close

2007年4月1日
つまらないものですが
研究員(繊維調査担当)
安楽 貴代美

 最近どうしても気になるCM に、「夫が妻の誕生日に洗濯機を掃除する」という場面があります。これは、使うだけで洗濯槽のカビの繁殖を防げるという某洗濯洗剤のCM で、夫はその洗剤の効果で昨年よりも汚れていなかった洗濯機に驚く、という展開が用意されています。しかし、全くの個人的な意見ですが、年に一度しかない誕生日に、わざわざ洗濯機を洗ってもらって妻は嬉しいものでしょうか。同じ掃除なら、大事にしているけれど最近ちょっと汚れてしまった、おしゃれ用の靴でもピカピカに磨いてもらいたい、いやむしろ、せっかくなら洗濯自体をして欲しい、くらいではないでしょうか。  好意から出る贈り物でも、相手がそれを心から喜ぶかどうかは、なかなか難しい問題です。上記のCM には賛同できないものの、私も贈り物選びにはいつも四苦八苦しています。中でも頭を悩ますのが、出張時の面会相手への手土産です。個人的な贈り物であれば、事前にいろいろと調査することもできますが、仕事上の相手で、初対面、会社案内程度の知識はあるものの、ご本人については全く情報がないという場合、選ぶ基準が殆どないという状況もあり得ます。また、多くの場合、遠方の方とは一期一会とはいかないまでも、二年に一回程度しかお会いできる機会はないものですから、失礼なことはできません。  ただし、どんな場合でも、最低限の基準はいくつかあります。まず、その手土産は相手一人の手に渡るのか、それとも社内で分けるものか、持ち運び時の重さはどうか、価格はどの程度か、凝ったものがいいのか、一般的なものがいいのか。部署単位や、会社単位を相手にお贈りする場合は、分配しやすいようにあらかじめ小分けしてあるもの、面会場所が展示会場など相手の会社から遠い場合は、重過ぎない、荷物にならないもの、価格は手の負担にならず、なおかつ失礼にもならない額、事前の相手方との交流を考え、ある程度深い関係があれば凝ったもの、まだ入り口で、これからより深める関係であればまずは一般的な気軽なもの。考えようにっては、条件はまだまだいくらでも出てくるでしょう。また、手土産として一般的な、お菓子を選ぶ場合は、上記を全て無視して、自分で食べてみて本当に美味しかったものをお贈りするという方法もあります。多少の面倒があっても、おいしいものは嫌がられないと思うからです。  ところで、冒頭で述べたCMでは、私の意に反して、妻は夫に素直に感謝してエンディングとなります。恐らく日頃から細々と気の付く良き夫なのでしょう。仕事でも、大切なのは手土産ではなくビジネスそのものですから、お互いの関係さえ上手くいっていれば、その間を結ぶ贈り物は本当は何でもいいのかもしれません。しかし、贈り物というものは、時間も手間もある程度かかる厄介なものですから、せっかく苦労したからには、相手に少しでも喜んでもらいたいものです。「ほんのつまらないものですが…」とお渡しするとはいえ、本当につまらないものと思われては、お互いに不幸でもあります。  その贈り物は、相手を本当に喜ばせられるか。少し大袈裟ですが、常に問い続ける難しい問題です。