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2011年4月1日
繊維トレンド3・4月号 2011 No.87

■ファイバー/テキスタイル

2010年の世界の化繊生産動向

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主任部員 戸円 真弓

【要点(Point)】
(1)2010年の世界の主要繊維生産(推定)は7,260 万トンで、史上最高を記録。
(2)化繊生産は前年比12%増の4,620万トンで、3年ぶりの2桁増。
(3)化繊生産は中国が15%増と大幅に増加。その他の主要国・地域も軒並み増加した。

英国の毛紡績・織物産業の再生 -決め手はラグジュアリー分野への特化-

株式会社インテグレード 代表取締役社長 繊維月刊誌『Twist』(World Textile Publication Ltd. 発行) 在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)英国の毛紡績・毛織物産業が活性化に向けた動きを見せている。
(2)そのkey factor for success は、匠の技に革新的技術を加えること。
(3)欧州大陸からみて極西に位置する西イングランド、スコットランド、アイルランドの産地のこの試みは、ファッションの本場である欧州や大消費地化したアジア大陸から切り離された極東、日本のテキスタイル産地の活性化のヒントになる。
(4)再生のベースにあるのは、創業以来のアーカイブと技術伝承である。

最近の不織布市場と技術製品開発の動向

テキスタイルジャーナリスト 米長 粲

【要点(Point)】
(1)不織布産業は繊維産業の中では世界的に最も成長性の高い分野で、引き続き年率7%の成長が見込まれ、2012 年には800 万トンの生産が見込まれる。これは世界の繊維生産量の約15%を占める重要分野である。
(2)主力生産地域は西欧、米国、日本であったが、近年中国を中心とするアジア地域の伸びが顕著である。
(3)不織布の用途展開は衛材、芯地分野から自動車内装資材、フィルターやワイピングなど工業資材、建築・土木資材、農業資材まで幅広く、従来のプラスチックや木材、コンクリートに置き換わる軽量で加工のしやすい素材として普及している。
(4)製造技術では生産性のよいスパンボンドや繊細構造布のマイクロ、ナノファイバー、多層構造布や導電性不織布などが注目される。

PDF : 詳細(PDF:1,426KB)

中小繊維企業による海外市場開拓の必要性と国の取り組みについて

経済産業省 製造産業局 繊維課 課長補佐 梅北 栄一

【要点(Point)】
(1)人口減少社会に突入した我が国の市場拡大は見込みづらい中、中国等アジアの新興国の経済発展に伴い、同エリアの富裕層市場が拡大。
(2)今後は中小企業であっても事業の継続と雇用の維持の観点から海外ビジネスを真剣に考えていかなければならなくなる。
(3)ただし、これまで国内市場のみで事業展開していた中小繊維ものづくり企業は、代金回収ノウハウや現地ネットワーク作りといった海外ビジネス機能が欠けており、経験豊富な事業者等とチームを組むなどの対策が必要。
(4)国としても、海外市場開拓を中小企業政策の柱として取り組んでいるところであり、「tokyoeye 事業」等を通じて、やる気のある中小繊維企業が海外ビジネス対応力を強化するサポートをしてまいりたい。

信州大学繊維学部創立100周年(前編) -繊維学部の現状と進路-

信州大学 繊維学部長 濱田 州博

【要点(Point)】
(1)信州大学では、日本でオンリーワンとなった繊維学部の特色を活かすため、伝統的な繊維科学技術を先端科学技術と融合したファイバー工学として学際的に展開している。
(2)多様な国際連携や産学連携を通してファイバー工学に関する教育・研究を充実し、国際ファイバー工学教育研究拠点として認知されている。
(3)ファイバーの持つポテンシャル、ファイバーだからこそできるものをしっかりと考え、ファイバーの未来を考えていかなければならない。
(4)ファイバー工学を経糸に、様々な異分野を緯糸にして進んでいけば、他の学部にないユニークな教育研究が行える繊維学部となる。

■縫製/アパレル

バングラデシュ・カンボジア縫製業の現状と課題(後編)

日本貿易振興機構アジア経済研究所 貧困削減・社会開発研究グループ 明日山 陽子 日本貿易振興機構アジア経済研究所  アフリカ研究グループ 福西 隆弘 日本貿易振興機構アジア経済研究所  貧困削減・社会開発研究グループ長 山形 辰史

【要点(Point)】
(1)バングラデシュは小規模の工場が多く低賃金が強みであり、カンボジアの工場は規模が大きく生産性が比較的高い。
(2)両国とも(特にカンボジアでは顕著に)、MFA終了後、生産性の顕著な向上が見られ、成長の維持に寄与した。
(3)賃金の上昇圧力が強く、先進国市場の需要の伸び悩みが続けば、生産性の向上がますます重要となる。

国際市場に対応できるブランディングを再考する 

客員研究員 有限会社シナジープランニング 代表取締役 坂口 昌章

【要点(Point)】
(1)日本市場と欧米等の海外市場では、ファッションの意識、社会構造が大きく異なり、ブランドに対する意識も異なる。欧米市場が、ブランドアイデンティティ、個人のアイデンティティを重視するのに対して、日本市場では、そのシーズンの流行、トレンドを重視している。日本のアパレルは、特殊な日本マーケットの状況に過剰に適応したことで海外市場への対応が難しくなっている。
(2)日本国内市場から海外市場に進出するには、ブランド再編が欠かせない。ライセンスブランドの販売エリアの制約、日本の百貨店売場にのみ対応した展開スケールの見直し、海外市場でのブランドプロモーション、WEB マーケティング等の視点からブランド再構築が不可欠である。
(3)これまでの日本国内で行われてきた新ブランド開発手法は、多くは百貨店、デベロッパー等への説明及び営業を目的としたものだった。新ブランドの売場が確保された段階で、既存ブランドと同様、売れ筋追求型の商品展開となり、ブランドコンセプトが曖昧になる事例が多い。今後のブランディングは顧客の感情や心理を継続的にコントロールすることを目指さなければならない。
(4)現在の日本アパレルのビジネスモデルは、売れ筋追求で次々と商品を生み出していく仕組みが基本となっている。統一したブランドイメージを維持し、トータルに顧客心理に訴求するのであれば、クリエイティブディレクターのような統括的な役割と、デザイナー交代によるブランド活性化等の仕組みが必要になる。

PDF : 詳細(PDF:783KB)

シリーズ 日本ファッションアパレルの課題と今後の展開 第13 回 日本の大手アパレルがクチュール事業に参入して苦戦してきた背景 

信州大学 名誉教授 繊維学部 特任教授 大谷 毅

【要点(Point)】
(1)量産モノ造り事業を世界レベルで立派に経営する大手企業が、クチュールメゾン事業(多種・小ロット・短リードタイム・グローバル・「姿」製造小売ビジネス)に意外に苦戦する。
(2)大手量産モノ造り事業にはインハウスデザイナーが機能しているが、それに比べると、クチュリエ(メゾンの首席設計者)の仕事ぶりは専制的(下位者に裁量を委譲しない)で、一身専属、異動によって他者に継承させにくい特徴があるが、ほとんど理解されていない。
(3)クチュリエが設計するのは衣服ではなく、クチュリエが提案した衣服を着用した「姿」である。
(4)クチュリエは、提案する「姿」に対してunmet-needsをもつ潜在顧客を標的市場とし、それを抽出する市場細分化の軸をもつ。また強い創造性からポジショニングを要しないが、適用範囲は狭い。
(5)クチュリエは、能力獲得過程で他流試合や先任熟達者に揉まれ徹した熟達をめざし、遂にそれが生み出す余裕を得て「姿」を提案する。シーズンごとの設計には支援のための知識が必要になる。
(6)量産モノ造り事業会社のクチュールメゾン事業(以下クチュール事業)担当の管理者は、メゾン買収後のリストラ問題が描けず、実際には有効な類推ができていない。これは経験の差に起因するので、長期に多額の累損を増やすくらいなら、たとえば他人の経験を買収し、徹底調査し、メンタルモデルを形成して、演繹的に推論していけば解決可能であったかもしれない。
(7)以上の2~6の各点から、本問題解決には量産モノ造りの本業と異なる視点が必要になる。

変わってきたファッション情報発信地 

デザイナー  小川 健一

 私は物作りの人間です。30余年前ヨーロッパを旅行した際、当時の日本ではファッション雑誌でしかお目に掛かれなかったデザイナーの服や、それを生活の中で着て暮らしている人たちを見てヨーロッパで生活してみたいと憧れを持ちパリ、ミラノに住むようになりました。  しかし、そのファッション雑誌が今売れなくなってきているし、ファッションの情報を発信するのはファッション雑誌だけではなくなってきていることを、このところ日々の生活の中で肌で感じています。  今回は、欧州のファッションメディアが仕掛けるプロモーション活動とその業界背景についてお話しします。

■小売/消費市場

ニューヨーク主要繊維テキスタイル展示会から観る2011年の展望

英字ファッション情報誌「NY Street Fashion: Multicultural Fashion & Lifestyle Magazine」 シニアエディター マヤ・カワムラ

 

【要点(Point)】
(1)ニューヨーク市内では2011年1月に約20件の繊維アパレル関係の展示会が開かれる。その中から主な6件をレポート。
(2)世界中で年間22件の展示会を企画する生地の展示展プルミエールヴィジョン(Premiere Vision)のニューヨーク展が開催された。
(3)同時期にディレクション(Direction)展やプリントソース・ニューヨーク(Printsource New York)展も行われた。
(4)デニムサプライヤー専門ザ・キングピンズ・ショー・ニューヨーク(The Kingpins Show New York)展の出展企業に見られる綿花価格の上昇の深刻な影響。
(5)2010年に急上昇した綿花価格が2011年に国際繊維業界に新たな動きと競争を巻き起こす事になりそうだ。

シリーズ 高コスト先進国における企業生き残りのKey Factor 第14回 垂直統合型衣料品専門店チェーン小売商をめぐる認識と実在Ⅱ-事例編 H&M-

青山学院大学 経営学部 マーケティング学科 准教授 香港城市大学 商學院 客員准教授 東 伸一

【要点(Point)】
(1)H&M社はファスト・ファッションの代表的企業として知られるが、棚卸資産回転については決して高速ではない。このことはH&M社が他の手段を用いて商品を売り切るための工夫を行ってきたことを示唆している。
(2)H&M社では環境への配慮と物流コスト削減の意味から、多くの場合、船便や鉄道を用いた輸送を行っている。そのため、総リードタイムが3カ月程度となる。これへの対応は、情報システムと物流ネットワークの強化によって行われている。
(3)H&M社は、世界的な衣料品専門店チェーン小売商としての地位を確立しているが、その商品調達の様式は、ユニクロやザラのそれとは大きく異なっている。
(4)H&M社による出店は鈍化しているが、その一方でH&Mは新たな小売事業ブランドの開発・買収や、そこから生まれる商品の卸売事業といったチェーン・ストアとしての新たな方向性を探っているといってよいだろう。

急成長する中古品リユース市場

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)中古品小売業の市場規模は3,452億円。小売業全体の年間販売額の0.2%にしか満たない。
(2)衣料品分野の中古品リユースでは、従来からの「古着屋」ではなく、全国規模でチェーン展開する「中古品リユース店」が急成長している。
(3)「 中古品リユース店」は、郊外に200m2以上の店舗を構え、売上高は10億円以上、直営店は20店舗以上と、「リユース」を企業化し、業態として確立している。
(4)新しい中古品リユース店として注目したいのはパス・ザ・バトン。中古品に新たな魅力と付加価値を加えている。

■新市場/新製品/新技術動向

ファッションとE コマース -不況下の数少ない成長市場をさぐる-

フリージャーナリスト 土井 弘美

【要点(Point)】
(1)インターネットの高い普及率に支えられて、ネット販売は成長し続けている。
(2)ファッション分野では、「ZOZOTOWN」のような巨大ECモールが続々と誕生、大手IT企業もファッション強化に乗り出した。
(3)実店舗でも、ブログやインターネットを使った販促活動が効果を上げている。
(4)中国でのEコマース市場の伸びは大きく、IT企業同士の提携、相互乗り入れが進んでいる。

PDF : 詳細(PDF:1,175KB)

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

アパレル生産危機

客員研究員 有限会社シナジープランニング 代表取締役 坂口 昌章

<中国生産と価格革命>  日本のアパレル生産は中国に支えられている。1979年、中国改革開放政策の一環として、深?など四都市で経済特区がスタートした。92年の鄧小平「南巡講話」が契機となり、90年代半ばから大手商社は先を競うように中国国内に合弁工場を建設した。当時は、生産した商品は輸出が義務づけられており、中国国内で販売することはできなかった。そのため、日本市場への中国製衣料品の輸入が急増 した。

■統計・資料

主要商品市況

1. 原油 2. ナフサ 3.PTA 4.EG 5. カプロラクタム 6. アクリロニトリル 7. ナイロンフィラメント、同織物  8. ポリエステルフィラメント、同織物 9. ポリエステルステープル 10. アクリルステープル、同紡績糸  11. 綿花 12. ポリエステル綿混(T/C)紡績糸及び織物