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2017年8月2日
繊維トレンド7・8月号 2017 No.125

■特別レポート

東レ株式会社・株式会社東レ経営研究所共催繊維産業シンポジウム講演抄録 産地活性化に向けた価値創造

講師:株式会社三越伊勢丹ホールディングス  代表取締役社長(御講演当時)大西 洋氏

去る3月3日に、金沢市のホテル日航金沢において、東レ株式会社と株式会社東レ経営研究所の共催で、繊維産業シンポジウム『北陸産地の新たな成長と産業競争力強化』を開催しました。当日は、専修大学経営学部三宅秀道准教授、株式会社三越伊勢丹ホールディングス 大西洋代表取締役社長(御講演当時)、東レ株式会社石野裕喜夫理事の3人の講師に御講演いただきました。本号では、そのうち、株式会社三越伊勢丹ホールディングス 大西洋前代表取締役社長の講演をご紹介します。 なお、石野理事の講演内容は、『繊維トレンド』5・6月号、三宅准教授の講演内容は、弊社経営情報誌『経営センサー』5月号でそれぞれ紹介済みです。

【要点】
(1)
第11回アジア化繊産業会議は、2017年4月13~14日にインド・ムンバイで開催された。世界の化繊生産に占めるアジア化繊産業連盟加盟国・地域のシェアは、1996年(第1回アジア化繊産業会議)の58%が、2016年は90%を占めるまで高まっている。
(2)
各国・地域とも、化繊産業の高度化、すなわち、高機能繊維、高性能繊維の発展や非衣料用途の開拓といった方向性で進んでいくことが重要という認識で一致した。こうした動きを受け、アジア化繊産業連盟のもと、標準化作業委員会が正式にスタートすることとなった。
(3)
日本からは、これまでの会議と同様、合繊の中長期的な需給見通しに関する報告を行った。2020年も需給ギャップが残ると予測される中、社会構造の変化により繊維需要も変化すること、こうした社会構造の変化を見据えた需要創造が重要であると指摘した。
(4)
世界最大の化繊生産国である中国からは、第13次五カ年計画のもと、供給過剰の対応を急ぐとともに、高性能繊維、環境対応・バイオ繊維への注力など、量から質へ転換する姿勢が示された。
(5)
インドからは、将来の繊維需要見通しについて、経済成長、中間層の拡大、消費高度化を背景に、衣料用のみならず非衣料用繊維需要についても高い成長を見通しており、化繊産業への投資に対して積極的な姿勢がみられた。

■ファイバー/テキスタイル

第11回アジア化繊産業会議の概要 -アジアの化繊産業は産業の高度化の方向性で一致、 標準化作業委員会がスタートへ-

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主席部員 鍵山 博哉

 

2018年春夏向け糸と生地のトレンドと ファッションの先端を行くデニムの動向

株式会社インテグレード 代表取締役社長 欧州繊維専門月刊誌『Twist』 在日特派員 永松 道晴

【要点】
(1)
2018年春夏向けのピッティフィラティでは、各社は麻やビスコースでクールな肌触りやザラザラ感を出したり、ウールや綿で柔らかさを強調したりして、綿・麻・ウールといった天然繊維を巧みにブレンドする工夫を凝らしている。これにシルクやラメ素材、赤などの目を引く色でアクセントを加えている。控え目ながらも光沢やきらめき効果を出した糸・生地が大勢を占めており、欧州の不安定な政治経済状況とは裏腹に、人々が明るい楽観的な雰囲気を求めていることが展示会から読み取れる。
(2)
引き続いて開催されたミラノウニカでは革新的な技術と想像的なデザイン、伝統的なクラシック生地を秋冬向けから春夏向けにも拡大するトランスシーズナルな取り組みが新しい波となって来場者を魅了した。シルク、カシミア、ファインウール、モヘア、アルパカ等の高価な天然繊維が夏物向けの主要素材となっている。
(3)
伝統的なピンストライプの織物を今風に見直したランバンやディオールのジーンズスーツのように、フォーマルな織物がこれまでには無かった形で使われたり、スポーティでカラフルなアクセサリーとコーディネートされるようになり、スーツにネックレスやT シャツを合わせるなど、従来とは違った新しい感覚が、トレンディでエレガントなファッションとして注目されている。
(4)
このようなトレンドの変化をデニムにも見ることができる。プレミアムなカジュアルファッション分野の市場拡大の波に乗って、デニムの織物やニットがウール、カシミア、麻などの高級天然繊維素材で作られてラグジュアリー領域に参入し、すり切れて年代物めかしたジーンズパンツとカシミアのジャンパーを合わせるなどradical chic(過激で粋な)ファッションを先導している。

若手デザイナーと産地のコラボレーション - 世界で活躍するデザイナー育成を目指す Tokyo 新人デザイナーファッション大賞プロ部門のビジネス支援-

繊維・地域振興調査部 安楽 貴代美

【要点】
(1)
2011年から始まったTokyo新人デザイナーファッション大賞プロ部門は、毎年10ブランドを選出し、入賞したデザイナーには3年間のビジネス支援を行っている。CREATORS TOKYO は、その支援デザイナーと、支援を卒業したデザイナーで構成されるチームの名称である。
(2)
2016年度から支援の一環として、産地とのコラボレーションによる素材開発が始まった。
(3)
開始から7年目を迎え、第1線で活躍するデザイナーも増えてきた。今後も、若手支援の場を提供し続けることが重要である。

日本の中小繊維企業の再興 変わらない、という革新 -葛利毛織工業株式会社と有限会社カナーレのケース-

株式会社フランドル 経営本部 経営統括室 経営戦略部 課長 篠原 航平

【要点】
(1)
尾州産地は毛織物工業が有名な日本を代表する繊維産地である。
(2)
現在尾州産地では無杼織機の1種であるレピア織機が広く使用されているが、旧式の有杼織機であるションヘル織機も依然として一定台数使用されている。
(3)
葛利毛織工業はバブル経済崩壊後、高付加価値なテキスタイル生産へ舵を切り、品質の追求を進めた。ションヘル織機主体という覚悟を決めるきっかけを作ったのは、海外からの高い評価であった。
(4)
経営資源の少ないカナーレにとって、ファンシーツイード× ションヘル織機というビジネスモデルは必然であった。
(5)
現時点では、旧式のションヘル織機でないと生み出すことができないテキスタイルやビジネスモデルが存在する。あえて進化しないこと、時代に逆行することこそ強み・優位性、という戦略である。

スマートテキスタイルの技術動向と課題 -欧州情報を中心に-

東レ株式会社 繊維加工技術部 塩谷 隆

【要点】
(1)
欧米や日本でスマートテキスタイルの開発が活発になっている。最近のナノテクノロジー技術の集中的な開発により、超微細加工やセンサーなどが飛躍的に進展し、ICT 技術との組み合わせにより、特にウエアラブルデバイスとしての期待が大きい。今回は欧州情報を中心にスマートテキスタイルの技術動向と課題を整理した。
(2)
スマートテキスタイルの最も基本的な機能は導電性である。このため、布帛に導電性繊維を組み込む配線技術や回路形成技術がまず進展し、それに合わせて、柔軟性、耐疲労性、耐洗濯性、絶縁性、ストレッチ性等を維持するための補完技術も確立されつつある。
(3)
スマートテキスタイルとしての完成度を上げるため、デジタルプリンティングによる回路形成や、繊維1本の中に導電性成分や電子デバイスを封入したスマートファイバー化など、さまざまな要素技術の高度化が進展中である。
(4)
スマートテキスタイル拡大への課題は、「標準化」「知財関係」「個人情報保護」「他材料・他分野との競合・融合」「複合技術対応の人材育成」「消費者への対応(電磁波等による健康被害、洗濯・手入れ・リサイクルなど)」等である。

■縫製/アパレル

異業種からアパレル業界に参入する注目企業 - RIZAP グループ 株式会社の事例-

株式会社 牛田 代表取締役 牛田 賢

【要点】
(1)
パーソナルトレーニングジム"RIZAP" を運営するRIZAPグループは、「自己投資産業でグローバルNo.1ブランドとなる」との壮大なビジョンを掲げ、急速に事業を拡大中である。
(2)
2013年以降、企業買収により、本格的にアパレル関連事業に参入した。
(3)
2017年3末時点でアパレル関連企業を計6社買収し、アパレル関連事業全体での営業黒字を達成した。今後はスポーツ関連事業にも注力する方針である。
(4)
スマートテキスタイル拡大への課題は、「標準化」「知財関係」「個人情報保護」「他材料・他分野との競合・融合」「複合技術対応の人材育成」「消費者への対応(電磁波等による健康被害、洗濯・手入れ・リサイクルなど)」等である。

百貨店レポート

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点】
(1)
2016年の全国百貨店売上高が6兆円を割り込んだ。
(2)
業績不振を背景に大手流通グループでの閉店も相次いでいる。2016年の百貨店店舗数は219店舗で、これはピーク時の311店舗(1999年)から約3割の減少となる。
(3)
業績不振の主な要因は、①インバウンド不振、②消費不振、③衣料品不振だ。
(4)
5つの流通グループは、さらなる構造改革を進め、新たなビジネスモデルを構築する方向に向かう。

■新市場/新商品/新技術動向

「エシカルとは何か」を考える -アッシュ・ペー・フランスエシカル事業部部長 坂口真生さんに聞く-

フリージャーナリスト 土井 弘美

【要点】
(1)
エシカルとは、倫理的、道徳上という意味。消費活動の現場ではエシカル消費と称され、環境への配慮や、人権、社会貢献などの観点にのっとった生産背景を持つ供給側の姿勢をさす。
(2)
エシカルの範囲は「アップサイクル&リサイクル 自然素材 フェアトレード 伝統技術の継承 寄付・雇用創出オーガニック 産地支援 ムダの削減」など幅広く、包括的である。
(3)
ルームスは2012年に展示会「ルームス」内に「エシカルエリア」を立ち上げた。ここから、日本でもエシカルに対する関心が高まっていく。
(4)
アッシュ・ペー・フランスでは6月から「エシカル事業部」を設置、ブランドプロデュースやコンサルティングなど、多面的な活動を開始。

■キーポイント

米国繊維産業への対外投資

日本化学繊維協会 常務理事 杉原 克

最近、米国繊維産業分野への海外直接投資の案件が散見される。 中国の大手紡織メーカー山東如意科技集団は、アーカンソー州フォレスト・シティに4億1,000万ドルを投じて、2017年後半稼動予定で、紡績工場を建設する。同社は海外進出に積極的で、既に5 カ国に進出済み。綿紡・毛紡、染色、縫製を展開している。北米への進出は今回が初めてとなる。ちなみに同社はレナウンの親会社で、2017年3月にはアクアスキュータムを買収している。

■統計・資料

主要国の合繊主要4 品種の需給動向 日本/韓国/台湾/アメリカ/中国/インド