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2018年5月2日
変化と挑戦を楽しむ姿勢

 哲学者アランは言う。「本当を言えば、上機嫌など存在しない。だから、幸福とはすべて、意 志と自己克服とによるものだ」。幸せになるには、気の持ちようが大切というわけだ。この教え は、変化が激しく予測不能な現代には一層重要だ。  先が読めない時代には、変化を嫌ってリスクをとらない企業は発展できない。予測不能な 状態を悲観的にとらえず、変化を楽しみ、前例のないことに挑戦する姿勢が求められる。   既往研究によれば、新たなテクノロジーが普及し、社会が激変する時代には、リスクと報酬 のバランスは大胆な行動を取る方に有利に働く。(1)探究すべき新分野が急増したこと(2) 人々の行動がもたらす影響は予見できないこと(3)失敗のコストが劇的に下がったこと―― などが背景にある。  ベネチアは11世紀以降繁栄し、1500年には1人当たりの豊かさが世界一の国だった。し かし、ルネサンス時代の外的ショック(オスマン帝国の地中海進出、新航路発見による競争環 境の変化)に対応できず、衰退した。自国の繁栄は永遠に続くと慢心し、国民が変化を嫌った ことが敗因になったという(イアン・ゴールディン、クリス・クターナ「新たなルネサンス時代をど う生きるか」)。  かといって、義務感から苦行として変革・挑戦に取り組んでも成果は期待できない。同じ条 件で競争する場合、楽しんで参加する方が勝つからだ。時代を先取りし、新市場を創造して 勝ち残っている企業には共通点がある。ゼロから作り上げること、白地のキャンバスに絵を描 くことに面白さを感じている点だ。  個人の覇気に期待したり、危機感をあおったりするだけでは弱い。社内に挑戦したくなる空 気、変化を楽しむ雰囲気をつくる取り組みを成長戦略の柱の一つとすべきだ。 (本稿は、2018年5月2日 日本経済新聞夕刊「十字路」 に掲載されました)