに伺いました。

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中国におけるファッションビジネス教育のあり方 第2回 -上海東華大学における実験講座を中心にして-

宝塚造形芸術大学 専門職大学院 デザイン経営研究科長 教授 菅原 正博

【要点(Point)】
(1)前号では、中国上海での実験講座の概略を紹介したが、本号ではワークショップの具体的な内容について説明することにしたい。
(2)中国でも、日本のファッションビジネス教育のあり方について、中国の教授たちが日本での留学を通じて知識移転を積極的に行ってきたが、今回は、日本で体系化した教育カリキュラムを開発した当事者が、自ら、中国の大学院のカリキュラムに沿って知識移転を図った、という点を本稿で中心にまとめた。
(3)本来、ファッションビジネスは極めて実践的な実務なので、単なるアカデミックな知識レベルの移転では中国の産業基盤にとってあまり役立たない。
(4)むしろ、必要なのは、業務を担当する責任者の力量を高めるスキルなり能力のレベルアップにつながる教育である。例えば、ブランディングに責任を持つブランド・マネジャーの業務を如何にすれば中国の実務担当者に知識移転ができるか、という点である。
(5)今回は大学院生を対象にワークショップを通じて知識移転に関する実験講座を行った。本号ではその経緯を中心に報告することにした。

■国内動向

日本のインテリアファブリックスを中国市場に -インテリアファブリックス企業の中国進出課題と手法-

坂口 昌章 客員研究員 有限会社シナジープランニング 代表取締役

【要点(Point)】
(1)日本国内の住宅着工戸数の横ばい、人口減少、原材料高騰、中国の人件費高騰など、インテリア業界を取り巻く環境は厳しい。一方で、小売り市場の競合は、大型専門店の成長、外資・異業種の参入、インターネット通販等で激化している。
(2)中国マンション投資は一時期のような過熱から鎮静に向かいつつあり、投資対象も大都市から地方都市に拡散している。また、親日的な80後(バーリン・ホ~)世代が家庭を持つ年齢に達しており、日本企業にとっては進出の好機である。
(3)目的の曖昧な中国展示会出展には意味がない。また、商社依存もエージェント中心の中国ビジネスモデルとはかみ合わない部分がある。中国市場進出には自分の頭で考えて対応することが必要である。
(4)中国では、ビジネスと政治が直結している。中国の業界団体は政府機関であり、まず、日本の業界団体と中国の政府機関がコミュニケーションを取り、中国ビジネスに必要な情報を取得し、パートナー企業を獲得することが求められる。
(5)中国市場進出には長期的視野が欠かせない。日本企業が焦っても巨大な中国は動かない。まず、中国市場、中国ビジネスの調査を行い、綿密な準備を整えながら、一つ一つの案件に対応していくことが必要。同時に、中国人社員を将来の中国法人経営者候補として雇用すると同時に、会社の改革を進めていくことも重要だ。
(6)中国ビジネスは異質なビジネスであり、企業組織の改革が不可欠。具体的には、高付加価値戦略、ブランド戦略、明確な業務フローと役割分担、IT活用による業務の「見える化」推進、日本本社の国際化などが課題。

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高機能・ハイテク資材分野の開発強化とグローバル戦略に 活路を求める北陸大手染色加工メーカー

小山 英之 特別研究員

【要点(Point)】
(1)2008年の北陸産地の景況は、下半期に入って急速な悪化を示し、戦後第13回目の不況に突入している7~9月期は端境期のため、例年、テキスタイル工場の稼働率が落ちるが、今年は異常なコストアップと先行きの不透明感から流通各段階でリスク回避の動きが強まり、過去の大不況に匹敵する急激な受注量の減少に見舞われている。
(2)染色業界はエネルギー多消費型産業であり、原燃料価格急騰の直撃を受け、今春以降、企業収益の悪化が深刻化している。また、韓台染色業界の高機能加工のレベルアップが進んでおり、北陸産地染色業界としては、高機能分野の一段の技術開発、超機能分野及び次世代繊維技術分野の技術開発が緊要になっている。

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シリーズ高コスト先進国における企業生き残りのKey Factor -第7回 「ブランド」について考える その(3)-

青山学院大学 経営学部 准教授 ヘリオット・ワット大学経営大学院 ロジスティクス・リサーチ・センター  研究員 東 伸一

【要点(Point)】
(1)マーケティングの考え方とその重要な構成要素であるブランディング概念は、マーケティングが誕生した歴史的背景の特殊性の中で発展してきたが、(前回・前々回の連載での事例紹介にも見られるように)現実のブランドには、それとは異なる経路を通じて個別文化を創造することによって顧客との長期継続性を獲得するにいたったものも存在する。
(2)初期のマーケティングは、大規模製造企業による市場創造活動を舞台として発展を遂げてきたが、その歴史的変遷過程において、マーケティング活動の主体は製造業者と販売業者のパワーの相克の中で多様化を遂げた。小売企業によるマーケティング活動の特徴の延長線上には、組織でもなく市場でもない、「第三の空間」としての市場型関係性空間の可能性を見出すことができる。
(3)マーケティング行動体系としての市場型関係性空間は、マーケティング活動という経済的行為に内在する経済合理的行動と人間合理的行動が自己組織化するメカニズムを統合した概念であり、伝統的なマーケティング/ブランディングの枠組みだけでなく、より文化創造的なマーケティング/ブランディングの側面の把握を支援する。

ヤングマーケット動向 第3回

東京ファッションプランニング株式会社  デザイン・企画カンパニー社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)OLエレガンス系雑誌、ギャル系雑誌中心に、リアリティを前面に打ち出す実需型ファッション雑誌がヤングマーケットでは多い。
(2)ファッション雑誌に高頻度で登場するブランドは、ヤングにおける人気ブランドと考えることができる。OL系エレガンスブランドはエレガンス素材重視、ギャル系エレガンスブランドは旬の素材感重視、スタンダード系カジュアルブランドは天然繊維志向、エコ志向が強い。
(3)ヤング攻略の3Sは、「スピード」「サステナビリティ」「スピリット」。メディアミックス戦略の重要性が増している。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

中国をめぐる繊維貿易ルールの再編

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主任部員 鍵山 博哉

■図表解説

トピックスチャート 先行するファッションEC企業、 百貨店はEC衣料品販売市場拡大の波に乗れるか

■統計・資料

主要合繊別・国別・メーカー別設備能力(現状及び増設計画) 合繊原料編

・カプロラクタム ・テレフタル酸 ・DMT ・エチレングリコール ・アクリロニトリル

 

主要合繊編

・ナイロンフィラメント ・ポリエステルフィラメント ・ポリエステルステープル ・アクリルステープル  ・レーヨンステープル  ・スパンデックス      ・スーパー繊維

<付録> 欧米巨大化学企業の繊維事業再編の推移