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2022年6月16日
経営センサー6月号 2022 No.243

■産業経済

脱炭素の潮流を受け、取り組みが加速する水素社会の構築

産業経済調査部 研究員 山口 智也

Point
(1)ここ数年で水素社会の構築に向けた取り組みは世界的に加速している。これは、脱炭素化の加速には水素の利用拡大が不可欠との認識が広まったことが背景にある。
(2)一方で、水素社会の構築に向けた課題は多く、解決に向けてさまざまな取り組みが進められている。
(3)日本など利用側の国々では、水素社会の構築に向けた戦略を策定し、研究開発や導入促進などの支援に取り組んでいる。
(4)脱炭素化が加速し、水素の需要拡大が期待されている中、ポスト化石燃料の資源輸出戦略として、水素を生成し、輸出に取り組もうとする動きも加速している。
(5)日本は、水素技術の開発で先行しているものの、国内市場の小ささなどもあり、利用面では後れを取りつつある。また、技術面においても、キャッチアップされつつある。
(6)今後の水素関連産業の成長を図るためには、国内だけでなく、海外市場の開拓が不可欠である。日本企業の中にはすでに欧米などに進出するケースもあり、今後も国内外の水素社会構築の機運の高まりを具体的な事業や取り組みにつなげていけるか、さらには新興国など欧米以外の国々にも進出できるかが水素ビジネスの成長を左右するだろう。

■世界情勢

不動産問題への困難なかじ取りに直面する尹錫悦政権 ―金利上昇下での住宅供給増と不動産税制緩和への取り組み―

亜細亜大学 アジア研究所 教授 奥田 聡

Point
(1)2022年3月9日の大統領選では、保守系野党の尹錫悦候補(前検察総長)が進歩系の文在寅政権への批判票を集め、僅差で当選した。派手な公約やスキャンダル合戦の中、政策論争は盛り上がらなかった。
(2)各候補が提示した公約は、子細にみれば韓国の直面する諸問題に向き合ったものとなっている。その中でも、価格の乱高下が多方面に悪影響を及ぼす不動産問題の扱いは注意を要する。
(3)不動産価格上昇で文在寅政権は批判されたが、政権末期の利上げで価格上昇は一服。尹政権には依然として割高な住宅価格の低廉化と同時に、バブル崩壊に伴うハードランディングを回避する慎重なかじ取りが望まれる。

■技術・業界展望

工作機械業界の現状と課題<前編> ―日本製造業で健闘する数少ない業界。高い競争力を保つ理由は何か―

チーフアナリスト(産業調査担当) 永井 知美

Point
(1)日本の製造業の競争力低下、国内空洞化が叫ばれて久しいが、日本の工作機械業界は性能やサービス面で世界最高水準にあり、生産額でドイツと世界第2位の座を争っている。
輸出から輸入を引いた純輸出額では世界首位である。
(2)日本の工作機械業界では、いずれ韓国・台湾・中国メーカーに追いつかれるという悲観論が何十年も前から流れていた。ところが、ハイエンド分野で最先端の工作機械を次々に開発したことにより、新興国・地域のメーカーとの差はむしろ広がっている。
(3)工作機械業界は、自動車などに比べて市場規模は大きくないが、「高い国際競争力を保っており、中長期的にも需要拡大が見込まれる」という、日本製造業としては稀有な存在である。
(4)本稿では、今号と次号(「経営センサー」2022年7・8月号)の2回にわたって、なぜ日本の工作機械業界が高い競争力を保っているのか、今後も競争力が保てるのかを考察したい。
(5)本号では下記の1と2について、次号では3と4について論じる。
1.工作機械業界:コロナ禍で打撃を受けるも需要は回復基調
2.高い競争力を保つ日本の工作機械メーカー
<以下、次号>
3.世界のトップ集団に立つ日本の工作機械産業
4.日本の工作機械業界の展望

■視点・論点

不確定な時代は金子みすゞの詩で

一般財団法人日本経済研究所 チーフエコノミスト・地域未来研究センター長 鍋山 徹

1.アルファベットスープ
2001年の米国9.11同時多発テロを予言したと話題になった本、それが、喬良氏、王湘穂氏(2020〈復刊〉) 1 の2人の中国軍人が上梓した『超限戦』である。2022年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、再びこの本を手にとった人も多いはずだ。日本語版の序文に、次のように記されている。

■マネジメント

解析「就職氷河期世代」、効果的な雇用支援策を考える ―ジョブマッチング現場に携わった視点から、国を挙げての3カ年集中支援プログラムの2年間を振り返る―

株式会社リクルート ジョブズリサーチセンター長 宇佐川 邦子

Point
(1)支援対象者「就職氷河期世代(正社員を希望する非正規もしくは無業者 1 )」はどのような人なのか?十把一絡げにしていないか?
(2)非正規・無業者は圧倒的に女性が多い。男女、既婚・未婚の組み合わせだけでも働くうえでの志向性や条件は異なる。
(3)いわゆる「正社員」だけでなく、「安定した多様な仕事」が肝要である。
(4)アンコンシャスバイアスの解剤と、支援対象者の志向性、働ける条件属性に合わせたターゲット設定と、ターゲットが望む支援策が重要である。

■TBRカナリアレポート

ドローンの利用シーンは拡大するのか? ―2022年の航空法改正と無人航空機産業の成長―

技術開発によって無人航空機(ドローン)の使い勝手が向上し、今までにない使い方を模索する動きがみられるようになっています。そして、少子高齢化によって労働人口が減少するだけでなく、人口減少によって社会活動の担い手が不足するようになっており、ドローンの活用はこうした課題に対処する方法としても注目されています。国土交通省によれば、ドローンの飛行許可承認件数は、2016年度の1.4万件から2020年度には6.0万件にまで増えており、広く使われていることがうかがえます。

■ピックアップちゃーと

脱炭素化の流れの中で石油メジャーの株価は好調に推移 ~カーボンニュートラルを目指す世界における石油メジャーの役割とは~

産業経済調査チーム

■お薦め名著

『「国家の衰退」からいかに脱するか』

大前 研一 著

■ズーム・アイ

コロナ下の結婚を考える

産業調査担当 永井 知美

昨年就職したばかりの娘が「結婚したい」と交際相手をわが家に連れてきた。すがすがしい好青年である。ついこの前までヨチヨチ歩いていた娘が結婚かと思うと、感慨深いものがある。光陰矢の如し。私も年を取るわけである。