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2015年6月1日
お持ち帰り願望の高まり
研究員
川野 茉莉子

皆さんはドギーバッグを使ったことはありますか?ドギーバッグとは主にアメリカのレストラン等で用いられる、客の食べ残しを持ち帰るための容器です。もともとは「犬に食べさせる」という口実で食べ残した料理を持ち帰ったのが語源と言われていますが、実際には家で人間がもう一度味わうための合理的なシステムとしてアメリカでは広く浸透しています。   さて、そんなエコな習慣が欧州でも広がりを見せています。フランスでは「食はアート」と考えられており、貧相なドギーバッグに芸術作品を残り物として詰め込むなどという発想は皆無でしたが、フランスらしい「シックな(=上品で洗練された)」ドギーバッグならぬ「グルメバッグ」が提案され、レストランでの採用が増え始めているようです。賛同する飲食店が店先に専用のシールでアピールすることで、客も躊躇せずに持ち帰りを依頼できるような雰囲気づくりが行われています。普及の背景としては、2016年より飲食店に対して食品廃棄物の削減が義務付けられるため、飲食店としても食品ロスの低減に積極的に取り組み始めたようです。   一方で日本においては、まだ食べられるのに捨てられている「食品ロス」は年間500万~800万トンに達し、国民1人当たりに換算すると毎日おにぎり1~2個分が捨てられている計算になります。この数字には飲食店での食べ残しだけでなく、売れ残りや期限切れ食品、家庭での残飯も含まれていますが、日本においてもドギーバッグの普及が解決の糸口につながるのではないでしょうか。  昨年のクリスマスのことです。女子会と称し、会社近くの飲食店でワイン片手に女性4人でターキー1羽に挑みましたが、切り分け前の盛り上がりから一転、早々に4人とも撃沈。しかしオーダー時に「残った場合は持ち帰り可能」と聞いていたため、持ち帰りをお願いしたところ、お店から渡されたジッパー付保存袋に直接入ったターキーはまさに残骸と化していました。もちろんそのターキーは留守番をする夫へのお土産として持ち帰り、翌朝には豪華なサンドイッチの具材に見事生まれ変わりましたが、やはりドギーバッグの普及にはある程度スタイルの確立も必要でしょう。既に市場ではスタイリッシュな製品も数多く販売されていますが、日本には曲げわっぱや柳ごうりといった、調湿機能、抗菌性に優れた伝統工芸品が存在します。使い捨てではないこれらの優れた製品を、ユネスコ無形文化遺産にも登録された和食の保存容器として活用し、さらに小粋な和柄の小風呂敷で包めば、海外でも注目を集めている「Bento」文化を兼ねて訪日外国人客へのアピールにもつながるのではないでしょうか。   食品の持ち帰りにおいては、食中毒の懸念が運用の妨げになっていますが、持ち歩き時間や再加熱、傷んでいるかどうかの見極め等、消費者側の責任意識を高めることが不可欠です。お財布にも環境にも優しいお持ち帰り文化が、「もったいない」という言葉を生み出した日本で広がりを見せることを期待しています。