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2015年9月1日
人口減少下における人手不足対策
部長(D&WLB推進部)
宮原 淳二

増加が続いている訪日外国人旅行者について、日本政府観光局(JNTO)は今年上半期(1~ 6月)の推計値が、過去最高だった前年同期から46%増え914万人に上ったと発表した。このペースでいけば、年間2,000 万人の突破も夢ではない。弊社は秋葉原にオフィスを構え、日々数多くの観光客を目にしているが、大手居酒屋チェーンや中華料理店では、従業員も観光客も中国人という場面に出くわすことも多く、「ここは上海か?」と見まがうほど、その存在感を増している。  ホテル業界も訪日観光客の影響もあり活況を呈しているようだ。2020年の東京五輪をにらみ都内では外資系ホテルの開業が相次ぎ、人材の不足感が出てきている。厚生労働省によれば、ホテルを含む2014年の宿泊・飲食業の求人数は81万7,000人と前年から6%増えた。少子高齢化の影響で、今後生産年齢人口が漸減していく中、観光客にどうきめの細かいサービスを提供していくかが、今後の鍵と言える。  そんな中、伝統あるホテルニューオータニ(東京・千代田区)は、配膳や会計など1人で複数の業務を担えるスタッフの割合を現在の5割から8割へ増やす方針だ。繁閑に応じて人員を柔軟に配置し、顧客の要望に迅速に対応できるようにするためだ。IT(情報技術)システムの導入や部門を超えた人事交流なども進める。筆者も国内出張が多いため、チェックアウト時の混雑や朝食時の席の確保などで辟易することが少なくない。このホテルでは、各店舗の入り口の混雑状況を共有するシステムを導入し、入店や会計を待っている来店者の状況に応じて、余裕のある店舗から混雑している店舗にスタッフを派遣する。また宿泊やレストランといった現場の部門と営業部門との人事交流も加速させるようで、例えば年末年始の繁忙期は営業担当者が現場の作業を手伝う。混雑緩和により顧客サービスの向上が図れる一方で、営業担当者は受注した顧客の『現場の声』を拾うことで、きめ細かい営業サービスに役立てることが可能だ。従来であれば、繁忙期に外部からの人材派遣に頼っていた部分を自社社員の複数業務化で賄うことで、人手不足の解消と派遣費用削減に伴うコスト削減、ひいては営業活動の強化につながる「1粒で3度おいしい」取り組みになる。  同じく、運送業も深刻な人手不足が懸念される。3K職種(きつい、汚い、危険)と揶揄された運輸業であったが最近は変化の兆しが見られる。女性ドライバーの採用だ。佐川ホールディングスでは、人手不足を補うため「佐川女子2万人計画」が進行中である。ドライバーはプロ野球でいうところの「先発完投型」の長時間労働業種であったが、人口減少に伴い、こうした働き方では男性ドライバーの確保が困難になった。かつて元ロッテの村田兆治投手が先発完投した時代のような働き方は敬遠されるようだ。そこで「先発」「中継ぎ」「クローザー」と現代野球のように、分業をすることで、専業主婦の方や短時間勤務者など女性ドライバーの採用が広がったようである。こうした取り組みは今後増加が見込まれる高齢者の活用にも大いに参考になろう。人口減少下で、人材が集まらないと嘆く前に、現場の働き方を見直し、限りある人材をいかに有効に活用するかが鍵である。人手不足が慢性化している飲食・宿泊・運輸のような業界に学ぶべきことは意外と多いのだ。