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2012年5月1日
経営センサー5月号 2012 No.142

■経済・産業

製造業の海外シフトと国内立地の意義 ―海外進出促進は空洞化回避につながるか?―

産業経済調査部長 チーフ・エコノミスト 増田 貴司

【要点(Point)】
(1)日本企業の海外進出が急ピッチで進み、空洞化懸念が強まっているが、空洞化をめぐる議論はイメージ先行で混乱している。現状では深刻な空洞化は起こっていない。日本企業は海外進出を拡大すると同時に、国内事業も拡大する姿勢を堅持している。
(2)多くの日本企業は一定の国内生産を維持することに積極的な意義を認めている。震災後の日本での立地に魅力を感じる外国企業も散見される。
(3)「企業の海外進出が増えると、国内の雇用も増加する」という考え方が主流になりつつある。これに伴い、政府の空洞化回避策の新潮流として、「企業の海外進出支援を通じて国内の空洞化を回避する」政策が採用され始めた。
(4)上記の政策が成功するためには、前提条件が必要だ。①海外進出した企業が本社機能や研究開発部門を国内に残し、海外で稼いだ利益を国内に還流させて国内で投資するという前提、②日本企業の海外工場で、最終製品の生産が増えるほど、それをまかなう先端部材の日本からの輸出が増加する構造が今後も維持されるという前提、の二つである。これらの前提が満たされる保障はない。
(5)企業の海外進出を支援するだけでは、企業は強くなっても、国内の空洞化回避に必ずしもつながらない。企業が国を選ぶグローバル化の時代の国家経営は、国内を魅力ある投資環境に整備し、その国土で企業に存分に活動してもらう努力なしには成り立たない。

PDF : 詳細(PDF:1,837KB)

■繊維産業シンポジウム講演抄録

『縫製産業のグローバルシフトとYKKの対応』

YKK株式会社 代表取締役社長 猿丸 雅之

2012年3月9日に開催した繊維産業シンポジウム「北陸産地の復活を目指して」(東レとの共催)におけるYKK株式会社代表取締役社長猿丸雅之氏のご講演をご紹介します。

■産業技術

なぜ日本はイノベーションを起こせないのか? ―日本の企業はイノベーションには向いていない?―

公立大学法人首都大学東京 産業技術大学院大学 教授 吉田 敏

【要点(Point)】
(1)イノベーションは、「既存の慣行を刷新して、市場に新しい価値を創造する現象」です。この二つの点、「変化」と「価値の創造」が重要です。
(2)日本の企業は、主に三つの理由からイノベーションにむかない側面があります。
(3)これらの三つの理由に対し的確に対応していくことにより、日本企業の弱みを強みに変えていくことができる可能性があります。

■視点・論点

「中国の歴史と中国人の本質」について

日本香港協会 理事 藤澤 慶彦

日本人、中国人ともに、お互いの国の考え方や行動について、理解できないことが多い。下記に象徴的な事柄を挙げてみる。

■環境・エネルギー

電力危機をスマートに乗り切る─カギは蓄電システム

東京大学 総長室アドバイザー 村沢 義久

【要点(Point)】
(1)2012年はスマートハウス元年になると言われている。その推進役となるのは、創エネ、蓄エネ、省エネの三つの機能である。
(2)創エネを担うのは低コスト化の進む太陽光発電であり、蓄エネの主役は家庭や事業所向けの蓄電システム(バッテリー)である。省エネを含む三つの機能の要としてスマートメーターの重要性も増している。
(3)EV搭載の駆動用バッテリーもスマートハウスの一員として期待されている。

■アジア・新興国

中国 研究者シリーズ(第7回) 日本が構築に力を入れる「東アジア自由ビジネス圏」

独立行政法人 日本貿易振興機構 アジア経済研究所 地域研究センター 東南アジアⅡ研究グループ 副主任研究員 藤田 麻衣

【要点(Point)】
(1)日本政府は、2020年までに「アジア太平洋自由貿易圏の構築」を戦略的目標としている。
(2)「東アジア自由ビジネス圏」の実現には、中国と韓国が入るかが鍵となる。
(3)アメリカのTPPの枠組みと「東アジア自由ビジネス圏」の両者の調整が、貿易立国の日本の使命である。

 

アジア新興国シリーズ(第6回) 転換期のベトナム経済 ―2020年の工業国入りに向けた戦略と課題―

独立行政法人 日本貿易振興機構 アジア経済研究所 地域研究センター 東南アジアⅡ研究グループ 副主任研究員 藤田 麻衣

【要点(Point)】
(1)2007年頃まで順調な成長を遂げてきたベトナム経済は、2008年頃から高インフレや経常収支赤字などの相次ぐ不調に見舞われている。
(2)不調の背後には、企業セクターの脆弱性、市場経済を支える制度の未発達、政策策定と実施の不備といった構造的な問題がある。
(3)ベトナムは、生産性の向上を通じた、新たな経済成長モデルへの転換を志向しているが、実現に向けた取り組みには紆余曲折が予想される。

■ワーク・ライフ・バランス

佐々木常夫塾第1期 ―『働く君に贈る25の言葉』実践講座開講から見えてきたもの―

ダイバーシティ&ワーク・ライフ・バランス推進部 コンサルタント 塚越 学

【要点(Point)】
(1)佐々木常夫塾(以下佐々木塾)は、自身のベストセラー本『働く君に贈る25の言葉』を教材に、“良い本を読んだ”で終わらせず、自分の行動に落とし込み、自らの職場や家庭で実践するために塾生同士が研鑽しあう、次世代育成型ネットワーク塾でスタートした。
(2)参加者はミドルマネジャー層がメイン。困難な事前課題に各自で取り組み、ワークショップの中で塾生同士が共有しあい、“良い習慣”などが継続できる仕組みとした。
(3)佐々木塾は、第2期を開校しており、今後も年に数回開校予定。迷えるミドルマネジャー層を支援し、日本を元気にしたいと考えている。

PDF : 詳細(PDF:1,659KB)

■人材

人材育成の視点 体験的リーダーシップ論(第1回)

特別研究員 武澤 泰

【要点(Point)】
(1)「リーダーシップのあるべき姿とは何か」と考え続け、努力を重ねるならば、誰でも必ず優れたリーダーとなることができる。
(2)リーダーが、実現したいビジョンを持ち、他者に働きかけて協力を仰ぎ、その実現を目指すことが、リーダーシップの基本である。
(3)今号では、ビジョンをいかにして作るのかを読者諸賢と一緒に考えていきたい。その参考のために、筆者の体験を述べる。
(4)筆者は販売不振に直面して悩み、各段階の顧客ニーズを書き出すことからビジョンを導き出して行動し、成果に結びつけ得た。その体験を紹介する。

PDF : 詳細(PDF:1,305KB)

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」「シェールガス」

■お薦め名著

『ホワイトハウス・フェロー』 ―これぞリーダーシップの最高峰―

チャールズ・P・ガルシア 著 池村 千秋 訳

■ズーム・アイ

味見と火加減

人材開発部長 小西 明子

某TV局の情報番組に、若い女性に街頭で料理を作らせるコーナーがあります。スキー場や海水浴場、遊園地などで、つかまえてきた、二十代前半くらいまでの若い女性に、酢豚、揚げだし豆腐、アジフライ、だし巻き卵など、家庭でお総菜として出されるおなじみの一品をレシピなしでその場で作ってもらうというものです。並んだ魚のどれがアジか分からず、サバやカマス、はたまたアジの開きをフライにしてしまう人、「トロミづけ」のため大量のかたくり粉を直接鍋に投入して正体不明のゲル状物体を作り上げる人、トンチンカンな調味料ですさまじい味に仕上げる人など…珍場面続出です。レギュラー出演者が眉をひそめたり、爆笑しながらそのVTRを鑑賞した後、プロの料理人が「正しい作り方」を披露。笑いながら見ている私も、街頭で突然言われたら逃げ出すしかないなと思うメニューもありますし、プロの作り方を見て、いつものやり方がいかにいい加減なものか、思い知らされることもしばしば。若い人を笑えないと思うことも多いのです。

■今月のピックアップちゃーと

通勤だけでくたくたです ~あふれる車で新興国の自動車通勤は修行の様相~