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2008年11月1日
経営センサー11月号 2008 No.107

■経済・産業

欧州経済のリスクファクターをどう見るか - 2009年欧州経済の展望-

みずほ総合研究所株式会社 市場調査部  エコノミスト 中村 正嗣

【要点(Point)】
(1)2007年の欧州経済は堅調な景気拡大を続けたが、08年に入り総じて減速感を強め始めた。
(2)インフレやマインド悪化によって個人消費が低迷し、英国やスペインでは過去の住宅ブームが調整局面を迎えている。
(3)欧州の中で底堅さのうかがえたドイツも、景気牽引役であった輸出が伸び悩み始めたことで減速感が強まっている。
(4)09年は低成長に留まる見通しだが、懸念要因は不安定さが続く金融市場の動向であり、先行き不透明感が漂っている。

景気観測:金融危機と世界同時不況下の日本経済を展望する

産業経済調査部長 チーフ・エコノミスト 増田 貴司

【要点(Point)】
(1)日本の景気の現状は、企業部門を中心に後退色が強まっており、内外需とも推進力不在である。世界景気の持ち直しによる輸出の復調が今後の回復のきっかけになる。したがって、世界経済がこの先どの程度悪化し、いつ持ち直すかが、景気予測の最大の焦点となる。
(2)日本の景気が後退局面入りしたのは、サブプライム問題のせいではない。交易条件の大幅な悪化に見舞われた企業が設備投資にブレーキをかけたことが主因である。
(3)企業部門は悪化方向にあるが、通常の景気後退期に比べて財務体質は健全である。また、設備、雇用の過剰感はほとんどなく、調整のマグマはそれほどたまっていない。早めの生産調整のおかげで在庫積み上がりも軽微である。今後の世界経済減速という逆風に対する一定の耐久力を日本企業は備えている。
(4)「100年に1度の金融危機」の影響により、これから世界同時不況の到来が避けられない見通しだが、問題はそれがどの程度深刻なものになるかである。標準的な世界の成長鈍化シナリオを前提とすれば、日本経済は08年度、09年度と2年連続でゼロ%近傍の成長にとどまろう。日本の景気回復時期は2010年にずれ込み、その後の回復ペースも緩慢になろう。
(5)日本の経験からして、今回の米国におけるバブル崩壊後のバランスシート調整は長引き、景気下押し圧力が今後数年は続くだろう。ただ、この間にも景気の循環的な緩やかな回復は訪れよう。
(6)今回の金融危機は1930年型の大恐慌にはならないと予想される。中長期的な影響としては、FRBへの信頼感の揺らぎによるドル下落圧力に注意が必要である。
(7)日本企業としては、世界同時不況の到来を前提に、守りの経営姿勢に転じるのは当然だが、この「冬の時代」に次の好況期のための備えをしておくべきであろう。重点的な研究開発の推進、海外市場の開拓、M & A の活用などにより、将来に向けての強みの構築を進めることが望まれる。

PDF : 詳細(PDF:644KB)

ドイツ太陽光発電市場現地調査報告 -“国家政策原理”が生み出す“新・市場原理”-

岩谷 俊之 産業技術調査部

【要点(Point)】
(1)ドイツをはじめとした欧州の太陽光発電市場は、いまや年間設置量で日本に大きく水をあけて圧倒的成長をみせているが、それを誘導するのは「技術」でも「市場原理」でもなく、大胆な国家政策=フィードインタリフ(FIT)制度に他ならない。
(2)太陽光発電に「有利な投資商品」としての性格を付与し、大量の投資資金を集めて市場を拡大させるFIT制度は、太陽電池市場拡大施策の切り札とみなされ、欧州中心に導入国が急増している。
(3)一方、これまでの太陽光発電助成策を打ち切った日本の市場はむしろ縮小傾向。導入補助は来年度にも再開される見通しだが、従来の「イニシャルコスト助成型」制度ではフィードインタリフほどの効果は期待薄。
(4)しかし、投資需要が中心を占めるFIT 制度は、経済環境・投資マインドの変化による影響も考えられる。日本のように住宅所有者による屋根設置型の需要は極めて“健全な”市場とも言える。
(5)欧州では市場の成長性を保ちつつ、需要の健全性を高める動きが既に見られている。わが国は需要の健全性を保ちつつ、市場成長を促進する施策を投入できるかがカギ。

PDF : 詳細(PDF:339KB)

■視点・論点

「これしかない」キャリア選択の落とし穴

慶應義塾大学SFC研究所 キャリア・リソース・ラボラトリー  上席所員(訪問) 古畑 仁一

自己分析だけで適職が見つかるのか?  大学3年生が就職活動を考え始める時期がきた。卒業までまだ1年半近くもあり、大学生活の総仕上げがこれから来るというのに、一部の企業は会社説明会と称しての採用活動を始めるし、学生のほうも周りが動き出すと焦り出す。仕事や業界のターゲットを絞りすぎて自分の可能性を狭めているのではないかと思われる学生がいる半面、不安を感じているけれども何をしていいか分からない学生がいる。  しかし、どの学生も就職活動を始めるときに最初にやるのが「自己分析」だ。

■マネジメント

元気なモノづくり中堅企業に学ぶ トップインタビュー(第4回) 環境に優しいロジスティックス -「イースターパック」に夢を賭ける-

スターウェイ株式会社 社長 竹本 直文 氏

【要点(Point)】
(1)スターウェイの「イースターパック」は古紙を使った箱で、100回以上も繰り返し使用が可能。同社の「環境デリバリーパック」は、これを通い箱として荷物の受け渡し、箱の回収をドライバーが行う総合物流サービス。
(2)このサービスを使った企業では、梱包材が激減、CO2削減に劇的な効果を上げている。
(3)更に箱にICタグを埋め込み、内容物のトレースができるシステムも開発。メンテナンス市場を中心に得意先を広げている。
(4)中国にイースターパックの製造工場を建設、この年末より稼働させる予定。各国企業から引き合いがきており、すでにグローバルな視点を持っている。

■人材

上級MOT短期集中研修「戦略的技術マネジメント研修」について(第14回) イラク復興支援活動における指揮官の経験を基にして -「組織運営とリーダーシップ」-

防衛大学校教授一等陸佐(第5次イラク復興支援群長)  太田清彦氏講演録 企 画:MOT チーフディレクター 宮木 宏尚 記録・山崎 阿弥(フリー・ライター)

【要点(Point)】
(1)組織を効果的に機能させるためには、関係組織との間に、重要な情報の入手や協力が得られるような良好な関係を築くために、あらゆる手を打つべきである。軍隊組織では、これは安全の確保に繋がる
(2)緊張が続くままでは、組織はうまく機能しない。うまく緊張を解く方法も学ぶべきである。「笑い」は、その効果的な方法の一つである。
(3)部下に対しては、明確な目標と評価が重要である。目標に対する遅れや達成度不足に対して柔軟にマネジメントしていくこともリーダーの重要な役割である。この時は、部下が自信を失い士気が下がらないような配慮が必要である。また、部下とのコミュニケーションで重要なことは、考えていることを何度でも繰り返して伝えることである。
(4)部下の士気を高い状況で維持するためには、上司が部下に対して常に関心を持っているということを意識させることが重要。また他の組織からの評価を伝えることも、士気を高めるには効果がある。
(5)ODAなど支援活動は、受ける側のニーズを的確に把握して行わないと、評価されないばかりか、反感を生む可能性さえある。

PDF : 詳細(PDF:599KB)

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 「ムーアの法則」「システミック・リスク」

■お薦め名著

『ニッケル・アンド・ダイムド』 -経済の基盤は低賃金労働力に依存-

バーバラ・エーレンライク著 曽田和子訳

■ズーム・アイ

文化人はコーヒーがお好き

産業経済調査部 福田 佳之

 私は大のコーヒー好き。毎朝の目覚めの一杯、仕事はじめの一杯が欠かせません。そこで今回のお題はコーヒー。コーヒー好きでない方、ちょっとごめんなさい。  先日、神戸にあるUCC コーヒー博物館を訪れました。コーヒーの起源やコーヒーが出来上がるまでの過程などを取り上げていて、非常に興味深くつい長居してしまったのですが、その展示のなかにUCCコーヒーの歴史について説明した一室があります。

■今月のピックアップちゃーと

政治の腐敗は生活水準を低くするって本当? 一人当たり所得と政治家、公務員の清廉度の関係

■TBRの広場

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