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2014年4月1日
経営センサー4月号 2014 No.161

■今月のピックアップちゃーと

日本の医療費は相当お手頃 ~OECD平均以下の安さだが、先行き上昇が不可避~

■経済・産業

米国のシェール開発に対する環境規制の行方

産業経済調査部長 シニアエコノミスト 福田 佳之

【要点(Point)】
(1)シェール開発による環境問題は、現在、主に水の消費量や水質の汚染に焦点が当たっている。具体的に、①水不足、②フラッキング水の地下水汚染、③使用済みフラッキング水の管理不十分による河川等の汚染や地震の頻発に分けられる。
(2)こうした環境問題に対して、開発企業は、水に代わる液体の探索、安全性の高いドリリングケミカルへの代替、廃水の再利用などで対応を進めている。
(3)シェール開発の監督は主として州政府が行っていた。州政府は、環境リスクの調査に加えて、フラッキング水に投入されるドリリングケミカルの公開を義務付けているが、不十分である。
(4)現在、連邦政府が規制に乗り出す動きを見せており、環境保護庁がシェール開発の飲料水汚染について調査中である。2016年中には最終報告が行われる予定であり、その後何らかの規制が導入される可能性がある。
(5)ただ、連邦・州政府としても、シェール開発がもたらす雇用や税収増を考慮すると、規制の強化によってシェール開発が頓挫することを望んでいない。今後、シェール開発で多数の人命や環境が失われる大規模事故が生じない限り、開発企業、当局、住民のいずれにも受け入れられるシェール開発の在り方についてのコンセンサスがまとまると見られ、環境問題はシェールガス開発の大きな障害にならないと予測される。

PDF : 詳細(PDF:838KB)

■業界展望

スマートフォン普及のインパクト ―スマートフォンが加速した日本電機メーカーの事業構造改革―

産業経済調査部 シニアアナリスト 永井 知美

【要点(Point)】
(1)スマートフォン(以下スマホ)事業からの相次ぐ撤退、ソニーのパソコン事業売却。近年、日本の大手電機メーカーは、薄型テレビ事業の見直しなど大規模なリストラを進めてきたが、ここへきて再加速した感がある。要因の一つがスマホの普及である。
(2)スマホは、2007年のiPhone登場を契機に短期間でデジタル機器の主役となった。
(3)スマホは電話機というより小型パソコンであり、アプリと呼ばれる応用ソフトを使ってカメラ、ゲーム、電卓、音楽、カーナビ等さまざまなサービスを利用できるため、幅広い分野に影響を与えている。
(4)スマホの普及は、フィーチャーフォン、デジカメ、ゲーム専用機、カーナビ、音楽プレーヤーから、ネット販売に顧客を奪われつつある書店・家電量販店など、さまざまな分野に打撃を与えた。
(5)一方、スマホ普及で恩恵を受けたのは、(足元、携帯端末業界の構造変化で旗色が悪くなりつつあるが)アップルとサムスン電子である。電子部品メーカー、通信業界も潤った。
(6)スマホ登場以前から、日本の大手電機メーカーはデジタル機器分野で苦戦していたが、スマホ普及による業界の地殻変動で、一段の事業見直しを迫られている。

PDF : 詳細(PDF:1,834KB)

■視点・論点

信用金庫取引先にみる中小企業の景況感 ―改善傾向のなかに垣間見える構造問題の行方にも注目―

信金中央金庫 地域・中小企業研究所 上席主任研究員 鉢嶺 実

【要点(Point)】
(1)アベノミクス”の流れを受けて、中小企業においても全体としては景況感の改善が進んでいる。
(2)その一方で、構造的に景況感の浮上し難い中小企業も一定割合存在しており、中小企業政策の再構築の行方が注目される。
(3)こうしたなか、地域に根ざす中小企業の身近なパートナーである信用金庫の役割も今後ますます重要になっていくものと認識される。

■マネジメント

【シリーズ企業と広報(8)】 100年先も健全な企業であり続けるために ―東レ広報30年の経験で学んだこと― 企業広報のこれから、企業経営のこれから

東レ株式会社 顧問 斉藤 典彦

【要点(Point)】
(1)グローバルな場でコミュニケーションを改善するため、企業はあらゆるメディアや製品や役員・社員をツールとして統合的なコミュニケーションを図る必要がある。
(2)持続的成長によって“長寿企業”を目指すなら、社長が交代しようが経営はぶれないような経営風土を根付かせるため、本社スタッフの能力を高めることが重要である。
(3)企業経営者に必須なのは「“成長”への意思とそれを支えるリスク管理能力」であり、「ステークホルダーの声に耳を傾け、期待に応えようとする感受性」も不可欠である。

■環境・エネルギー

気候変動に関する2020年以降の国際枠組みをめぐる議論

京都大学 名誉教授 地球環境戦略研究機関(IGES) シニア・フェロー 松下 和夫

【要点(Point)】
(1)本年9月には国連で気候変動サミットの開催、そして10月には気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告書の公表が予定され、2020年以降の国際枠組みが注目を集めることになる。
(2)昨年11月の国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)では、各国に対し、早ければ2015年3月までに温室効果ガス削減目標などに関する約束草案の提出を求めている。一方、COP19中に公表した日本の新削減目標は、国際社会から批判を受けた。
(3)わが国としては今後、2020年とそれ以降のより野心的な温室効果ガス削減目標と政策について、早急に議論を進める必要がある。

■人材

人材育成の視点 東レ経営研究所MOT研修シリーズ(第23回) 全期合同同窓会「T-MOTマスターフォーラム(宮木塾)」設立総会 記念講演 抄録 創発的破壊 イノベーションとパラダイムチェンジ

一橋大学イノベーション研究センター 教授 米倉 誠一郎 氏 企画・編著: (株)東レ経営研究所 特別研究員 MOTチーフディレクター 東京農工大学大学院 技術経営研究科 ゲスト講師 宮木 宏尚 記録・写真: フリーランス・ライター (株)東レ経営研究所 特別研究員 山崎 阿弥

【要点(Point)】
(1)日本の経営層のイノベーションの重要性に対する認識の低さが危惧される(GEの調査)。これはシュンペーターが「五つの新結合」と定義するイノベーションを「新商品創出」や「技術革新」と間違って認識していること、イノベーションは体系的に生まれるものではないという認識があることによるものと思われる。体系的な文化や資金投資によってもイノベーションは可能である。
(2)今、オープン・イノベーションが注目されているが、何をオープンにし、何をクローズにするかは、極めて戦略的な課題である。コアの技術を持ち寄ることが重要である。
(3)オープン・イノベーションが重要視される環境にあって、「T-MOTマスターフォーラム(宮木塾)」のような組織が設立された意義は大きい。

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

「日本のソフトパワー」 「再生医療」

■お薦め名著

『リーダーを目指す人の心得』  ―リーダーはまず部下を信頼し尊敬せよ―

コリン・パウエル、トニー・コルツ 著 井上 耕二 訳

■ズーム・アイ

名も知らぬガイジンさん、笑いなさい

産業技術調査部 岩谷 俊之

欧州出張で飛行機を乗り継いだ時の話です。大きな空港で、出入国審査が挟まった乗り継ぎというのは時間がかかるもので、1時間程度の余裕がないと危ない。この時私が乗り継いだフランクフルト空港の標準乗り継ぎ時間もちょうど1時間でした。