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2018年6月21日
新時代の地域活性化策
チーフエコノミスト
増田 貴司

 地域の持続的な活性化のためには、企業誘致頼みの外発型の繁栄ではなく、内発型の発展を目指すことが課題となる。今後、地域が内発型発展を目指す際には、新たなテクノロジーの登場によって企業行動や産業立地が大きく変わりつつある点を意識して戦略を立てることが重要だ。  第1に、IT(情報技術)の進化により製造コストに占める人件費の割合が下がるため、工場を労務費の安い場所に置くメリットが低下する。加えて3Dプリンターによって、どこでも製造が可能となれば、製造拠点が分散化する。消費地の近くで生産する動きが活発になる。  第2に、自社に必要な技術を持った人材確保のために、それらの人材を抱える大学や事業パートナーが存在する地域に研究開発拠点等を置く企業が増える可能性がある。  第3に、異業種のライバルが現れ、開発対象領域が広がる中、どの企業も自社単独では新商品の開発が不可能になり、他社や異業種との連携が必須となってきた。特に、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」ビジネスでは、異分野同士の「協創」が不可欠だろう。  第1、第2の動きが進めば、これまで大都市圏や海外に立地していた企業が地方に拠点を設ける可能性がある。これは地方都市にとって好機であり、これらの立地を促進する環境整備に注力すべきだ。  また、第3の潮流を踏まえれば、地域活性化策は特定の産業の誘致を目指す発想から、多様な産業や人材を呼び込み、ネットワーク形成を促す方向に転換すべきである。注意すべきは集積自体が目的となってはいけない点だ。多様な集積があるだけでは意味がない。各事業主体が相互に結びつき、知を共有し、地域に好循環をもたらす生態系(エコシステム)を形成できるかどうかが最大の鍵となろう。 (本稿は、2018年6月21日 日本経済新聞夕刊「十字路」 に掲載されました)