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2012年4月1日
経営センサー4月号 2012 No.141

■経済・産業

「大失業時代」は到来するのか 雇用空洞化と日本の労働市場

産業経済調査部 シニアエコノミスト 福田 佳之

【要点(Point)】
(1)日本は「六重苦」と呼ばれる企業立地上のデメリットを抱え、雇用面でも空洞化が発生する恐れがある。経済産業省はこの10年間で最悪476万人の雇用が失われ、2010年代の失業率が平均6.1%まで上昇するとした。
(2)2000年代の高失業率は、高齢化や介護需要など労働需要の構造的変化に労働供給が対応していないことに起因する。
(3)日本企業の海外進出はこれまでのところ雇用の空洞化を引き起こしていないが、将来的にはその恐れは十分にある。現に、海外脱出を行う日本企業は後を絶たず、この15年間の雇用機会の喪失は200万人を突破した。
(4)将来の雇用空洞化を避けるには、新たな輸出型産業を構築する必要がある。また、既存の輸出型産業も「やせ我慢」経営からの脱却と付加価値重視の経営にシフトすることが重要である。

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■業界展望

震災乗り越え観光立国目指す日本 ―旅行熱高まるアジアの観光客を取り込めるか―

産業経済調査部 シニアアナリスト 永井 知美

【要点(Point)】
(1)従来、日本では観光は「遊び」のイメージが強く、主要産業として認識されることはなかったが、旅行消費による生産波及効果と雇用誘発効果は意外に大きい。
(2)生産年齢(15~64歳)の急減により、他の多くの分野で内需縮小が予想される一方で、観光産業は訪日旅行者、中でも中国人旅行者というアジアの成長力の取り込みで伸びが期待される数少ない成長分野でもある。
(3)2003年の小泉政権下の「観光立国宣言」以降、日本は観光振興に力を入れ、一定の成果を挙げてきた。そこに冷や水を浴びせたのが東日本大震災と福島第一原子力発電所事故である。
(4)震災被害に加え、目に見えない放射能への恐怖もあり、訪日外客数は大きく落ち込んだ。だが、時間の経過とともに震災に関する正確な情報発信がなされるようになったこと、中国人個人観光ビザ発給要件緩和等により、訪日外客数に回復の兆しが見られる。
(5)所得と自由時間の増加、交通機関の発達と低料金化等により、世界的に海外旅行の動きが活発化しているが、日本にとって最も有望なのは中国人旅行者だろう。一段の訪日を促すには、「安心・安全」のメッセージを伝え続けるとともに、中国語表記を増やすなど、観光しやすい環境を整える必要がある。

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■視点・論点

生活導線マーケティングとは

東洋学園大学大学院 現代経営研究科 教授 井原 久光

生活導線マーケティング(Life Driven-line Marketing)とは、生活導線という道筋をヒントに生活者の実態に迫って生活の文脈の中で消費をとらえようという試みで、現時点では、「消費者を生活の導線(一連の時間的流れ)の中でとらえ、今まで見えなかったニーズや消費行動のトリガー(導火線)を発見して、商品やサービスの市場創造を考えていこうという、ソリューション志向のマーケティング・コンセプト」と定義している。

■環境・エネルギー

「リオ+20」のグリーン経済は何を目指すのか

京都大学大学院地球環境学堂 教授 松下 和夫

【要点(Point)】
(1)本年6月の「リオ+20」の中心テーマは、① 持続可能な開発と貧困削減の文脈でのグリーン経済、② 国際的な制度的枠組み。
(2)グリーン経済とは、「環境へのリスクと生態学的希少性を大幅に減少させながら人々の厚生と社会的公正を改善する経済」。
(3)投資重点分野は、エネルギー効率向上、再生可能エネルギー、資源効率性向上、廃棄物の削減、水(飲料水、排水処理)など。

■アジア・新興国

中国 研究者シリーズ(第6回) 相互信頼の上で新しい日中経済連携を創る

東北アジア開発研究院 研究員 陳 応和

【要点(Point)】
(1)2012年は、日中国交正常化40周年を迎え、日中関係発展の節目の年である。相互信頼関係に基づき両国間関係を発展させることは、日中両国だけではなく、アジア・太平洋地域および世界全体の安定と繁栄にとって、大事なことだ。
(2)日中両国の経済は、密接な相互補完の関係にあり、相互依存の関係を高める素地が形成されつつある。両国の相互依存関係はますます深化しており、地域や世界経済への影響も増大している。そうした両国の経済面での協力メカニズムを一層健全なものとし、よりマクロな視野で深化させることは、客観的にも要求されている情勢である。

 

アジア新興国シリーズ(第5回) インドの経済成長はどこまで続くのか

独立行政法人 日本貿易振興機構 アジア経済研究所 研究支援部長 内川 秀二

【要点(Point)】
(1)2011年度1にインドのGDP成長率は金融引き締め政策の影響により6.9%へと減速したが、今後は回復する。今後5年間ぐらいインド経済は、7~9%前後の成長率を維持できる。
(2)インドの経済成長は基本的にサービス産業を中心とする国内需要の拡大によるものである。
(3)耐久消費財は国内需要の拡大とともに価格が下がり、中古品であれば農村部や都市の低所得層にまですでに普及している。

■ワーク・ライフ・バランス

イクメン(覆面)座談会 ―仕事も家族もともに充実させるための方策―

ダイバーシティ&ワーク・ライフ・バランス推進部長 宮原 淳二

【要点(Point)】
(1)子どもの誕生によって、夫婦共通の関心事は子どもになるケースが多い。また独身時代や子どもが居なかった時とは仕事面・生活面も一変し、時間的制約も出てくる。
(2)女性の育児休業が進む一方で、男性の育児休暇取得が進まない理由の一つに、旧態依然とした職場風土が挙げられる。時間的な拘束が日本の社会にはびこっている。
(3)業務の効率化等により、男性が育児・家事を分担することで、女性の就業率は向上し、かつ少子高齢化の進展に歯止めがかかる。世の中にイクメンが増加することがその一助となるであろう。

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■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

「6次産業化」「ファブライト」

■お薦め名著

『仮説の検証』 ―科学ジャーナリストは科学技術とどう向き合うべきか―

小出 五郎 著

■ズーム・アイ

広まれ!オヤジの味「パパごはん」

ダイバーシティ&ワーク・ライフ・バランス推進部 塚越 学

最近、オフクロの味ならぬ、オヤジの味が広がりつつあるのをご存知でしょうか。育児に積極的なイクメンの広がりから、東京ガスとタイアップし「パパごはんプロジェクト」が発足し、日々Facebookにパパごはんの画像が次々とアップされているのです。

■今月のピックアップちゃーと

日本製造業の競争力はついに劣位? ~ 「国際競争力指数」は2011年にマイナスに転落 ~