close

2017年6月29日
加速する製造業のサービス化
チーフエコノミスト
増田 貴司

 製造業が単なるモノづくりにとどまらず、サービス・ソリューション事業に乗り出す動き、いわ ゆる「製造業のサービス化」が進展している。この潮流は 2000 年前後から顕著になり、ここに きて一段と加速してきた。  製造業のサービス化が進んだ背景には、IT(情報技術)の発達がある。ものづくりへの参入 ハードルが下がった結果、かつて技術力のある先進国企業の牙城だったハイテク製品の分 野でも、新興国企業が短時間で追い着いて量産できるようになった。そのため世界的に工業 製品が供給過剰に陥りやすくなった。  このモノ余り時代に、先進国製造業が生き残る手段として採用したのがサービス化だ。モノ 単体で勝負するのではなく、その運用や保守まで領域を拡大。製品の効率的活用によるコス ト削減方法を顧客に伝授するなど、モノとサービスを組み合わせた価値で勝負する企業が増 えてきた。  さらに第4次産業革命がサービス化の動きに拍車を掛ける。あらゆるものがネットにつなが る IoT 時代となり、これまで不可能だったビジネスモデルが実現可能になった。製造業がデジ タルデータを収集、分析して顧客が何を欲しているのかを知り、モノとサービスを融合させて 顧客の課題解決を支援する事業を展開できるようになった。  IoT の進展に伴い、付加価値の重心がモノからサービスに移行。モノ単体で勝負するビジ ネスの有効性が一段と失われていく。  マーケティング論の大家であるセオドア・レビット博士の教えに「ドリルを買う顧客が欲しい のは、ドリルではなく穴である」という名文句がある。顧客はモノに価値があるからそれを買う のではない。モノを消費し使用することによって価値が生まれるのだ。博士の教えを製造業が 本気でかみしめ、実践すべき時代が到来した。 (本稿は、2017 年 6 月 28 日 日本経済新聞夕刊「十字路」 に掲載されました)