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2008年6月1日
知らぬ間にはまっている社会学の法則

 筆者の仕事をごく簡単に言うと、官公庁や民間企業などのクライアントからの調査依頼に基づいて様々な情報を収集・分析し、報告書をまとめることです。契約で決められた期日が迫ってくると、どうしても追い込みで慌ただしくなってしまいます。  こんな状態を反省し、余裕をもって前倒しで仕事を進め、期日まで1カ月を残してほぼ完了のめどがついたとします。さて、その1カ月は左うちわで過ごせるでしょうか? 残念ながら、残りの期日までに追加要求や見直し作業が発生し、やっぱり期日直前までドタバタしてしまいます。一方、仮に「期日にはこだわらない。質の高いものを目指して欲しい」などと一見ありがたいお言葉をクライアントからいただいたとしたらどうなるでしょうか? この場合、際限なく追加や修正を繰り返し、仕事はかなり先まで尾を引いてしまい、終わりが全く見えません。  どうやらこんな状態を「パーキンソンの法則」と言うらしく、「仕事の量は、完成のために与えられた時間を全て使い切るまで膨張する」のだそうです。ちなみにこれは第一法則だそうで、第二法則は「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」とか。プロスポーツ選手や芸能人などで、人の何倍も稼いでいるはずなのに、なぜか莫大な借金を抱えている人を不思議に思ったものですが、そういうことなのでしょう。日常のちょっとした習慣の中にもこの法則が当てはまることがありそうです。  人間は必ずしも合理的ではなく、そんな人間の活動の結果起こる現象を研究対象とする社会学では、自然科学に比べて法則の定立性や再現性は低く、法則にはまらない例外事例が数多く出てきます。特に、成功法則を一般化することはきわめて困難です。ところが、「パーキンソンの法則」の例や、事故災害の発生要因でヒヤリ・ハットと併せて説明される「ハインリッヒの法則」、果ては一時期ブームになった「マーフィーの法則」に至るまで、良くないことが起こる法則については、言われてみれば思い当たることがあるというのがおもしろいところです。これは、人間誰しもが持っている弱さや甘さ、思い込みなどに起因した法則だからでしょう。概して自然科学の法則が、新たな研究や技術の開発に応用されるものとすれば、社会学の法則は、落とし穴にはまるパターンを知り、どうすれば例外に逃れられるかを考えるためのものと言えるかも知れません。  ちなみに、筆者の目下の関心(懸念?)は、「ピーターの法則」から逃れるにはどうすればいいかということです。自分の器をわきまえて研鑽に励むしかないのですが、これがなかなか難しいことです。紙面の都合もあり法則の内容はここでは触れませんが、一時期話題にもなったので聞いたことのある方も多いでしょう。会社員に限らず、組織に属する人の多くが一度は思ったであろうことに関するものですので、ご存知ない方は、ぜひご自身でご確認を(拙文に目を通した社内の何人かがそそくさと検索し始める姿が目に浮かびます)。