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2001年5月1日
繊維トレンド5月号 2001 No.15

■市況

2001年下半期のアジア合繊市況を読む -道遠いポリエステルの市況回復-

向川 利和 特別研究員 繊維産業アナリスト

 97年、98年と2年間にわたり下げ続けたアジアの合繊市況は、99年第1Q(2月)で底入れしたあと、原油の高騰→合繊原料の高騰で一度は救われたものの、自立反発の域を出ず、本格的な回復軌道にのることはなかった。昨年(2000年)は、ナイロン長繊維がカプロラクタムの急落もあって、完全に「行ってこい相場」となり、ポリエステルは長・短繊維とも年間を通じ小動きに終始した。アジアから広がった合繊市況デフレの嵐は、今年(2001年)に入っても改善をみせず、需給両面から上げ圧力の乏しい展開となろう。2001年下半期のアジア合繊市況の行方は、基本的にはアジアのマクロ景気動向と引き続き過剰設備対策がカギとなるが、米国経済の減速と回復の有様も大きな要因となろう。

■トピックス

繊維業界における通商政策の活用(1) 繊維セーフガード措置の活用 

繊維調査部

 これまで繊維製品の輸入急増対策については「繊維トレンド」2000年12月号、2001年1月号、2月号で報告してきた。今回は繊維セーフガードに焦点を当て、下記の通りまとめた。日本繊維産業連盟による解説書「繊維セーフガードについてご理解いただくために」およびタオル業界の申請事例をあわせて紹介する。なお、タオル業界の現状については2000年11月号の「産地の主張:今治タオル」をご参照願いたい。

■産地動向

尾州産地の現状と課題(その2) -よみがえるか、尾州産地- 

日本毛織株式会社 紡績事業本部相談役 末松 五朗

 振り返ってみると、平成10年の1年間が、尾州毛織物産地が従来からの延長線上の考え方ではどうにも対応できなくなった非連続的な構造転換点であった。今までとは違うという認識は、平成11年後半頃から産地内に浸透したと思う。尾州産地の構造危機が決して「対岸の火事」ではなく、自社をも巻き込んだ存亡の危機であるという認識が浸透してきたのである。まだ現在では、多くの企業はこの現実にどう対応すべきか、先が読めないいらだたしさを感じている状況である。しかし、既に自社の目指すべき道を模索し、着々と手を打っている先進的な企業や動きも少なくない。これらの活動を牽引車として、ここ2年くらいの間に新しい尾州産地の構造が見えてくるように思う。尾州産地の歴史は長く、その間の文化、資産、企業家精神等有形無形の蓄積は大きい。これらをベースに、やがて新しい尾州産地がよみがえってくることを期待している。以下、現実の数字や動きを見ながら、現在の尾州産地の姿を、尾州産地の内部から私の意見もまじえて分析してみる。

■新製品・新技術動向

環境に優しい「無水染色法」の開発

株式会社 アーテック・ツガワ 代表取締役社長 津川 竹儀

■情報化

ファッション産業の構造改革を推進する IT戦略企業「株式会社コロモ・ドット・コム」設立

財団法人日本ファッション協会 事業企画部長 加藤 尚彦

 (株)オンワード樫山、(株)三陽商会、(株)サンエー・インターナショナル、(株)ファイブ・フォックス、(株)ワコール、東レ(株)、帝人(株)、(株)丸井、三井物産(株)、三菱商事(株)、住友商事(株)、(株)NTT-Xの12社によって、今年3月27日、ファッション産業の構造改革を推進するIT戦略企業「(株)コロモ・ドット・コム」が設立されました。 新会社は、ファッション産業界の有識者、及び旧・通商産業省(現・経済産業省)の参画のもと、平成11年5月に設立された「ファッション・ビジネス・フォーラム」(座長:中瀬雅通三陽商会会長)における日本のファッション産業の競争力強化策に関する政策的議論を土台とし、中瀬座長、及び分科会リーダーとして実質的取りまとめにご尽力された渋谷東レ専務取締役をはじめとするフォーラム・メンバーの熱き想いが充分に込められたIT戦略企業と言えます。  素材から、製品、店頭までの主要企業にご参加頂き、垂直に連携する世界初のITプロジェクトとしてスタート致しますが、フォーラムの幹事として当初から携わった一人として、ここに到る背景や当面の中核事業等についてご紹介したいと思います。

明確になったQR化の効果 -第8回QRアンケート調査結果から-

古宮 達彦 常務取締役

 繊維産業のQR化を推進する民間団体であるQR推進協議会では毎年1月に「繊維産業QRアンケート調査」を実施しており、その企画・実施は毎回、当研究所が受託している。同協議会の許可を得て、今年1月に実施した第8回アンケート調査の結果につき概要を報告する。詳細についてお知りになりたい向きは、当方までお問い合わせいただきたい。

■世界動向

内側から見た中国(今昔物語)11 -档案と日常生活-

東麗酒伊織染(南通)有限公司 社長 御法川 紘一

 前月号までは合弁会社の経営にあたった筆者の経験に基づき、中国特有の文化や国営企業の実態、ビジネスやマネジメントのポイントについて述べてきた。今月号では中国で合弁会社を経営していくなかで、障害となりうる「トウアン档案制度」について事例をまじえて紹介する。

■ファッション動向

e-commerceとファッションビジネスにおける可能性 -ニューヨーク便り- 

ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT) 留学生 山内 由紀子

アメリカにおけるe-commerce感の変化  少々古くなりますが、2月26日付けNewsweekに掲載されたe-commerce関する評論を紹介させて頂きます。 「インターネットは偉大な試供品だ。だが、偉大なビジネスとなるまでは、インターネットが経済を動かすことはないだろう。 ・・・ Napsterのケースが良い例である。1999年4月に同社はインターネットで音楽の無料ダウンロードのサービスを提供開始し、現在では世界に6200万人の登録ユーザーを持つ。近く、米連邦裁判所からはレコード著作権侵害の判決を下される可能性もあるが(注:3月6日に違法との判決が出た)、レコード会社への著作権料支払いのためにユーザーに対し使用料を請求するようにした場合、果たして企業として生き残ることができるか、保証はない。 ・・・ Napsterの事例は多くのインターネット・ビジネスに当てはまるだろう。インターネット・ビジネスのコストは、消費者が負担しているサービス料金では到底カバーできておらず、ベンチャー・キャピタリスト、投資家そして大企業から手厚い補助金を得ているにすぎない。しかし、そうした投資家達さえも、インターネット・ビジネスへの援助から立ち去り始めている。 ・・・ インターネットは、ほとんどのモノやサービスを運ぶための、最も効率良く、便利で魅力的な道具には、未だなり得ていないのだ。なぜなら、情報を製造するということは、製造者にとっては"驚異的に"高価であるにも関らず、消費者にとっては"素晴らしく"安価なことにしか見えないからだ。 ・・・ 今まさに、インターネット苦境の時代を迎えた。投資に対し利益を回収できるような、実用可能な"ビジネス・モデル"を見つけることこそが急務である。(RobertJ.Samuelson著、"TheInternetPredicament"、Newsweek2001年2月26日、p.49)」 長い引用となりましたが、最近のアメリカのe-commerceに対する一般的な見解を非常に端的に現している論評と思われます。とくに今年に入り、こうした「e-commerceは、未だ儲かる仕組みを持っていない」という論調が、NewYorkTimesやWallStreetJournal、Newsweek、Businessweekといったアメリカの主要誌で目立つようになりました。3月12日付けNewsweekでは、「ドット・コム・バブルがはじけるまでは、3分程度のちょっとしたしつこい売りこみと、紙ナプキンに書いた簡単なビジネス・プランさえあれば、数百万ドルのベンチャー・キャピタルを得ることはたやすいことだった。今は、もう少し違うものが必要だ。実際にお金を稼げるプランが必要なのだ(BradStone著、"NewValleyRules"、同上、2001年3月12日、p.66)」との小見出しが付けられています。  インターネットという偉大な技術を生み出したアメリカも、ビジネスでの成功、とりわけ企業対個人消費者というB-to-Cビジネスについては、大成功からは程遠い現実であることを、漸く認め始めたというところでしょうか。

■統計・資料

I.主要短繊維糸・織物の相手国別輸出入統計

1. 綿織物輸出  2. 純綿糸輸入統計 3. 綿織物輸入  4. ポリエステル綿混織物(T/C)輸入

II.主要長繊維・織物の相手国別輸出入統計 

1. ナイロンフィラメント(N-FY)の輸出  2. ポリエステルフィラメント(P-FY)の輸出  3. ポリエステルステープル(P-SF)の輸出  4. アクリルステープル(A-SF)の輸出  5. ポリエステル長繊維織物の輸出  6. ポリエステルフィラメント(P-FY)の輸入  7. ポリエステルステープル(P-SF)の輸入