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2011年5月26日
ニッチトップ企業の試練

 東日本大震災により日本メーカーのサプライチェーン(供給網)が寸断され、生産停止 の連鎖が世界に広がった。 日本の部品・素材産業なくして世界のものづくりが成り立た ないことが再認識された形である。  一方で今回の事態をきっかけに、海外メーカーがサプライチェーン途絶のリスクを縮小 すべく、日本製の部材に過度に依存した調達構造の見直しに着手する可能性が高まった。 米国で同時テロ以降、取引先企業に事業継続計画(BCP)の開示を求める動きが広まった ように、今回も企業のリスクマネジメントが変わることが予想される。  こうした顧客行動の変化は、日本に数多く存在するグローバルニッチトップ企業にとっ て試練といえる。ニッチ分野で日本でしかできないオンリーワンのものづくりを行い、高 い世界シェアを有していることが、今後は必ずしもセールスポイントにならず、むしろ供 給網の途絶リスクの高さを連想させ、取引拡大の阻害要因となる可能性があるからである。  この逆風下で日本のものづくりが生き残るための鍵となるのは復元力(レジリエンシー) だろう。地震や事故で被災した後に、迅速に元の事業レベルに戻る力を強化することであ る。供給拠点を複数つくる(立地の分散)、設計・生産のプロセスを有事の際に別の場所に 移植できる仕組みをつくる、広範囲に他企業と連携し、いざという時に原材料や輸送手段 等を相互に融通する体制を築くといった方策が考えられる。  世界有数の地震国日本では、サプライチェーン途絶の発生確率を下げることは容易でな い。だが、迅速な事業復旧を実現する能力の増強を主体的に進めることで、顧客の信頼を 獲得することは可能である。個別企業の枠を超えて復元力のある供給体制の構築に取り込 み、安全・安心の日本ブランドを確立すべきだ。 (本稿は、2011 年 5 月 25 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)