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2015年7月1日
「休息」を考える
主席研究員(産業技術)
黒澤 幸子

近年、仕事を行う上で「休息」が重要視されている。背景には、うつ病をはじめとした、精神疾患の罹患者の増加や、労働基準法を度外視した、いわゆるブラック企業の実態の露呈等が挙げられるが、有給休暇消化率の管理に奔走したり、プライベートの状況を気にして「失恋休暇」なるものを設定したりする企業まで出てきている現状はいささかやり過ぎな感が否めない。  そもそも「休息」とは何なのだろうか?国語辞典では仕事や運動等をやめて、心身を休めること・くつろぐことだそうだ。確かに、仕事が立て込めば人は誰でも疲弊する。しかし、「休息」とは「休みがある=休息が取れる」ことなのだろうか?  休息を取りたくても取れない人の行きつく先の一つとして精神疾患の罹患がある。精神疾患の治療でも「休息」という言葉はよく使用される。精神科病院では休息目的の入院なんてものまであるほどだ。しかし、精神科に携わる医療者に言わせると「休息」とはただ単に休むことだけではなさそうである。  では、精神科では「休息」とはどのように考えているかと言えば、「睡眠状況」「所属集団での適応状況」「余暇の活用状況」の三つに着眼点を置いている。「睡眠状況」はご想像の通り、いかによく眠れているかであるが、後の二つは、一言で言えばストレス環境での負荷の緩和と、発散する場所の確保である。  生きている以上は、人は生活時間の大半を何らかの組織に所属した状態で過ごすことになる。学校であったり、会社であったりと、年齢によって状況はさまざまだが、そうした所属組織内でのストレスが大きいと、いくら休息時間が多くても「明日からまた仕事かぁ」と考えるだけで憂鬱になり、せっかくの休みも台無しである。裏を返せば組織の環境に適応できており、その場所での意義や所属価値を見いだしている人は、たとえ休みが少なくても周囲と協力しながら意義のある行動を取ることができる。  また、休みの時間がいくらあっても、漫然と時間が経過しては日々のストレスは発散されない。逆に短時間の休暇でも、趣味や発散できることを見つけている人はその短い時間の中で、十分な休息が取れているケースも多々ある。  弊社は、「ワーク・ライフ・バランス」を掲げる会社である。仕事とプライベートのバランスは生きていく上で大変重要である。しかしながら、「ライフ」の充実を=休みを取ること、取らせることと勘違いしてしまうと、有給休暇消化率は高いのに仕事の効率は上がらないという状態に陥る危険がある。一人一人にとって「休息」の捉え方は違うと思うし、その個別性を尊重していくことが本当の意味で「休息が取れている」状態なのではないかと思う。量的な「休息」ではなく、質的な「休息」とは何なのか。自分は本当に「休息」が取れているのか。今一度考えてみるのも良いかもしれない。