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2011年10月1日
EUの盟主は午後4時に帰宅
チーフアナリスト
永井 知美

 今夏、南ドイツを旅行した。二度の敗戦を乗り越えた経済大国だが、意外なことに観光も強い。2010年のドイツの外国人訪問者数は2,687万人で世界第8位と、フランス(7,680万人。第1位)、スペイン(5,268万人。第4位)には及ばないものの、日本(861万人。第30位)をはるかに上回っている。大陸に位置し陸路で入国しやすいこと、周辺に富裕な国が多いというプラス面もあるが、訪れてみてリピーターの多さが推察できた。実際、今回参加したツアーには「このコースで旅行するのは5 回目」という親子がいたほどである。  なぜ観光客が多いのか。街並みの美しさ、治安の良さがまず挙げられるが、日本と決定的に違うのが、観光地が点ではなく、線あるいは面でつながっていることである。  例えばロマンチック街道。約350kmのこの街道にはローテンブルグ、ノイシュバンシュタイン城など有名観光地が点在している。中でも人気の高いローテンブルグは、第二次世界大戦で町の約4割が焼き払われたにもかかわらず、その後再建され、厳しい建築条例で中世そのままの街並みを保っている。城壁に囲まれた街全体が中世の趣を漂わせており、一歩外に出ると雑然とした一般家屋が広がっている日本の有名寺社とは対照的である。  ドイツにはこの他に「古城街道」「ゲーテ街道」など150以上の街道が存在するが、どの街道も1本の道があるわけではなく、観光名所を地図の上でつなげて観光客を誘導している。観光立国を目指す日本が見習うべき点は多い。  観光大国から一転、自動車大国の面目躍如なのがアウトバーンである。片道3車線、郊外原則速度制限無しのこの高速道路は、車線で棲み分けができているのが面白い。一番右の車線は制限速度があるバス・トラック、一番左はポルシェ、ベンツ、BMW、アウディといったドイツ高級車、真ん中はその他大勢の指定席である。 ドイツらしいのが左の車線で、男前のお兄さんがBMWのオープンカーで推定時速200~250kmで疾走という、日本ではありえない光景を目にする。ドイツ高級車が、世界中で憧れの対象である理由が分かる瞬間である。ちなみに、運転マナーが良いせいか、爆走車が多い割には事故を一度も見かけなかった。  帰国後も謎が解けないのは、短い労働時間と物価の安さである。ドイツの帰宅ラッシュ時は午後4時~6時だそうで、この時間帯になると駅前は家路を急ぐ人でごった返している。今回の欧州経済不安で、ドイツ国内ではユーロ圏支援策への批判が噴出、「南欧の連中は働かない」との声が高まったらしいが、ドイツの年平均労働時間(1,390時間。2009年)はイタリア(1,773時間)より短い。ローテンブルグでも、観光客があふれているのに、午後6時を過ぎると飲食店以外はほとんど閉店となった。仕事は集中、余暇も大事ということだろうか。  物価が安いのも不思議だった。この国の外食事情はやや異質で、飲み屋に行くとビールとジュースと水が大差ない値段(大体2~3ユーロ前後)だが、体感では外食費はパリの半分、北欧の3分の1である。安いのは外食だけでなく、もう目に付くもの何でも値ごろ。理由をご存知の方はぜひご教示ください。