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2016年5月9日
経営センサー5月号 2016 No.182

■今月のピックアップちゃーと

和食ブームで世界に広がる日本食レストラン ~外国人の好きな外国料理は日本料理がトップ~

■経済・産業

原油市場の調整局面は持続するも、石化産業の「2018年問題」は顕在化しない可能性も ―シェール革命の石油・石化産業への影響―

産業経済調査部門 シニアエコノミスト 福田 佳之

【要点】
(1)
2015年後半からの原油下落はOPECなどの原油過剰供給が一因。16年2月から原油価格は上昇に転じているが、調整局面が終了したわけではない。
(2)
早ければ16年後半には原油需給は均衡へ向かうが、原油価格は上昇しない。膨大な原油在庫に加えて、新興国・途上国の成長が低迷していて原油需要の強い伸びが期待できず、さらに油価上昇時には米国のシェールオイル企業等が増産するため、上値が抑えられる。中期的に見ても原油価格はせいぜい1バレル60ドル台にとどまる。
(3)
スンニ派を奉ずる産油大国サウジアラビアは、周囲をシーア派国家群に囲まれたこともあり、最近、好戦的な姿勢を打ち出している。若くて野心家の国王の息子が実権を握ったこともあってサウジが中東動乱の引き金を引く可能性がある。
(4)
シェール革命の進行による米国でのエチレンプラントの増設に加えて、中国の石炭化学産業の勃興を背景に、日本国内および輸出先に米中の余ったエチレン系誘導品が流れ込み、日本の石化産業に打撃を与えるという「2018年問題」が危惧されている。
(5)
ただし、世界全体の石油化学製品の需給を見ると、アジアを中心に石化需要が高まっているために米中から日本国内に石化製品が流れ込む恐れは低い。
(6)
世界の石化需要は下流の幅広い産業分野での用途展開で堅調に推移する。今後はTPPの発効で農林水産品や食材の貿易や小売業の進出が活発となり、加盟国で食材等の包装市場が拡大することから石化需要がさらに伸びると予想される。

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■業界展望

変革を続ける欧州重電メーカー ―インダストリー4.0の中核企業・シーメンス―

産業経済調査部門 産業調査グループ グループリーダー チーフアナリスト 永井 知美

【要点】
(1)
独シーメンスは、売上高で欧州最大、世界でも米ゼネラル・エレクトリック(以下GE)に次ぎ第2位の重電系コングロマリットである。「ドイツ、重電、1847年創業の老舗」から連想される保守的で動きの鈍い大企業の印象とは異なり、時代の変化に応じて果敢に事業ポートフォリオを入れ替える経営の巧みさで、業界のトップ集団を走り続けてきた。
(2)
シーメンスの事業の柱はエネルギー、ファクトリー・オートメーション、交通、ヘルスケアである。GEと競合する事業が多い。
(3)
1990年代末頃業績停滞に陥ったシーメンスは、大胆な経営改革に乗り出す。改革の骨子は、コスト削減とGEをベンチマーキングした事業ポートフォリオ再構築である。
(4)
一連の改革が奏功し、シーメンスの売上高純利益率は03年度の3.3%から15年度には9.8%に上昇した。次の注力分野はインダストリー4.0である。
(5)
インダストリー4.0の目標は、ドイツ製造業の生産性向上と競争力強化である。インダストリー4.0と並ぶ、IoT活用の有力な取り組みとしては、GEが音頭をとる「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」がある。IOT分野で注目されるのは、どの企業が標準化のキープレイヤーになるかである。

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医薬品業界 ―薬価改定とイノベーションのはざまで何を模索するのか

クレディ・スイス証券株式会社 株式調査部 ディレクター 酒井 文義

【要点】
(1)
事業再構築、事業ポートフォリオ見直しの加速
(2)
薬価改定の影響度合いと2016年度業績予想の収益水準
(3)
消費増税がなければ2017年度は一転して無風へ
(4)
がん、アルツハイマーなどのアンメットニーズ領域での新薬開発の成否
(5)
再生医療や細胞医薬品などの最先端医療分野への展開
(6)
ジェネリック数量シェアの上昇と長期収載品の減少の相関が強まる

■産業技術

低炭素社会の実現に向けて ―火力発電の発電量増加、二酸化炭素排出を抑えられるか―

調査研究・コンサルティング部門(産業技術担当) 黒澤 幸子

【要点】
(1)
東日本大震災以降、発電における火力の割合が増えている。火力発電は出力コントロールも容易であり、主となる電源が何になっても変動部分の電源として今後も火力は利用されていく。
(2)
火力発電の問題点は原料と二酸化炭素の排出量である。そのために火力発電の高効率化は必須であり、各助成金制度等を用いて、高効率化に向けた研究・開発が進められている。高効率火力発電技術とIGCC、IGFCなどのプロセス技術を用いて、高い熱効率で二酸化炭素排出を削減したプラントが可能となる。
(3)
火力発電によって排出される二酸化炭素の利用および、回収等に関する技術研究・開発も進んでいる

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■視点・論点

文化と経済

エコノミスト、大阪商工会議所 大阪経済調査会 代表幹事 元・三和総合研究所 取締役理事 松下 滋

文化は経済を呼ぶ どこの国でも、新しいものは、必ずしも自ら生ずるわけではない。各国の本来性(固有の文化、生活様式など)は、自国内を起源とするものに限らない。日本も、特に明治以降、衣食住をはじめ各面にわたって、外国の影響を受け、自らのものにしてきた。20世紀初頭に活躍したチェコの評論家カレル・チャペックは、エッセイ集の中の「言葉の批評」~外国からの影響~のところで、「その国の本来性とは、起源にはそれほど依存せずに、むしろ輸入され消化されて内部に吸収されることにより生ずるものだ」、逆に「最もチェコ的なものから表面的な影響しか受けないとしたら、ただ(外国からの影響)と同じものしか得ていないことになる」と言っている。日本の文化が相手国に消化され吸収されていけば、日本からの影響のレベルにとどまらず、相手国に新たな本来性を生む。近年における訪日外国人旅行客の増加トレンド、そして東京五輪の開催が、そういった流れを軌道に乗せてくれるだろう。

■マネジメント

ライフサイエンス・イノベーションへの道、日本は勝てるのか!! ―外資系理化学・バイオ企業を35年生き抜いて日本企業へエールを送る― 第3回 企業買収とベンチャーへのスピンアウト

バイオディスカバリー株式会社 代表取締役 一般社団法人日本分析機器工業会(JAIMA) 先端診断イノベーション担当アドバイザー 岩瀬 壽

【要点】
(1)
米国式企業買収に振り回される
(2)
組織からのスピンアウトとサバイバル
(3)
ベンチャー企業の成功を夢見る決断とシナリオ

 

社内コンフリクトの原因と解決:会社を動かす三つの力を見極める

EQパートナーズ株式会社 講師 株式会社フローワン代表取締役 若林 計志

【要点】
(1)
社内コンフリクトの背景には、三つの力が働いている
(2)
成長に伴い三つの力のバランスが崩れることで、会社は迷走する
(3)
今後、企業は「統合戦略」と「アンバンドリング戦略」の選択を迫られる

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■ワーク・ライフ・バランス

女性活躍支援 ~魅力あふれる女性リーダー特集~ 地元とつながり、地域おこしにも協力するレンジャーという仕事

環境省 自然環境局 生物多様性地球戦略企画室長 中尾 文子 氏 聞き手 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部長 宮原 淳二 ライター フリージャーナリスト 土井 弘美

【要点】
(1)
国立公園の自然保護官(レンジャー)としてキャリアをスタート。
(2)
ゲルフ大学大学院(カナダ)へ修士課程留学、米国で長男を出産し国連機関で仕事をしながら長男の育児。次男の出産後はご主人が育休休業を取得(9カ月)。
(3)
地域振興なくして自然は守られないことを実感。現職では生物多様性および生態系サービスに関連する国内施策・国際協力の推進等を行う。

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■人材

人材育成の視点 東レ経営研究所MOT研修シリーズ(第27回) 全期合同同窓会「T-MOTマスターフォーラム(宮木塾)」例会 「紛争解決・平和構築への信念 ―現場での取り組みと日本の針路―」

講演抄録 認定NPO法人日本紛争予防センター(JCCP)理事長 JCCPM株式会社 取締役 瀬谷 ルミ子 氏  企画・編集: (株)東レ経営研究所 シニアリサーチフェロー MOTチーフディレクター、 東京農工大学大学院 技術経営研究科 ゲスト講師 宮木 宏尚 記録・写真: フリーランス・ライター・(株)東レ経営研究所特別研究員 山崎 阿弥

【要点】
(1)
多発する紛争やテロには、一時的な対応や支援では解決できない。再発を防ぐための紛争予防、平和構築への長期的視野での取り組みと自立支援が重要である。日本だからこそできる中立的な支援を草の根的に展開し、世界平和を築くことのできる現地の専門家を育成することが求められる。
(2)
紛争地の支援は自立支援が鉄則である。安全の確保、経済的自立、被害者の心のケアなどを通じ、紛争当事者が共存できる仕組みづくりや現地の人材の育成が重要である。
(3)
人生を左右するのは次の2点
①人生の節目節目で自分の手の中にある選択肢をしっかり認識し、タイミングを逃がさずに決定すること
②ニーズがあるが誰も手を付けていないこと、他の人が躊躇していることにいち早く取り組み、行動を起こすこと。
(4)
グローバル人材とは、ボーダーレスに活動できる人。単に国境だけでなく、所属や肩書に関係なく、どんな現場でも懸命に働き、成果を挙げられる人材。こんな人材が求められる。

T-MOT通信 No.3

2013年に立ち上がったT-MOTマスターフォーラム(宮木塾)は10月25日に第3期総会および記念講演会を開催し、3年目に入りました。その間、参加者・賛同者の数は増え、現在は100人を超える規模の組織になり、活動の幅も広がりつつあります。

■ズーム・アイ

「お互いさま」は本当に「お互いさま」?

人材開発部 福田 貴一

私は仕事柄、普段から言葉の意味や微妙なニュアンス、その使い方などに敏感な方ではあるのですが、このところ使われ方がやや気になる言葉があります。それは、「お互いさま」という言葉です。