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2009年12月1日
ディズニーの魔法でキツネになった人
シニアコンサルタント
福田 貴一

 ディズニーランド、ディズニーシーを合わせた東京ディズニーリゾート(TDR)への入園者数は本年4月~ 9 月の半年間で1,230 万人を超え、過去3 位の記録だったそうです。依然として根強い人気です。  東レ経営研究所は、TDR がある駅(舞浜)の隣駅の近くにあります。そのため、朝の通勤時は“夢と魔法の王国”と言われるディズニーの世界へ向かう人たちと、夜はそこから帰ってくる人たちと、同じ電車に乗り合わせるのが常です。  ある日、仕事を終えて東京方面へ向かう電車に乗っていると、次に止まった舞浜駅から“いつも”の人たちが乗ってきました。われ先に車内に駆け込んでくるその姿は、まるで椅子取りゲームのよう。座席を獲得する戦いに敗れたある人の様子が、今でも思い出されます。  直後その人は、まるで自分に言い聞かせるようにこう言いました。「すぐ着くから、無理に座らなくても、平気よ平気。すぐに着くわよ」まるで運よく席をGET した仲間を冷ややかに見るかのように。  舞浜駅から終点の東京駅まで行っても約15 分。 “夢の国”では1 時間を超える列に並ぶことは珍しくなくても、帰りの電車くらいは座っていたいところなのでしょう。でも、それが叶わないときの負け惜しみのような心理が働いた瞬間に出くわしたのです。  イソップの寓話にこんなものがあります。   道を歩いていた一匹のキツネが、木になっているおいしそうなブドウを見つけました。のどが渇いていたので、キツネはブドウを採ろうと何度もその房を目がけて跳びつこうとするのですが、高いところにあるので届きません。仕方なく諦めて帰ろうとしたとき、そのキツネは「あれは美味そうに見えるけど、きっと酸っぱいに違いない!」とつぶやくのです。  キツネは、本当は欲しいのだけれど採ることができなかったという不愉快な気持ちを、そのセリフに込めて拭い去ろうとしたのです。英語で“Sour Grapes(酸っぱいブドウ)”と言えば「負け惜しみ」という意味。  どうしても得られないものを「たいしたものではない」と思ったり、反対に理想ではないけれど自分の持っているものを「案外良いものだ」と無意識のうちに思い込むことを、心理学では「合理化」と言います。  こうした心の動きは、ストレスや不安から自分の精神状態を守るために時として必要なものでもあります。しかし、それが極端だと事実を誤って認識することにもつながるので注意が必要です。  ところでキツネの話には続きがあるとか、ないとか・・・。   キツネには届かなかったブドウですが、空を飛ぶ鳥には難しいことではありませんでした。鳥は突くように食べるので、その勢いでいくつかのブドウは地面に落ちてしまっています。そこで、キツネは夜になってから誰にも見られていないことを確認して、落ちたブドウを食べにやってきたということです。  さて先ほどの電車の人、実は、その先の新木場駅で空いた座席を目がけて小走りをしていきました。 あの人は、もしかしたらキツネの魔力に取り憑かれていたのかもしれません。これも“夢と魔法の王国”が持つ力なのでしょうか。