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2018年8月1日
繊維トレンド7・8月号 2018 No.131

■特別レポート

東レ株式会社・株式会社東レ経営研究所 共催 繊維産業シンポジウム講演抄録 アダストリアの描くファッション業界の未来

株式会社アダストリア 代表取締役会長兼社長 福田 三千男

去る3月2日に、金沢市のANAクラウンプラザホテル金沢において、東レ株式会社と株式会社東レ経営研究所の共催で繊維産業シンポジウム「北陸産地の新たな成長と産業競争力強化」を開催しました。当日は、株式会社アダストリア福田三千男代表取締役会長兼社長、一橋大学大学院国際企業戦略研究科楠木健教授、東レ株式会社三木憲一郎取締役の3人の講師にご講演いただきました。本号ではそのうち、福田会長の講演内容をご紹介します。なお、楠木教授の講演内容については弊社の経営情報誌「経営センサー」5月号、三木取締役の講演内容については、本誌「繊維トレンド」5・6月号でご紹介しています。

■ファイバー/テキスタイル

世界の繊維品貿易動向 -2017年の世界の繊維品貿易は3年ぶりの増加-

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主席部員 鍵山 博哉

【要点(Point)】
(1)
2017年の世界の繊維品貿易額は前年比3%増の約7,500億ドル、3年ぶりに前年実績を上回った。
(2)
主要国の繊維品輸出は軒並みプラス成長に回復。中国は微増ながら3年ぶりのプラス成長となり、ベトナムも好調が続いた。また、EU、米国といった先進国地域の繊維品輸出も堅調であった。
(3)
日欧米の先進輸入市場での中国シェアの低下、アセアンを軸としたアジア域内貿易の拡大など、2017年にみられる特徴はこれまでの傾向に大きな変化はない。
(4)
2018年に入っても、世界経済の緩やかな回復を背景に、繊維貿易の回復傾向は続いている。

 

2019年春夏、2019/20年秋冬向け糸素材のトレンドと、 サステナブルを目指し世界規模の生産連携に踏み出すデニム業界

株式会社インテグレード 代表取締役社長 欧州繊維専門月刊誌『Twist』 在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)
サステナビリティ(地球環境の維持継続性)が2018年の主題となってファッション予測や糸・生地素材のトレンドに反映されている。素材の中身と共に製品仕上がりまでの加工工程を開示することで環境負荷を減らし、また使用済素材の再生利用を促進して、消費者が使い古した製品の回収と再利用に至るまでの循環型経済をまわすことが、欧米の繊維業界の重点的な戦略となりつつある。それがイタリアはじめ欧米の各展示会の出展社に共通した問題意識だ。
(2)
ピッティイマジネフィラティは、極細のメリノウールを夏物としてシルクとブレンドするなど天然素材を中心としつつも、テンセルや合繊で機能性とファンシーな風合いを付与した商品が展示の中心となっている。パステル色にシルクの輝きやラメ糸などの光ものを少し加えて高級素材の豊かさを演出し、樹皮や葉などを使用した染料で柔らかさと控えめな色合いを出してクラシックな色調を表現している。
(3)
フィロでは各メーカーは技術的な開発、使用素材の由来、そして天然素材と化学・合成繊維との意欲的なミックスを強調して、環境保護とエコロジーの諸基準の遵守に熱心に取り組んでいる。来シーズン向けに絹紡糸やシャンタン、ブークレ、ファンシータイプ等シルク糸に人気が集まり、カシミア・ウール・綿や麻と混紡した高品質シルク糸素材にも人気が集まっている。
(4)
デニム産業の将来戦略は手の込んだ仕上げやビンテージ風の見栄えがするものから、サステナブルなデニム生産に移っておりデザインも淡泊で飾り気のないシンプルな風合いを求める風潮が顕著となっている。オランダのG-Star RAWはパキスタン・ベトナムのデニムメーカーと連携して洗いも含めたデニム生産全工程を通じて水の消費を70%節減、化学薬品40%減、エネルギー消費30%減で環境負荷削減の実現を進めている。
(5)
並行して結成されたARD (責任あるデニム生産を目指す連合)は消費者が着古したデニムのリサイクル拡大のための仕入れ基準と、ビジネスモデル構築のロードマップ設定を目指している。スペインのTavex は2019年春夏向けにトルコのKilim と連携してデニムの循環型経済モデルを発表しているが、このシステムの最終目標は、世界中からテキスタイル廃棄資源を回収・分別・裁断・紡績して新たな再生糸としてよみがえらせ、全ての資源のライフサイクルを複数回循環させることだ。

 

今後の農業に向けた繊維適用への期待

東レ株式会社 繊維加工技術部 塩谷 隆

【要点(Point)】
(1)
近年、ICT やロボット技術等を活用したスマート農業が注目を集めており、生産性の向上や農作物の高品質化、高付加価値化をもたらす次世代型農業として期待が大きい。
(2)
スマート農業の中で、繊維材料適用の期待があるのは、植物工場であり、信州大学繊維学部に先進植物工場研究教育センターが設置されたのは、注目に値する。
(3)
今後の農業という観点からは、生分解性材料やスマートテキスタイルの農業展開などが見られ、より将来を見据えた宇宙農業においても、繊維の出番が期待される。
(4)
しかし、現実的には植物工場を含めて、農業の新たな流れへの繊維の展開は少なく、よりユニークな繊維ならではの機能を発揮することにより、この流れに寄与していければと考える。

 

繊維染色分野における省エネ手段 日本の現状と途上国展開 -ホーチミン市/ベトナムの繊維染色工場における  排熱回収及び再利用効果の事例から考察- (二国間クレジット制度〔Joint Crediting Mechanism〕の活用に係る調査より)

株式会社オリエンタルコンサルタンツ 事業本部 海外事業部 副主幹 ウティクル ゴジャシ 一般社団法人日本繊維技術士センター 環境・エネルギー関連アドバイザー 森本 國宏

【要点(Point)】
(1)
国内の繊維染色分野では、2030年度の温室効果ガス削減目標を達成するために、省エネ活動を継続的に強化していく必要がある。
(2)
地球温暖化防止のためには、二国間クレジット制度(JCM )を活用し、日本独自の省エネ技術・ノウハウの海外展開が必須となっている。
(3)
染色過程における排熱回収・再利用技術は、日本及び海外の染色工場(ホーチミン市の事例)においてその省エネ効果が立証されている。
(4)
スパイラル式熱交換器は、高効率で長期間安定運転できるという特徴から、染色工場での熱回収・再利用の活用に国内外で推薦できる。

■縫製/アパレル

アパレルに見るシェアリングエコノミーの動向

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)
「服が売れない」「若者の服への関心が低下している」と言われているが、「売れる場所が変わった」「買い方が変わった」と筆者は考える。
(2)
代表的なものが、「ゾゾタウン」と「メルカリ」だ。ファッションEC、スマホでの二次流通サービスは、絶好調に推移している。
(3)
「所有から共有へ」というミレニアル世代の価値観を背景に、シェアリングエコノミーが拡大している。シェアリングの対象は、「モノ」「空間」「スキル」「移動」「お金」の5種類に分類することができる。
(4)
モノ×シェアの分野で、最近注目されているのが、定額レンタルサービスだ。
(5)
店頭やECでの購入よりも気軽で、時間の節約もできる定額レンタルサービスの可能性は未知数で、今後の動向に注目したい。

■新市場/新商品/新技術動向

ファッションとテクノロジーを考える スマホで接客、O2Oサービス「FACY」

株式会社フランドル 社長室 経営戦略・広報室 次長 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)
OnlineとOfflineの購買活動を相互に連携させるO2Oが近年注目を集めている。ファッション市場に特化したO2O サービスとして支持されるのが、スタイラー株式会社のFACYである。
(2)
FACYは消費者が気軽に欲しい商品を投稿し、それに対してアパレル企業から提案を受け、気に入ればリアル店舗で取り置きしてもらったり、配送してもらったりすることができるサービスである。
(3)
スタイラー株式会社のCEO 小関翼氏がFACYを開始した理由は、①ファッションなどライフスタイル関連分野に適合したECが当時存在しなかったから、②コミュニケーションと融合したECに将来性がある、と感じたからである。
(4)
小関氏は今後FACYのユーザー体験の質をさらに高め、また他のライフスタイル関連分野のビジネスに横展開していきたいと考えている。そのための課題は消費者の情報をよりリッチに持つことである。
(5)
台湾版FACYを今年2月にリリースした。台湾でテストマーケティングを行い、今後他のアジア圏に進出したい。

■キーポイント

繊維業界に広がるクラウドファンディング -元手かけずに商品企画、大手は市場調査に活用-

ダイセン株式会社 「繊維ニュース」記者 國分 瑠衣子

インターネット上で、商品企画に賛同する人から資金を集めて商品開発するクラウドファンディングがファッション業界で広がっている。若手デザイナーやスタートアップ企業にとっては元手をかけずに企画を形にできる魅力がある。一方、大手企業もマーケティング手法の一つとして、クラウドファンディングの活用に乗り出した。少数だが産地と連携した取り組みもスタートし、繊維業界全体の活性化のツールとして期待できそうだ。

■統計・資料

主要国の合繊主要4 品種の需給動向 日本/韓国/台湾/アメリカ/中国/インド