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2021年1月20日
繊維トレンド2021年1・2月号 2020 No.146

■ファイバー/テキスタイル

新型コロナウイルス対応のマスク生産・開発 -欧米の動向を中心に-

技術ジャーナリスト 塩谷 隆

【要点(Point)】
(1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、欧州や米国において、3月中旬頃から、マスクの不足が顕著になり、対策が急速に進められた。ここでは、3月中旬から9月頃までの半年間において、特に、マスク不足に対応した欧米の主要企業・機関の動きを中心に紹介する。
(2)まず、マスクの主な材料であるメルトブロー不織布を中心に、増産への対応、生産体制の変更・再編などが、スピード感をもって推進された。異業種や研究機関の協力も目立った。
(3)マスクの総量を補う工夫として、本来はマスク用ではない織布やニット製のいわゆる布マスクも積極的に生産され、ファッション性の付加などにより、一般に浸透していった。
(4)また、よりウイルス防護効果の期待できる不織布マスクの開発・改善も進められた。更には、新型コロナウイルスに効果のある抗ウイルス加工についても、精力的に開発が進められている。

アフターコロナの中国・繊維展示会動向 -ネットシフトで備蓄品の存在感増す。素材はサステナブルの打ち出し強まる-

ダイセン株式会社 「繊維ニュース」上海支局長 岩下 祐一

【要点(Point)】
(1)新型コロナウイルスの感染拡大をいち早く抑えた中国では、繊維の大型展示会もほぼ通常通り開かれている。
(2)アパレルブランドのネットシフトが加速したことで、生地、糸ともに備蓄品をアピールする動きが顕著だ。
(3)新型コロナ禍で環境や健康への関心が高まっていることもあり、サステナブル素材の打ち出しが強まっている。

世界最高レベルの見本市から、2022年秋冬向けテキスタイル情報 -サステナビリティへのブランドや消費者からの後押しは一段と独創性のあるテキスタイルへ-

有限会社インプレス 代表 川上 淑子

【要点(Point)】
(1)トレンドのキーポイントは、伝統に一捻りを加えて外観と乖離したアンビバレンス(両面価値)と、優しく思いやりのあるプロテクション。
(2)未来を指向したデジタル化の加速は、世界的なパンデミック下でも、デジタル上のテキスタイルマーケット、トークショー等々の、多くの情報発信を可能にした。
(3)サステナビリティへの取り組みは、テクノロジーの高機能化と、尽きない独創性の追求により進化し、ブランドや消費者からの後押しにより、さらにトレーサビリティが促進された。
(4)着古した製品を回収して、新しい糸やファブリックに作り替え、アップサイクル製品を創作する。ファッション業界の新しい動きに注目である。

「夢の繊維」ポリプロピレンを染色する

福井大学産学官連携本部 客員教授 堀 照夫

【要点(Point)】
(1)さまざまな特性に優れ、廉価であるポリプロピレンは、「夢の繊維」として登場したものの、染色できる染料がなく一般衣料として広がることはなかった。
(2)従来の分散染料では実現しなかったポリプロピレンの染色に向けて、超臨界二酸化炭素流体を媒体とした新しいタイプの分散染料の開発を目指してきたが、このほど実現し染色堅ろう度の評価も行った。
(3)試作のポリプロピレンフリースはポリエステルに比べ4割近く軽量になるなど、今後の市場拡大が期待される。また、今回採用した超臨界染色は無水である点など環境負荷が低く、サステナビリティ社会に向けて重要性の高い技術である。

■縫製/アパレル

ファッションとサステナビリティを考える H&Mジャパン  -企業規模を生かし、循環型ファッションを目指す- CSR/サステナビリティ・コーディネーター 山浦誉史氏、PR プロジェクトマネージャー 田中都氏に聞く

国際ファッション専門職大学 国際ファッション学部 准教授 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)H&Mグループがサステナビリティに対して意識的に取り組むようになった大きなきっかけは、1990年代のアパレル製品生産国での環境汚染や児童労働など業界が抱える問題への対応。
(2)サステナビリティへの取り組みは「公正・平等でありながら循環型でクライメット・ポジティブなファッション産業へ変化を導く」というH&M グループのビジョンの下、企業規模を生かし、環境と社会と経済の3つに対して包括的にアプロー
チをしている。
(3)サステナビリティに配慮したモノづくりや運営をしていかないと、結果としてお客様を失うことになる。また、サステナビリティに取り組むことで、企業として成長できる、ということも示していきたい。
(4)サステナブルな商品が広がる上での理想は、商品そのものが魅力的で、いつの間にかお客様の間に浸透している、という形。
(5)企業がサステナビリティを志向する上で重要なのは次の4 点。①自分たちの製品がどこで、どのように作られているかなどを把握し、お客様への透明性を高めること。②サステナビリティに関連する連合や団体とのパートナーシップ。③技術を磨くこと。④自分たちの製品や事業を見つめて、その中にサステナビリティを見つけること。

■小売・消費市場

苦境に立たされたファッション企業 -ウィズコロナ時代の次の一手-

ムーンバット株式会社 顧問 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)新型コロナ感染拡大の中で、経済活性化策としてGo Toキャンペーンが実施され、人の動きも活発化したが、秋冬商戦も引き続き厳しいとの見方が強い。
(2)以下の5つの視点で、コロナ禍の中で苦境に立たされたファッション企業の次の一手を考える。①オフプライスストア、②デジタルシフト、③サステナビリティ、④アウトドアゾーンの拡充、⑤ウィズコロナ対応商品の拡充。
(3)海外におけるワクチン開発の進展など、明るいニュースはあるものの、まだまだ不透明な状況だ。アパレルメーカー、専門店、セレクトショップ、商業施設などは、生き残りをかけて、新たな挑戦や取り組みをしていくことになる。

■新市場/新商品/新技術動向

SPRING OF FASHION「STYLISTA」 -インフルエンサーやファッショニスタを販売員に変えるサービス-

フリージャーナリスト 土井 弘美

【要点(Point)】
(1)ファッションテック分野の企業「SPRING OF FASHION」は、2020年12月より「STYLISTA」というサービスを開始する。
(2)ファッションの好きな人たちを「ソーシャル販売員(スタイリスタ)」とし、フォロワーたちに向けてファッション情報を発信、販売につなげていく。
(3)販売方法は、ショップスタッフの投稿写真または、商品一覧から自分がいいと思うものをキュレーションするだけで、簡単に販売が可能。
(4)サンキューレターを出す、ポイント制度を作るなどの方法で、ほかのECサイトにお客を逃がさない工夫をする。

企業の信用度を高めるサステナブル関連の認証 -取得を目指すには正しい理解が必要-

ダイセン株式会社 「繊維ニュース」記者 強田 裕史

【要点(Point)】
(1)近年、日本の繊維産業にもサステナビリティの潮流が押し寄せ、これに対応する取り組みに、お墨付きを与える各種の認証にも注目が集まっている。
(2)サプライチェーンでお墨付きを得るには、時間、労力、費用を要することを事前に認識しておくべき。
(3)どの認証の取得を目指すかを決める際には、まずは目的を明確にした上で、認証そのものについての理解を深めることが肝要。

■キーポイント

RCEP(地域的な包括的経済連携)の署名について

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主幹  鍵山 博哉

 2020年11月15日、日本など15カ国の首脳は、地域的な包括的経済連携(RCEP)の署名を行った。RCEPが発効すれば、世界の国内総生産(GDP)や貿易額で3割を占める大型自由貿易協定(FTA)が発足することになる。  RCEPは当初、東南アジア諸国連合(アセアン:ASEAN)10カ国と日中韓、オーストラリア、ニュージーランド、インドの16カ国で交渉を開始したが、途中からインドは関税引下げによる貿易赤字の拡大などを懸念し、交渉から事実上離脱して今回の参加を見送り、15カ国での合意となった。  日本にとっては、貿易額で1位の中国、3位の韓国と結ぶ初のEPAとなる。RCEPにおいて、中国、韓国とも鉱工業品では、約9割について関税を即時または段階的に撤廃することとなった。