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2014年6月1日
次代を切り拓くキートピック
それは太陽の黒点?
シニアエコノミスト
福田 佳之

 新しい時代や世界を切り拓くのは、新しい発見 や発明ではなく、これまでなじみのあったモノやコ トであることはよくあることです。昨今の世界経済 でインパクトを与えたものの一つは、読者にとって もなじみのあるヒトの動きです。これまでヒト(人 口)は増え続け、国内にとどまると考えるのが常識 で、注目されませんでした。しかし、現在、人口の 減少やヒトの国境を超えた移動が一国経済の成長 や社会制度の仕組みに多大な影響を及ぼしており、 ヒトの動きを論じた多くの研究が社会科学分野で 見られます。   同様にこれからの世界の経済や社会制度に影響 を与えるものとして太陽の活動が注目されるかも しれません。太陽活動の活発・縮小はその表面に現 れる黒点の増減と関係しており、およそ11 年周期 で黒点は増減を繰り返します。   太陽の黒点の増減と経済活動・景気循環の関係 については昔から注目されていました。最初にその 関係について指摘したのは経済学者のW. S. ジェ ボンズ(1835 〜82)です。彼は過去のイギリス の穀物価格データから農業生産の周期と黒点の増 減の周期が一致することを示し、太陽の活動が景気 循環をもたらすことを主張したのです。ただし、そ の後、この「太陽黒点説」はパッとしませんでした。 そもそも太陽活動の周期によるエネルギー量の変 動は小さく、また太陽の活動周期よりも短い農業生 産の周期があることが判明したからです。現在でも サンスポット(黒点)均衡という考え方があります が、経済活動とは何の関係もない出来事でもそれに よって人々が期待を変えれば経済活動が影響を受 けるというもので、黒点の増減は経済活動になんの 影響も与えない出来事として考えられているの です。   ところが、近年「太陽黒点説」が復権する兆し があります。宇宙現象と気候変動に関する最近の研 究から、太陽系外から地球に降り注ぐ宇宙線が雲を 発生させることが分かってきました。つまり、太陽 活動が活発な時期は太陽からの磁場が宇宙線の防 波堤となる一方、太陽活動が不活発な時期にはその 防波堤が機能せず、大量の宇宙線が地球にそのまま 降り注ぎます。宇宙線が降り注ぐことによって大量 発生した雲は地表に届く太陽光を遮り、気温を低下 させるのです。実際、1645 年~ 1715 年には太陽 活動が不活発となり、黒点がほとんど発生しません でした。その間、北半球の寒冷化が進行し、英国の テムズ川は凍結したと言われています。そして現在 も黒点数が増加する兆しがなく、再び低迷期に向か うのではないかと懸念されています。もちろんこの 「宇宙線説」は仮説の段階であり、今後多くの検証 が必要です。しかし、ヒトの動きと同様に、太陽の 黒点の動向が「宇宙線説」に裏付けされて経済・社 会の関心の的になる日が来ないとは限りません。   とかく新規なことや珍しいことが世界を変える と考えがちですが、実際にはそのようなことはほと んど起こりません。むしろなじみのある、ありふれ たものにこそ次代を切り拓くパワーが隠されてい るような気がします。こういった身近なモノやコト を別の視点で捉えなおすことで次代を解くカギが 見つかるかもしれません。