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2019年3月19日
ストーリーを生かすには
産業経済調査部
山口 智也

 弊社オフィスの近所に個性的な自動販売機コーナーがあります。機械そのものは、ポップコーンの自動調理販売機を除けば、ごく一般にある飲料や菓子類の自動販売機なのですが、販売されている商品が非常にユニークで、言ってみれば「駄菓子屋さんが自動販売機で商売している」とさえいえそうな感じです。  大手チェーンの品ぞろえや売り方に大きな差がない今日にあって、この自動販売機コーナーは明らかに不思議な雰囲気を放っています。かくいう私も、そばを通るたび、ついつい立ち寄ってしまいます。(興味がある方は「須田町 自動販売機」のキーワードで検索してみてください)    さて、昨今「若者の×× 離れ」「インバウンド観光客の出費がコト消費に移行」といったように、モノが売れなくなったという話にいとまがありません。一方で、2万円以上するようなオーブントースターが飛ぶように売れるなど、売れるモノもあります。  このような違いはどうして生じるのでしょう? 理由はさまざまありますが、私が考えるに「お金を出す価値があるストリー」が背景にある気がします。  90 年代ぐらいまでは、例えば「(何らかの理由で)みんなが買っているから、自分も買う」といった、社会で共有されているストーリーに合ったものが売れやすい傾向がありました。  しかし、社会の多様化が進み、大抵のものが普及し、性能面に大きな差がない今日、商品そのものにストーリーが求められるようになっています。  同じような商品であっても、その商品で何が実現できるのか、どのようなワクワク感があるのかといったストーリーがあるか否かで、人が引き付けられるのです。  例えば、アップルのiPod やiPhone は、登場した当初「日本のメーカーでも作れる」と見くびられてきましたが、利用することで実現する価値観を明確にして、一大シェアを築くにいたりました。  ここで注意したいのが、いくら良いストーリーがあっても、商品に結実していないと、意味がないということです。これは、ストーリーに期待して購入しても、質が悪かったり、思ったほどの効能が得られなかったりすると、かえって「見かけ倒し」と評判を下げてしまうためです。  私は、一風変わった新製品があるとついつい試し買いするものの、期待外れで次は買わないことが多いのですが、これも「見かけ倒し」に通ずるものなのでしょう。  一方、iPod やiPhone は、音楽プレーヤーや携帯電話として使えるだけの機能や品質があったからこそ、ストーリーを受け入れる人の輪が広がったといえそうです。  良いモノ・サービスを作り続けることに気を配りつつ、魅力あるストーリーを送り出す。モノが売れにくくなった今、そんなバランス感覚が必要なのでしょう。