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2015年8月1日
繊維トレンド7・8月号 2015 No.113

■ファイバー/テキスタイル

下期の東南アジア 合繊原料・製品市況を読む

特別研究員 繊維産業アナリスト 向川 利和

【要点(Point)】
マクロ的には、「世界経済は緩やかに減速」下振れの懸念がある。米国を除き停滞、中国・欧州に波乱の芽
(1)アメリカ 雇用と消費増の好循環が続く。世界経済を支える
(2)ユーロ圏 デフレ回避へ正念場、ECB 量的金融緩和開始
(3)アベノミクスで日本は戦後15回目の好況局面
(4)アジア  6%超の成長続く。AEC(アセアン経済共同体)の誕生に期待高まるが中国経済の減速が懸念材料
原油、ナフサ、合繊原料、合繊製品に中国からのデフレ圧力、原油底打ちでも価格低迷長期化の懸念
アジア主要国の概況
(1)韓国 景気回復の勢い弱く、輸出主導経済に限界―中国の減速で動揺
(2)台湾 輸出鈍化で低成長脱せず。それでも昨年は3年ぶり3%成長を達成
(3)中国 高度成長から安定成長へ手探り続く、不動産の冷え込み響き今年の成長は7.0%割れも
(4)タイ 政治混乱続き景気減速。クーデターから1年、景気回復に遅れ
(5)マレーシア 輸出回復で堅調を維持。ただ原油安が底堅い景気への逆風となる可能性
(6)インドネシア 成長鈍化も高い潜在力。RP急落で経済対策
(7)インド 10年ぶりの政権交代で工業国への転換目指す。原油安が追い風

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第10回アジア化繊産業会議の概要 -アジアの化繊産業は、量から質への転換姿勢が明確に-

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主席部員 鍵山 博哉

【要点(Point)】
(1)第10回アジア化繊産業会議は、2015年5月14~15日に中国・北京で開催された。世界の化繊生産に占めるアジア化繊産業連盟加盟国地域のシェアは、1996年(第1回アジア化繊産業会議)の58%が、2013年は89%を占めるまで高まっている。
(2)世界最大の化繊生産国である中国からは、繊維業界、化繊業界が「新常態」のもと、これまでの高成長から低成長時代への変革期にあり、供給過剰の認識を意識しながら量から質への転換の重要性が度々指摘された。
(3)日本からは、これまでの会議と同様、合繊の中長期的な需給見通しに関する報告を行った。2020年に需給ギャップが予測される中、アジアの化繊業界が、市場の高度化、質的変化に対応し、内需の用途開発、とりわけ産業用の用途開発の重要性、製品の高付加価値化を指摘し、参加各国地域から賛同が得られた。
(4)各国・地域からの化繊産業の概況報告では、欧米市場を中心に景気回復の遅れなどもあり、化繊産業はおおむね厳しい状況に直面しており、差別化、付加価値化の重要性が相次いで指摘された。一方で、汎用品分野の競争激化などに伴う、ダンピングへの懸念、貿易救済措置の可能性という問題も一部で指摘された。

バイオベース繊維材料の流れと最近のトピックス

東レ株式会社 繊維加工技術部 塩谷 隆

【要点(Point)】
(1)バイオベース繊維材料は、原料として再生可能な有機資源由来のものを用いる材料であり、以前から注目されているものの、本格的な実用化というほどには普及していない。
(2)量的拡大のためには物性面での劣勢は致命的であるため、PLA(ポリ乳酸)は厳しい局面にあるが、既存合成繊維素材と同等の化学構造を有するバイオマス由来PET などは、コスト面の課題はあるものの有望である。
(3)最近、CNF(セルロースナノファイバー)が注目を浴びており、この活用によるバイオコンポジット開発は今後加速するものと思われる。経済産業省はCNFの国際標準化対応に本腰を入れつつあり、海外においても、CNFに関する研究開発は活発化しつつある。
(4)キチン・キトサン繊維、シルクナノファイバーなどの動物系繊維材料は量を追うのではなく、他の素材では実現できない特殊用途へのアプローチが本筋であろう。

パリプルミエールヴィジョンから発信された2016年春夏のトレンド

株式会社インテグレード 代表取締役社長 欧州繊維専門月刊誌『Twist』 在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)展示会全体を通じてクレープやクリスプな風合いの生地でドライなタッチのスーティングドレス用の織編地がトレンドとなっている。サマーモヘア、ウール、カシミア他の獣毛繊維が軽くエアリーに紡績されて半透明な感じに仕上がっている。
(2)ニット生地も透明性を強調した繊細で目付の軽いもので、色はフローラルなグリーン、ライラック、ペールトーンが主流で、メッシュやネットも共通のテーマとなっている。
(3)英国からはサマーツイードや薄手の梳毛織物、麻混、シルク混など他の追随を許さない強みを見せている。梳毛織物も色合いで差別化して非常にデコラティブなデザインを提案するなど英国伝統の織物からの決別を志向する紡績もある。
(4)レンツィンはTencel ファイバーの用途を更に拡大するものとしてTencel A100マイクロバージョンをなめらかで軽量の生地を望む消費者の嗜好にマッチするものとして開発した
(5)スペインのニルスターがナイロン66をコアにしたメリノウール糸を開発、目付けの軽量化、耐久性の向上、ストレッチとリカバリー性の改善など機能性の向上を実現し、夏季には通気性と湿気を逃がす毛細管現象で涼しさをもたらし冬季には目付の軽さと熱を逃がさないことで、ウールを通年使える素材として提案している。

■縫製/アパレル

訪日中国人旅行者の衣料品の買物

株式会社フランドル 上海事務所 所長 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)訪日する中国人旅行者の大きな特徴の1つが、買物代が突出して高いことである。中でも衣料品は彼らにとって優先度の高い品目の一つと考えられる。
(2)中国人旅行者の衣料品の買物で最も人気があるのは、価格差の関係からラグジュアリーブランド・インターナショナルブランドと考えられる。
(3)中国人旅行者に人気の買物スポットは東京と京阪神で、中でも銀座、渋谷、原宿・表参道地区の人気が高い。
(4)訪日する中国人旅行者の数は波があるかもしれないが、今後の維持・増加に向けて、日本の魅力を活かした展開は有効と思われる。

着物の復活は本物か

調査研究・コンサルティング部門 主幹 足立 敏樹

【要点(Point)】
(1)衣生活スタイルの変化に加えて、高価格化戦略と押し付け販売などの反動で毎年5~10%のペースで縮小してきた着物の消費市場ではあるが、各種統計数値をみても2014年初め頃から顕著に復活の兆しを見せている。
(2)今、着物の世界では既存流通が関わることなく、着る人と作り手のダイレクトなコミュニケーションの中で大きな胎動が始まっている。
(3)ある意味で消費者を裏切り続けてきた旧来型の着物ビジネスや着物の流通は、消費者から‘NG’を出されており、上記の流れの外にある。
(4)一方で、上記旧来型の呉服専門店や売場とは一線を画して、仕入れ・取引形態、モノづくり、品揃えなどにつき新しい事業コンセプトで新しい世代の顧客を取り込んでいる先進的着物専門店が台頭してきている。
(5)今回のレポートでは、和に対する憧れや和ブームは、現代日本人はもとよりフランスや米国など海外でも生活感覚として広がっているにもかかわらず、そのニーズに応えられない旧来型の着物流通の問題点を見極めつつ、一方で台頭しつつある先進的着物専門店の5 企業の事例から、今後の和装業界の活性化の鍵を見極めたい。また併せてその何割かが毎年市場に出てきて需給バランスを崩し価格混乱要因ともなっている呉服業界の膨大な流通在庫3~4兆円、タンス在庫30~40兆円についても概括する。

PDF : 詳細(PDF:1,747KB)

■小売/消費市場

百貨店の新業態 百貨店から十貨店へ

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)ここ数年、百貨店の小型・中型の新業態開発が活発化している。背景には、右肩下がりで推移する百貨店売上がある。現時点で複数の百貨店が開発している、新業態の切り口は、小型セレクト店と郊外サテライト店である。
(2)小型セレクト店の中でも、店舗網を確実に拡大しているのは化粧品のセレクト店だ。
(3)2014~15年にかけて目立つのが、郊外サテライト店の新規出店だ。百貨店空白地帯に、百貨店的なMDやサービスを提供する、地域密着型の店舗となっている。
(4)三越伊勢丹ホールディングスの「イセタンサローネ」とセブン&アイ・ホールディングスの「バーニーズニューヨーク」。今後の新たな競合関係に注目したい。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

復活を果たした今治タオル産地 -新ステージに入ったブランド戦略-

ダイセン株式会社「繊維ニュース」 記者 長尾 昇

 地域産業のブランド化の先進的な事例とされる「今治タオル」。2006年から経済産業省のJAPANブランド育成支援事業を活用したプロジェクトで、今治タオルのブランド化を推し進め、2010年から5年連続で前年生産量を上回る〝奇跡の復活〟を遂げた。今治タオル産地の奮闘は続いており、ブランド戦略は新たなステージに入りつつある。今治タオルのブランド化の取り組みや産地が抱える課題、今後のモノ作りの方向性について探った。

■統計・資料

Ⅰ.主要短繊維糸・織物の相手国別輸入統計

Ⅱ.主要合繊糸・綿・織物の相手国別輸出入統計