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2018年9月19日
夏の課題図書
部長(人材開発部)
小西 明子

 お盆休みのこの季節、原爆記念日、終戦記念日と絡めて第二次世界大戦の戦禍を伝えるテレビ番組が目白押しです。今年は平成最後の終戦記念日ということもあり、見ごたえのあるプログラムが多かったように思います。昨年、インパール作戦の悲惨な顚末をレポートしたNHKスペシャルを視聴し、こうした話を直に伝える語り部がすでに齢90歳を超え、残された時間が少なくなっていることに愕然とし、今さらですが、できる限り再放送をチェックし、今年は録画してじっくり観るようにしました。  今年、終戦記念日に放映されたのは「ノモンハン 責任なき戦い」。厳しい戦いを強いられ、撤退を余儀なくされた現場将校が、自決を余儀なくされる一方で、作戦を主導した関東軍のエリート将校たちの大部分は生き延びて表舞台に復帰するという、理不尽な世界が描かれていました。昨年のインパール作戦の番組でも感じたことですが、ノモンハンにおいても作戦決行に至る意思決定プロセスは極めて不明瞭です。曖昧な報告、届かない進言、握りつぶされる慎重論、人的ネットワークと声の大きさが偏重される判断。番組では生き延びた陸軍幹部たちの肉声が残された貴重な録音テープの内容も紹介されていました。しかし、そのどれを取っても、参謀本部内で反対の声も小さくなかったこの作戦計画が認められた合理的な理由が述べられることはありませんでした。  第二次世界大戦における日本軍の組織的な失敗については『失敗の本質-日本軍の組織論的研究』(1984年ダイヤモンド社)という定番のロングセラーがあります。TVドキュメンタリーのインパクトに触発されて昨年はこれを再読しました。初読ではそもそも第1章の「事例研究」で、ノモンハン、インパールを含む6つの代表的な敗戦事例について細かな作戦・戦闘について記述されている部分が、どうにも読み進めず大苦戦。再読では第2章で1章の内容が総合的に分析されていることが分かった上で読み進めたため、それほどつまずかずに済みました。第2章、3章で日本軍の失敗の分析とその教訓が述べられていくのですが、ここで述べられている「失敗要因」に、今の社会や自分を含めた行動様式にもそのままあてはまると思える点が多々あることが、本書がロングセラーとなっているゆえんのようです。最近の巨大企業の不祥事、都合の悪い事実を隠蔽する行為、「想定外」の事態に脆くも崩れ去るリスク管理体制など、現在の文脈である種の「敗北」と認識される事象の多くが、70余年前の戦争で日本軍が犯したのと同質な過ちに起因するのだとしたら、これはもう相当根深いものと言わざるを得ません。  昨年、インパール作戦のNHKスペシャル放映後には、「あなたの周りのインパール作戦」なるハッシュタグが生まれ、ネット上には職場でのブラックな体験の書き込みでひとしきり盛り上がったと聞きました。戦争という悲惨な体験とブラックな職場を重ね合わせるのはいささか不謹慎ですが、それだけ閉塞感が今の日本を覆っているということなのでしょうか。猛暑の夏、今年も『失敗の本質』が課題図書になりそうです。