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2021年3月16日
繊維トレンド2021年3・4月号 2021 No.147

■特別レポート

日本繊維産業連盟 総会について

日本繊維産業連盟事務局

 日本繊維産業連盟は、2021(令和3)年1月14日、東京プリンスホテルで総会を開催した。今回は、11都道府県に緊急事態宣言が再発令されているため、在京勤務者以外はオンライン参加にするなど、会場参加者を大幅に縮小し、会場の換気、席の間隔を空けるなどの対策をとった上での開催となった。ここでは、鎌原会長の挨拶と令和3年活動方針を紹介する。

■ファイバー/テキスタイル

合繊原料市況動向 -2020年の振り返りと今後の見通し-

東レ株式会社 原料部 原料第1課 課長 久田 崇

【要点(Point)】
本稿では、原油、ナフサに加えPTA、EG、カプロラクタム、AN、PP等の合繊原料について、2020年の動向と今後の見通しについて紹介する。
1 原油、ナフサ
原 油:コロナ禍で大きく下落も、中東産油国の減産強化、ワクチン開発等による経済回復期待で持ち直し。足下は既にコロナ禍前の60ドル水準を回復。
ナフサ:コロナ禍によるガソリン需要減とオレフィン需要増のバランス変化によりナフサはタイト化。
2 合繊原料
ポリエステル、ナイロン6については中国を中心とした大規模な増設による供給過剰構造は変わっていないが、コロナ禍からの想定を上回る回復と物流の混乱(コンテナ不足)により、一時的に需給バランスがタイト化している傾向が見られ、価格も上昇基調にある。また、メーカーの寡占状態にあるナイロン66チェーンは、プラントトラブル等を主因に再びタイト化が進んでおり価格も急上昇中。
アクリル原料のANも昨年末以降、プラントトラブルが重なりタイト化、価格が急速に上昇している。
P T A:能力的には供給過剰が継続するも寡占化が進行。コロナ禍からの需要回復とコンテナ不足により中国以外の地域では需給がタイト化。
E  G:増設計画乱立により供給過剰マーケットが長期化する様相。特に石炭MEGとナフサベースMEGの採算が悪化。
カプロラクタム:能力的には供給過剰バランスが継続しているものの、2020年後半から自動車需要の回復等により需給はやや改善。
A  N:いち早く回復したABSに支えられて需要は好調な一方、供給サイドはトラブルが多発し、2020年末から急速にタイト化。価格も急上昇。
P  P:コロナ禍においても安定的な需給バランスを維持、2020年後半からは自動車需要の回復によりややタイト化。米国では粗原料プロピレン暴騰によりPP価格も高騰中。

コロナパンデミックに対応して急速にデジタル化を進める海外の展示会

株式会社インテグレード 代表取締役社長 欧州繊維専門月刊誌『Twist』 在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)中国・上海:コロナパンデミック禍で欧州の主要展示会が中止された中にあって開催された上海のアパレルファブリック展示会は、通常の展示会方式に加え新たなオンラインプラットフォームと一連のデジタルツールを組み合わせて開催され、今後の国際的な展示会の方向を示唆する場となっている。
(2)イタリア・フィレンツェ:6~7月に開催のピッティウオモ2021年夏向けのメンズウエア展示会と2021/22秋冬向け糸素材の展示会ピッティフィラティはコロナ禍のため開催中止になったが、それらに代わってライブのデジタルプラットフォームPitti Connectを立ち上げ、10月まで4カ月継続する無人のスタンドが設営・運用された。このプラットフォームを通じて、色彩や素材構成、サステナビリティに関する最新の考え方が披露され、サプライチェーンを正常に保つことの重要性が確認された。
(3)ドイツ・ミュンヘン:スポーツとアウトドア用製品に特化した展示会ISPOミュンヘンは、2月1~5日に開催会場を持たない全面的なオンラインで開催された。
このデジタル化は産業界との緊密な協力と新型コロナウイルスの更なる蔓延に対処したもので、国際的な移動が制限された中で全ての参加者に等しく利便を提供するプラットフォームを目指したものだ。

■新市場/新商品/新技術動向

ファッションとテクノロジー・サステナビリティを考える ショッピングのデジタルシフトと循環型経済(サーキュラーエコノミー) -Demand Works Inc.(有限会社ディマンドワークス)代表 齊藤孝浩氏に聞く-

国際ファッション専門職大学 国際ファッション学部 准教授 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)日本のファッション業界では10年単位で大きなムーブメントが起こってきた。
現在は「ショッピングのデジタルシフト」の潮流の中にあり、本来ならその後「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」の潮流が来るはずであった。しかし新型コロナウイルス感染症の影響で2つの潮流が重なり、急速に進んでいる。
(2)「ショッピングのデジタルシフト」のゴールは消費者がストレスなくショッピングができる状態(オムニチャネル化)であるが、現在の日本はまだEC拡大のステージにある。
(3)日本における「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」は、新型コロナウイルス感染症の拡大で「持続可能性のために実際の行動を起こさないといけない」と背中を押された。消費者が手持ちのアパレル品を手放す、または循環させるステージである。
(4)消費者が手持ちのアパレル品を手放す、または循環させることを促すためには、クローゼットの中のワードローブを意識する必要がある。
(5)「ファッショナブル」で「納得できる価格」、そして「サステナブル」の3つが揃っていることが重要。
(6)「ショッピングのデジタルシフト」に関しては、エンドユーザー視点を持つことが重要。「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」に関しては、一過性ではなく長く使いたいと思わせるものや、メンテナンス容易性、耐用性のある商品、それらをサポートするサービスが必要。
(7)日本の繊維産業が維持・発展していくためには、想像力が必要。消費者は「一度手にした利便性は手放さない」。

■縫製/アパレル

コロナ禍における紳士服大手4社の現状と新たな模索

ムーンバット株式会社 顧問 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)紳士服業界も、新型コロナウイルスの影響が大きく及び、20年のフレッシャーズ商戦が振るわず、緊急事態宣言を受けた臨時休業、営業時間短縮により、21年3月期第1四半期の業績が悪化した。
(2)全国的なマスク不足に対応して、青山商事、AOKIホールディングス、はるやまホールディングスの3社はマスクを開発し販売。好調に推移する。
(3)青山商事、AOKIホールディングス、はるやまホールディングスの3社の21年3月期の上半期決算およびコナカの20年通算決算はともに厳しく、売上高は激減、営業損失を出す結果となった。
(4)メンズスーツ販売は、今回のコロナ禍に関係なく年々減少傾向を示していた。
05年の「クール・ビズ」キャンペーンなどを契機に、カジュアル化傾向が進んだことが背景にある。大手企業を中心に在宅勤務を導入する動きも活発化していることから、メンズの仕事着に対する意識が変化しそうだ。
(5)紳士服大手各社では、新型コロナウイルスの拡大を受けて、新たなシステムやサービスの開発が相次いだ。オーダーシステムの新展開、OMOの拡充、リモートワークのワーキングスタイル提案、などである。

■キーポイント

新型コロナ禍で変わる商流、売れている商品 その後の世界とは……

ダイセン株式会社「繊維ニュース」  記者 市川 重人 長尾 昇

切り札は実店舗?大手アパレルのEC 戦略を読み解く  「電子商取引(EC)で顧客接点を増やす」。大手アパレルの経営トップが異口同音に話す先には、都心部の店舗に「今後も人が集まらない」という警戒感がある。昨年の4、5月には実店舗の臨時休業を経験し、EC拡充を含めたデジタル戦略が加速した。その成果も着実に表れているが、大手アパレルのEC戦略に死角はないのか。