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2019年3月18日
繊維トレンド2019年3・4月号 2019 No.135

■特別レポート

日本繊維産業連盟 総会について

日本繊維産業連盟事務局

 日本繊維産業連盟は、2019年1 月16日、東京プリンスホテルにて日本繊維産業連盟総会を開催した。ここでは、当日の鎌原会長挨拶と、平成31 年活動方針を紹介する。

■ファイバー/テキスタイル

合繊原料市況動向 -2018年の振り返りと今後の見通し-

東レ株式会社 原料部 原料第1課 課長 久田 崇

【要点(Point)】 本稿では、原油、ナフサに加え PTA、EG、カプロラクタム、AN、PP等の合繊原料について、2018年の動向と今後の見通しについて紹介する。 1 原油、ナフサ 原 油:米国シェールオイル増産継続、中東地政学リスク拡大、OPEC 協調減産強化、米中貿易摩擦等による景気減速、ベネズエラ経済混乱等の要因が入り乱れて年間通じて乱高下。 ナフサ:欧米で脱ナフサ(クラッキング原料のナフサからガスへの切替)の流れが進んだことを主因とする供給過剰バランスが継続。ナフサ価格の変動は原油価格の値動きをフォローする展開。 2 合繊原料は原油の乱高下に伴い原料価格も大きく変動した1年となった。個別に見ると、ポリエステル原料は中国需要が10% 超の高成長を2年連続で記録するなどで需給が逼迫して高騰(PX、PTA は高騰、MEG は年後半から下落)。アクリル原料は世界最大手INEOS のプラントトラブル多発で供給不足となり高騰したが年末には需要減速を主因に大きく下落。ナイロン原料(カプロラクタム)は年間を通して高値を維持したが年末から下落。ナイロン66は一昨年から続く粗原料アジポニトリルの不足により異次元の高値が継続。 P T A :長く続いた供給過剰時代を抜けて2018年はマージンが回復。需要は堅調に伸長する中、大きな増設は限定的で需給バランスは今後もヘルシーな状況が続く見込み。 E G :中国石炭MEG の増設によりMEG の需給バランスは急速に供給過剰へ傾いた。2019年も引き続き石炭MEGの増設計画が多数あることに加え、マレーシアのRAPIDプロジェクト、米国シェールガス由来のMEG プラントが立ち上がるため、供給過剰バランスが当面継続する見込み。 カプロラクタム:堅調な需要と中国環境規制による生産量抑制によるタイトバランスを背景に年間を通じて高値を維持したが、米中貿易摩擦問題等による需要調整で年末に下落した。2019年は増設計画が多数あり、需給バランスは緩和方向となる見込み。 A N :最大需要のABS 樹脂を始め、アクリルファイバーを除く全ての誘導品需要が堅調に推移しタイト化が進む中、世界最大サプライヤーINEOS のプラントトラブルにより価格は高騰した。年末にかけて米中貿易摩擦による需要減退を主因に 暴落したが、足下は底を打ち再び上昇基調。 P P :日本国内は業界再編での生産能力削減の流れでタイト環境が継続する中、日本ポリプロの長期トラブルなどにより超タイト環境となったが、年末には回復して落ち着きを取り戻した。2019年もタイト環境は継続見込みだが輸入品が増加傾向にあり、バランスは緩和方向。

2018年の世界の化繊生産動向

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主席部員 戸円 真弓

【要点(Point)】
(1)2018年の世界の化学繊維生産(推定)は中国など主要6カ国・地域を集計した結果、前年比+6.1 %となった。
(2)このうち合繊(オレフィン繊維を除く)が+ 6.1%、セルロース繊維(アセテートトウを除く)が+7.3 %といずれも増加したが、品種別でみると原料の高騰が続くアクリルS が− 8.6 %と大幅に減少した。
(3)主要国・地域別にみると、最大の中国が+7.7 %と増加基調が続いているほか、西欧がポリエステルの好調により+4.6% となった。

2019/20年秋冬の生地と2020年春夏の糸の展示会から 欧州ファッションの動向を探る

株式会社インテグレード 代表取締役社長 欧州繊維専門月刊誌『Twist』在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)パリで開催された2019/20 年秋冬向け生地の展示会プルミエールヴィジョン(PV)は、色調とデザインとイノベーションの点から生気にあふれた内容であるとともに、サステナビリティに焦点を当てたものでもあった。トレンドカラーはブラウン、オレンジ、イエローが基調で天然素材と化合繊との巧みなブレンド、ファンシータイプの糸による風合いと表面効果の差別化など各社独自の工夫が顕著だ。加えて化合繊など高付加価値繊維素材をブレンドして生活者の日常生活のシーンに合わせた保温・撥水等の機能を付与することがハイエンドなブランドでも盛んとなりつつある。
(2)ミラノで開催された2020年春夏向け糸素材のFiloは、革新的な素材ブレンド、光沢を強調した見栄え、革新的なサステナビリティへの挑戦など多彩なプレゼンテーションで賑わった。色彩の基調は、夏ものとしては総じて濃い目の水色や赤・ピンクだが、ラメ糸等を使った光沢ないし輝きへの人気が戻ってきている。糸素材の段階でも各出展社は、羊毛・綿・麻などの天然素材に化合繊や機能繊維をミックスして、自然と技術をバランスしたものを求めて独自の開発成果を披露している。この糸素材での展開が次の20/21 年秋冬向け生地の提案に引き継がれてゆく。
(3)PVとFiloに共通したコンセプトはサステナビリティへの取り組みで、これが年を追って進展している。テンセルやベンベルグ等木材・綿花由来の素材に引き続いて、麻繊維もウールを含む天然素材と組み合わせることで、用途を広げて循環経済のサプライチェーンに積極的な参入を始めている。このようにサステナビリティについて時代を先取りする企業がそれぞれ取り組んでいる一方、さまざまな機関が別々の認定評価基準を設定しているために、消費者サイドのサステナビリティへの理解がなかなか進まず、製品購買の判断につながらない懸念がある。この問題意識を念頭に同展示会に参画したスイスのSpoerry とアメリカのCotton Incorporatedの興味ある取り組みの一端を紹介する。

■新市場/新商品/新技術動向

ファッションとテクノロジーを考える ニューラルポケット株式会社 (旧ファッションポケット株式会社)

経済産業大臣登録 中小企業診断士 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)ニューラルポケットの事業概要は、AIを使った科学的な情報により、繊維産業におけるワクワクするような商品開発、商品が消費者の目に触れる機会の向上、そしてプロパー消化率向上といった一連の流れを業界全体にもたらすこと。
(2)(1)AI MD 、(2)AI SMART-CITY 、(3)AI ADSの3つが主力サービス。
(3)AIによる画像解析で大きな事業効果を生み出したい、と考えたのが創業の志。繊維産業を選択した理由は、複雑性が極めて高い産業で、AIをやるからにはこのような複雑な産業こそ取り組むべき、と考えたため。
(4)繊維産業におけるAI普及の障壁は、ITスキルや技術開発への苦手意識が根底にあった。
(5)単純作業はAIに行わせて、人間は付加価値作業に注力すべきである。
(6)AIは知的好奇心をもたらし、そしてワクワクするサービスを生み出していくものだ。
(7)日本の繊維産業が今後発展するためには高付加価値化、海外との差別化が必須。そのためには単純作業を減らして、より多くの時間をそれらの業務に充て、産業全体で感覚知から形式知へ移行することが必要。AIはそれらのことを行う上で必要不可欠な手段だ。

ポップアップストア分析

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)ポップアップストアは、2002年ロンドンのターゲットがクリスマス商戦に始めた仮店舗での営業からといわれている。
(2)開催場所別にポップアップストアを分類すると、「路面店」「商業施設内」「ワンブランドショップ内」「セレクトショップ内」「その他さまざまな場所」となる。
(3)「路面店」のポップアップストアでは、ラグジュアリーブランドのブランド体験型が目立つ。新規顧客獲得が主要目的だ。
(4)「商業施設内」「ワンブランドショップ内」「セレクトショップ内」は、インショップ形態となる。リアル店舗の活性化、テストマーケティング、集客などが主要目的だ。
(5)開催目的は、新作、新商品のプロモーションであることも多いが、それだけでは話題にはなりにくい。ブランドの魅力をどのように発信していくのかが問われる。

■キーポイント

サステイナビリティー提案を本格化する繊維商社

ダイセン株式会社 「繊維ニュース」記者  鈴木 康弘 強田 裕史

 H&M ジャパンは昨年12月からプラスチック製のショッピングバッグを紙製に切り替え、有料化した。ユニクロやザラもプラスチック製レジ袋を生分解性プラスチックや紙製などへの切り替えを検討する。サステイナビリティー(持続可能性)をめぐる問題では、「リアルファーとフェイクファーではどちらが真のサステイナブルか」といった議論も盛んだ。こうした背景には、2011年の「サステイナブル・アパレル連合」(SAC )設立、2013年4 月のバングラデシュ・ダッカ近郊のラナ・プラザ崩壊事件、15年9 月に国連サミットで「SDGs」(持続可能な開発目標)が国連加盟193 カ国で採択されたことなどがある。環境、社会面での負荷軽減、バリューチェーンのグリーン化が進んでいく。そうした状況の中、商社の繊維部門や繊維商社がサステイナビリティー提案を本格化させている。

■統計・資料

主要合繊原料・国別・メーカー別設備能力(現状および増設計画)

・カプロラクタム ・テレフタル酸 ・DMT ・エチレングリコール ・アクリロニトリル