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2017年9月22日
経営センサー9月号 2017 No.195

■今月のピックアップちゃーと

国内私大は45%が定員割れ ~少子化にもかかわらず増え続けた私立大学

■特別レポート

トランプ大統領と激動の世界 ―東アジアに迫る危機―

立命館大学 特別招聘教授 薮中 三十二

トランプ政権の迷走 トランプ政権が発足し、8カ月が経ったトランプ政権が発足し、8カ月が経った。 この8カ月、アメリカではトランプ大統領が常にトップニュースを提供してきたが、その大半はロシア疑惑に絡んだものであり、トランプ大統領自身が思いつきのツイートや怒りで物事を余計に大きくした、言わばオウンゴールのようなものだった。怒りから行ったFBI長官の解任はその最たるものだった。その結果、特別検察官が任命され、捜査が息子のトランプ・ジュニアにまで及ぶこととなった。このロシア疑惑はとどまるところを知らず、トランプ政権を苦しめ続けている。その一方、国内の主要課題はまったく手付かずの状態であり、政権発足の初日に廃止すると豪語してきたオバマケアの廃止に失敗し、デイールメーカーとしてのトランプ大統領の神話も地に落ちたのだった。

■経済・産業

ファインケミカル産業の現状と将来 ―メリルリンチ日本証券 榎本尚志氏インタビュー―

メリルリンチ日本証券株式会社 調査部マネージング・ディレクター 榎本 尚志 氏 産業経済調査部 シニアエコノミスト 福田 佳之

【要点】
(1)
日本のファインケミカル事業は長年にわたって高い収益を稼ぎ出しており、日本の製造業にとって「虎の子」的な存在でもある。ファインケミカル産業の特徴、製品トレンド、収益構造、そして外的環境の変化等について、同産業に造詣の深い榎本氏にインタビューした。
(2)
インタビューのキーワードは以下の通り。
・差別化と高付加価値
・当たりはずれ
・新興国勃興
・環境対応の動き
・キャッチアップ
・海外のユーザーとライバルの増大
・付加価値の川下シフト
・技術的・人的蓄積
・テクノロジー変化
・数量拡大
・先行者メリット
・コモディティ化
・R&D環境の変化

PDF : 詳細(1,444K)

 

スマートウェアが人の暮らしにもたらすもの ―IoT化の波が衣服も変える―

繊研新聞社 編集局 本社編集部 記者 小堀 真嗣

【要点】
(1)
スマートウェア、スマートテキスタイルの開発は、センサー技術などICT(情報通信技術)の高度化が後押ししている。
(2)
スマートウェアを含むウェアラブル製品の市場規模(台数ベース)は、2020年頃に世界で3倍に拡大する。
(3)
あらゆるモノがIoT(モノのインターネット)化という革新を起こしている。使用価値が高まるのなら、衣服もIoT化の例外ではない。
(4)
独自の技術・開発力を持つ素材メーカーにとって、スマートウェア市場は新たな商機になる。国内外の有力企業が高い関心を寄せている

■産業技術

パリ協定離脱の裏にある「トランプ戦略」を検証する ―"米国第一"のエネルギー・産業政策は成功するか?―

主席研究員(産業技術) 岩谷 俊之

【要点】
(1)
米国石炭業界はトランプ氏に大統領の座をもたらした重要な支持層である。今回のパリ協定離脱にはトランプ氏にとって"恩義ある"石炭業界の振興政策を進める上での制約排除という側面がある。だが「協定の中身が不公平」「パリ協定が実行されても温度上昇抑制効果は小さい」と言った彼の批判を妄言とは言い切れない。
(2)
CO²回収や貯留といった付帯コストなし、言い換えれば「CO²出し放題」で米国産石炭を火力発電に使えば電力コストが下がり、米国産業は安いエネルギーコストを享受し得る。それによって米国製品の価格競争力が上がる可能性もある。
(3)
パリ協定を脱退したからといって、米国の環境関連企業が世界の「CO²削減マーケット」獲得に遠慮するはずはない。安いエネルギーコストを背景に価格競争力が高まれば再生可能エネルギー発電などのCO²削減市場でも米国企業は有利になり得る。
(4)
だが、そんなトランプ大統領の巧妙な「米国第一主義シナリオ」も再生可能エネルギー発電のコストが石炭火力より安くなった途端に破綻する。そして「石炭火力より安い再生エネ発電」は徐々に現実のものになりつつある。

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■視点・論点

イノベーションとブランド ―いかにしてブランドが構築され維持されるのか―

東洋学園大学 現代経営学部 教授 井原 久光

筆者は、本誌2014年3月号において「コア・インフォメーションという理論仮説」というタイトルで、クリスマスが「恋人の日」になったメカニズムについて説明した。その仮説とは「集団レベルのイメージは突然位相を変えたように変化する」というものであった。ヒントは結晶化という現象で、人々が共通に抱くイメージは、水が氷になる瞬間のように突然変わるというアイデアである。

■マネジメント

[連載]わが国の無形の資源を活かす(第2回) 効率一辺倒ではない日本的資本主義の原点を見直す ―ドイツ自動車、重ねての排ガス不正事件にみる利益一辺倒の暴走―

株式会社ロゴ 代表取締役社長 津曲 公二 株式会社ロゴ 代表取締役副社長 酒井 昌昭

【要点】
(1)
日本の労働生産性は低いと言われるが、効率のみを追求すれば、日本を壊すことになる。
(2)
現在、世界を席巻しているグローバリズムは、効率一辺倒、つまり利益一辺倒の企業活動を強いている。
(3)
真摯な技術開発の努力を怠った結果として、ドイツ自動車メーカーの不祥事が繰り返し起きている。
(4)
道徳と経済の融合を説いた、渋沢栄一の日本的資本主義の原点は、今日的な重要性を増している。特に消費者や社会への利益還元が、企業の安定した発展という面からも必須である。
(5)
平等でオープンなわが国、階層のないわが国において、「すり合わせ技術」と「おみこし経営」は相性がよい。経営者としては、「どこでもリーダー」の発掘と任せる度量が求められる。

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■人材

人材育成の視点 働き方改革と「同一労働同一賃金」 ―「同一労働同一賃金」の取り組みは日本的雇用慣行を変えうるか―

株式会社東レ経営研究所 特別研究員・社会保険労務士 金子 安則

【要点】
(1)
「同一労働同一賃金」は企業横断的に「職務を基準」に賃金を決める考え方で、企業別に「人を基準」に賃金を決める日本的雇用慣行とは相いれない考え方が根底にある。日本で「同一労働同一賃金」に取り組む場合、日本的雇用を無視したものであれば企業の現場が混乱する一方、現状の働き方に配慮しすぎると改革の効果が薄れる。昨年12月に公表された働き方改革の「同一労働同一賃金」ガイドライン案はこの難問に取り組んだものである。
(2)
ガイドライン案で取り上げる「同一労働同一賃金」とは、非正規雇用労働者の正規雇用労働者との処遇格差を是正するため企業内の不合理な格差を禁止するものであり、日本的雇用慣行を変えるものではない。「同一労働同一賃金」という言葉に惑わされず、ガイドライン案に示された内容を正確に理解し、企業単位で実情に合わせ対策を講ずる必要がある。
(3)
他方少子高齢化が進む中、日本の労働市場・雇用慣行を巡る社会経済環境は大きく変わりつつあり、安倍政権の働き方改革を契機としてこの動きが加速する可能性がある。今後の社会経済環境の変化を見据えて中長期かつグローバルな視点で企業として日本的雇用慣行の見直しに向け対応を検討する時期に来ている。

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■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード

「都市鉱山」「ゲノム編集」

■お薦め名著

『ハーバード戦略教室』

シンシア・モンゴメリー 著 野中 香方子 訳

■ズーム・アイ

見えないものが見えるとき

産業経済調査部 川野 茉莉子

昨年息子が誕生し、母となりました。初めての出産を前に助産師さんから受けたひと言にはっと気づかされました。「妊娠して急に周りに妊婦が増えた気がするでしょう? でも妊婦さんは以前から周りにいたのに見えていなかっただけなのよ」。