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2020年7月22日
テレワークは常態化するのか
取締役 エグゼクティブエコノミスト
増田 貴司

 コロナ危機に直面して、日本でも在宅勤務などでテレワークの導入が急速に進んだ。  一方で「物理的に人が集って話をすること」には、デジタル技術では代替できない価値があることにも気づかされた。場の雰囲気や微妙なニュアンスの伝達、創造的な発想を生む雑談、物理的な触れ合いがもたらすぬくもりや安心感などの価値だ。これらに限界があるテレワークでは業務の生産性が落ちてしまうと判断して、新型コロナウイルスの収束後には元の働き方に戻すと決めた企業もある。  だが現時点でテレワークに見切りをつけるのは時期尚早だ。理由は3つある。  第一に、既存の仕事をそのままテレワークに置き換えてみただけでは、テレワークの真の有効性を判断できない。デジタル技術を活用しつつ、仕事のやり方を変えることで生産性の向上が図れないかを模索すべきだ。  第二に、コロナ禍で半強制的に在宅勤務を経験して人々の価値観が変化した。通勤して会社で働くことを前提とした従来のスタイルに疑問を抱き、これを機により健全で合理的な働き方に変えるべし、と考える人が少なからずいる。テレワークを緊急避難的措置と位置づけて安易に元の働き方に戻せば、危機に学び、変わろうとする社員のモチベーションを下げてしまう。  第三に、現状のテレワークの限界を突破する手段の開発が進んでいる。仮想現実(VR)などの技術を使い、遠く離れた参加者同士がオンラインで心のつながりを「密」にできるツールが、近い将来に実用化されそうだ。  テレワークがコロナ後の「新常態」として定着するかどうかは、それを企業の生産性と個人の幸せの向上につなげられるかどうかにかかっている。判断がつくまでには2~3年の時間が必要だろう。 (本稿は、2020年7月21日 日本経済新聞夕刊「十字路」 に掲載されました)