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2019年7月25日
高齢ドライバーの運転免許証自主返納問題
部長(D&WLB推進部)
宮原 淳二

 先日、実家の母親から電話があり、「お父さんが門扉に車をぶつけたのよ」と聞かされた。とても運転の上手な父親だったが、80 代半ばという年齢もあり私自身大変ショックを受けた。最近、高齢ドライバーが幼児を死亡させる痛ましい事故が相次ぎ、今度はうちの父親の番かと思うと他人事ではない。今年4 月に起きた東京・池袋の高齢ドライバーによる母子死亡事故後、SNS 上では「高齢者の免許証を強制的にはく奪すべき」や「若い世代が高齢ドライバーの犠牲になる世の中であってはならない」等、書き込みはとても過激だ。内閣府の「平成29 年交通安全白書」によると、75 歳以上のドライバーによる死亡事故は、75 歳未満のドライバーと比較して、免許人口10 万人あたりの件数が2 倍以上になっており、高齢ドライバーの免許証返納を求める声は日に日に高まっている。  こうした状況にあっても、免許の返納を訝いぶかしがる高齢者は多く、75 歳以上の免許保有者全体に占める返納率の割合は2017 年度で4.7%と極端に低い。「お父さん、そろそろ免許を返納したら」と子供たちが言おうものなら、「年寄り扱いしやがって。まだまだ元気じゃ」と聞く耳を持たない。「交通手段=自家用車」という固定概念を払拭させるため、ここはひとつ車がなくても生活に不自由しない社会に焦点を当て、企業と協働しながら免許証の自主返納に対し先進的な取り組みをしている自治体を紹介したい。  スバルのお膝元の群馬県太田市では、市民が無料で乗れるコミュニティバスを走らせ、ヤマハ発動機がある静岡県では電動アシスト自転車購入時に1 万円割引サービスを展開。同じ静岡県の袋井市では歩行に着目し、「健康マイレージ」制度を設けており、スマホアプリで歩数をカウントし、貯まったポイントでコミュニティバスに無料で乗れる。またJTB では、70歳以上を対象に自宅と指定した2 カ所間を定額乗り放題のタクシー1 カ月定期券「JTB ジェロンタクシー」を企画している。福岡県北九州市や長野県諏訪市で限定発売し、好評を得たようである。こうした施策を一過性の取り組みで終わらせず、企業、自治体、住民が知恵を絞って切れ目のない施策を考え続けることが重要だ。まだまだ免許証返納率は低いが取り組みの成果も徐々にあらわれ、2016 年は前年比30.6%、2017 年は前年比56.1%と急激に向上している。社会全体で免許証自主返納に対する理解を深め、二度と同じような事故が繰り返されないよう、安心して暮らしやすい世の中にしていきたいものである。