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2009年9月1日
経営センサー9月号 2009 No.115

■経済・産業

サッチャー時代は終わったのか?

東レ株式会社 ヨーロッパ地区全般統括 在ヨーロッパ代表 欧州事務所長 小林 純

【要点(Point)】
(1)2009 年4 月27 日付のFinancial Timesに、「サッチャー時代の終焉」と題するコラムが掲載された。サッチャー時代は終わったのか?
(2)サッチャー元首相の政策は多岐にわたるが、その目的は、(1)小さな政府、(2)市場メカニズムの追求による経済構造改革である。
(3)英国病(低い生産性と多発するストライキに代表される1960 年代から1970年代の英国の状況)と言われ、働かない国民の代名詞にもなった英国人が大きく変わった理由は、上記の政策によるところが大きい。
(4)サッチャー改革の大部分は普遍性を持つ。現在の世界主要国の社会主義的政策は、緊急避難的なもので、いずれ元に戻るはずである。サッチャー時代は終わっていない。

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「和製水メジャー」で世界市場を狙う - 三菱商事の水事業の民活インフラ戦略に学ぶ -

福田 佳之 産業経済調査部 シニアエコノミスト

【要点(Point)】
(1)水需要が高まる中で、これまで公的機関が担ってきた水道事業において民営化など民間の資金と技術を活用する動きが進展している。
(2)水道事業の民営化では、当初「水メジャー」と呼ばれる英仏企業がリードしていたが、その後、GE 社、シーメンス社が参入し、最近ではシンガポールなど新興国企業の台頭も著しい。
(3)日本勢は、水プラントの機器・素材供給に強みを発揮するが、プラント建設では低迷しており、水道事業の運転管理・維持に至っては事業経験がほとんどない。
(4)例外的に、三菱商事は水道事業の運転管理・維持事業を手がけ、マニラウォーターとジャパンウォーターを傘下に置いている。マニラウォーターは新規投資だけでなく、社員の意識改革を実施しており、その結果、漏水や盗水が劇的に減少し、業績も改善した。ジャパンウォーターは2000 年に総合水道会社として立ち上げられ、法定委託を継続的に受注し日本でNo.1 の法定委託シェアを確保している。
(5)水道事業の民営化の流れは不可逆的であり、日本勢は地球に優しい循環型の水事業を構築して巻き返しを図るべきである。
(6)水事業のようなインフラ事業は企業間連携による分業が不可欠であり、そのためには長期的な視点の共有が必要である。

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シリーズ:わが国デジタル家電産業のグローバル展開の現状(第3回) 中国における独自規格と標準化の動向と日系デジタル家電メーカーへの影響

財団法人機械振興協会 経済研究所 研究員 近藤 信一

【要点(Point)】
(1)本稿では、中国における技術標準の動向について中国での実態調査を踏まえて分析した。中国の技術標準は、大きく「強制標準」と「任意標準」に大別される。本件調査の対象となるデジタル家電製品の多くは任意標準の範疇に入り、標準に適合しないものでも使用(販売)が禁止されるわけではない。しかし、日系デジタル家電メーカーの中国市場を攻略する際の制約要因となっている。
(2)中国の技術標準化システムの特徴について、DVD レコーダー、地上デジタル放送の伝送方式、携帯電話の3 つの事例を取り上げて考察した。
(3)日系デジタル家電メーカーの中国の標準化戦略への対応について方向性を考えると、第一に「攻め」と「守り」の選択があり、第二に企業単独で推進するかグループで対応するかの選択があり、第三にデファクト標準とデジュール標準の選択がある。
(4)中国の技術標準化の推進に当たっては、自主創新のもと中国メーカーの研究開発力強化という産業政策的な係わりが強く、本来市場に委ねて決定されるデファクト標準であっても国家が業界団体を通じて支援する面が強い。その意味では、国家標準化管理委員会の下に設置されるワーキンググループにいかに入っていくかが攻めの対応の基本と考えられる。

医薬品業界の潮流・・・・・・ グローバルからボーダーレスへ

クレディ・スイス証券株式会社 調査本部 株式調査部ディレクター 酒井 文義

【要点(Point)】
(1)米国で大手医薬品企業同士の大型合併やバイオテクノロジー企業の買収が相次ぐ一方、欧米大手企業による新興国市場への進出も加速している。欧米の大手医薬品企業はボーダーレス競合時代に向かおうとしている。
(2)日本国内の医薬品業界は新たな薬価制度を巡り議論が錯綜するなど混沌としている。このままでは医薬品業界は2010 年以降に競争力低下によって漂流するリスクがある。
(3)国内にグローバルで戦える規模のメガファーマが必要である。

■視点・論点

「投資銀行」の本来の持味とその必要性

ストラクチャードファイナンスコンサルタント 永田 国幸

【要点(Point)】
(1)米国の投資銀行は南北戦争(1861 ~ 65 年)前後に姿を現し、米人及びドイツ系ユダヤ人の創業者の活躍により発展。当時よりアドバイザリー業務を手掛けていた。
(2)彼等はアドバイザリー能力、金融ソフト力、投資家発掘力に優れている。
(3)「物つくり日本」を続けるには産業界の努力に加え、金融界には「投資銀行」業務の強化が求められる。メガバンク、大手証券の挑戦が望まれる。

■マネジメント

中国企業再編にかかわる法令及び税務

望月コンサルティング(上海)有限公司 パートナー 公認会計士 望月 一央 あかし法律事務所 パートナー 弁護士 曉 琢也

【要点(Point)】
(1)共産主義国中国においては、公有制企業と私有制企業の区分以外に、内資企業と外資企業等の区分が存在しており、複雑な企業制度が構築されている。
(2)中国企業再編には、主に合併及び企業分割、持分(株式)買収、資産買収の手法があるが、それぞれについて多くの関連法令が存在しており、実施には細心の注意が必要となる。
(3)中国企業再編税制にかかわる包括的通知が2009 年4 月30 日に公布され、課税の繰延要件が明文上示されたが、実務的取扱についてはまだ明確になっていない部分が多い。

■ダイバーシティ&ワークライフバランス

シリーズ:経営戦略としてのダイバーシティ&ワークライフバランス(第2回) 中小企業におけるワークライフバランス(WLB)

ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長 渥美 由喜

【要点(Point)】
(1)中小企業はWLB しにくい職場環境だと言われるが、欧米及び日本の企業調査、企業アンケート調査、従業員アンケート調査の結果、中小企業だからこそWLB しやすい面もあることが分かった。
(2)ドイツではWLB がハイリターンの投資であるという調査結果があるが、日本でも同様の研究が進められている。
(3)WLB には「企業文化の変容」「組織・業務体制の見直し」としての効果があり、「時間当りの生産性」を高めることで、結果として労働と生活の質が高まる。企業にとっては、優秀な人材を引き留め、惹き付ける鍵ともなるのである。

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■人材

上級MOT 短期集中研修「戦略的技術マネジメント研修」について(第16回) 世界金融危機の影響とわが国の技術競争力の現状と将来展望

ノースアジア大学 経済学部 野口秀行教授 インタビュー 企画:MOT チーフディレクター 宮木 宏尚 記録・写真:フリーランス・ライター 山崎 阿弥

【要点(Point)】
(1)日本の金融システムの基盤はしっかりしており、今回の世界同時不況からの回復も遠くないだろう。日本の経済構造は既に内需型になっており、内需拡大での経済拡大は難しい反面、世界同時不況の影響は受けにくい体質になっている。
(2)日本人は歴史的に見ても極めて高い独創性とイノベーション力を備え、またそれを受け入れる柔軟性を備えた国民である。日本は技術力を活かして世界に優秀な工業製品を輸出しているが、これは単に技術を売っているだけでなく、これに伴う文化を輸出していると言える。この独創性に優れた「文化」こそが日本の強みである。
(3)日本がその技術力を活かして世界に貢献するためには、国際的な規模でのプロジェクトを束ねていくプロジェクトマネジメント力が必要であり、この強化こそがMOT 人材育成の目的である。
(4)長期的には、日本の技術力継承のためには海外からの人材受け入れが不可欠であり、また全国に点在する特徴ある中小企業や地方大学を支援する仕組み作りも重要である。

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■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 「補正予算」「LED 照明」

■お薦め名著

『決断の本質』 - 決断の鍵は「意思決定のプロセス」の中にある -

Michael A. Roberto 著 スカイライトコンサルティング訳

■ズーム・アイ

「徳」が日本のものづくりを明るくする

産業技術調査部 馬田 芳直

 100 年に一度の大不況に突入して早くも1 年近く経ちましたが、日本は何となく明るくなったような、良い方向に進んでいるような気がしています。株や投信が大幅に値下がりしていても、家ではビールが第三のビールに変わってしまっても、何か吹っ切れたようなところが出てきたと感じています。小生の気のせいでしょうか。

■今月のピックアップちゃーと

存在感高まる新興国企業 ~「フォーチュン・グローバル500」ランクイン企業の興亡~

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