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2019年10月15日
経営センサー10月号 2019 No.216

■今月のピックアップちゃーと

世界で最も働き者は? ~年間労働時間最長はメキシコ、日本は22位~

産業経済調査チーム

■産業経済

第4次産業革命の到来は令和最初の設備投資ブームをもたらすか ―日本の設備投資動向と今後の課題―

産業経済調査部長 兼 チーフエコノミスト 福田 佳之

Point
(1)日本の民間設備投資は最近回復しているものの、好収益の割には緩慢といえる。その背景には不確実性の増大や投資機会の減少など先進国共通の要因が関係している。
(2)日本の緩慢な設備投資について日本ならではの要因もある。それは非製造業領域、とりわけサービス化への取り組みが遅れていることと「地産地消」が進展したことである。
(3)第4次産業革命の到来が見込まれる中で日本企業が設備投資の本格的回復を図るには「三つの思い込み」からの脱却を図る必要がある。

変革期にあるイノベーションモデルと大学の取り組み

国立大学法人東北大学 オープンイノベーション戦略機構 特任教授 石川 健

Point
(1)イノベーションは、連携マインドによって知識が結合することから生まれる。
(2)世界では、研究の大学、技術開発のベンチャー、事業の企業という三者による連携が、イノベーションモデルの主流になりつつある。
(3)国内大学の連携活動は進化中であり、連携マインドにあふれる東北大学でも、新たな取り組みに挑戦している。

■世界情勢

英国EU離脱(ブレグジット)の最新状況 ―英・EU新体制によるブレグジットの予想シナリオと日本企業のとるべき対応について―

PwC Japan合同会社 ディレクター 舟引 勇

Point
(1)7月に入り英国では強硬離脱派のジョンソン新首相が就任、対するEU側も任期満了に伴い、秋から主要ポストが新人事に入れ替わる。
(2)ジョンソン首相は合意なき離脱も辞さないと主張しており、英国のEU離脱はいまだ不確実な状況が続いている。
(3)日本企業はブレグジットがもたらす潜在的なあらゆる可能性に対応するため、引き続き確実に準備を進めておく必要がある。
(4)先進的な企業は、ブレグジットを変革の機会と捉え、中長期的な欧州戦略の見直しや事業の高度化への取り組みを進めている。

■技術・業界展望

急成長するアイリスオーヤマの現在 ―独自のビジネスモデルで家電市場を席巻する―

長崎県立大学 経営学部 国際経営学科 教授 江崎 康弘

Point
(1)平成の時代は多様な電機製品を手掛けた「総合電機」が壊滅した時代であった。
(2)家電分野で日本の大企業が苦しむなか急成長しているのがアイリスオーヤマである。
(3)商品開発の根幹をなすのは、「新商品開発会議」である。
(4)大山会長は、商品企画から研究、製造、物流、販売まで内製化にこだわり、また消費者志向の経営には、IPOでの株主重視の経営は阻害要因にしかならないと明言した。
(5)経営方針は、生活者視点およびユーザーイン発想が根幹にある。

製造業におけるAIの活用事例と今後の展望

株式会社スカイディスク 代表取締役CEO 橋本 司

Point
(1)現在のAIは、熟練技術者による「匠の技」のメカニズムをデータから解き明かし、課題の解決に導いてくれるものである。
(2)五感を活用した検査工程では特に暗黙知が多く、人の聴覚特性に近いAIへのニーズが高まっている。
(3)化学業界におけるAI適用の新領域として、MI(Materials Informatics)の研究も進めている。

■視点・論点

組織力を高めるための人材育成のあり方

株式会社HRインスティテュート 常務取締役 チーフコンサルタント 染谷 文香

1.組織力を高める必要性 VUCAの時代といわれている。VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を繋げたものだ。要するに先の見えない予測しづらい状況になっているということだ。ビジネスの競争がグローバル化し市場が極めて速く変化していく中、組織自体も変革をし続けていかなければ生き残れない時代になってきているのだ。つまり企業も事業構造、組織構造を多様に変化することができなければ時代に取り残される。

■マネジメント

経営に効く!演劇アプローチ

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科 教授 黒岩 健一郎

Point
(1)イノベーションやダイバーシティなど、経営のさまざまな課題に、演劇アプローチが効果的である。
(2)演劇アプローチとは、役者の役作りの手法を応用したものだが、視点取得を通じた共感の手法である。
(3)欧米では、演劇アプローチの教育プログラムが充実している。

■ヒューマン・ディベロップメント

創設された「特定技能」と不明瞭な「未熟練外国人労働の在留資格」 ―増加する技能実習生の国際的な位置づけは?―

関西学院大学大学院 社会学研究科 教授 野瀬 正治

Point
(1)現在、外国人労働者150万人といわれる中、本年(2019年)4月に、「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が施行され、創設された在留資格「特定技能」などを通して、外国人労働者の受け入れ拡大が始まった。
(2)受け入れ制度はすでに30年が経過し、実態との乖離等が問題となっている。すなわち、1988年の第6次雇用対策基本計画の下、未熟練労働は受け入れないことになっているが、実際には技能実習生として受け入れが進み、外国人労働者の中核になる一方、人権も含めた諸問題が拡大している。加えて、創設された在留資格「特定技能」と従前の在留資格「技能実習」との事実上の補完的関係(連動)は、国際的視点で見ると受け入れ制度としての妥当性も疑わせる。
(3)実習目的ではなく労働者として来日している技能実習生の現実を直視し、労働市場全体を視野に入れた受け入れ制度の国民的コンセンサス形成を進め、国際的視点に立って、創設された「特定技能」も含めた在留資格全体を抜本改革することが、健全な日本社会形成のために避けては通れないステップである。

■ちょっと教えて!現代のキーワード

「2025年の崖」 「全固体電池」

産業経済調査部門

■お薦め名著

『会計の世界史』 ―イタリア、イギリス、アメリカ― ―500年の物語─

田中 靖浩 著

■ズーム・アイ

「体感」が価値を生む時代の仕事術

取締役 エグゼクティブエコノミスト 増田 貴司

「モノからコトへ」「モノよりも、体験や物語のためにおカネを使う時代になった」とよく言われます。でも、体験や物語ならば売れるのかと言えば、それだけでは不十分です。人に購買行動を起こさせる源は、心地よい「体感」です。鳥肌が立つような生理的興奮といったような「体感」が伴うことが重要で、それがない体験や物語は退屈で面倒なだけで、人を惹きつけません。