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2019年2月22日
農業デジタル化 まだ序の口
チーフエコノミスト
増田 貴司

 最近、日本におけるスマート農業や物流テックの取り組みが加速してきた。情報通信技術(ICT)の活用があらゆる業界に広がる「全産業デジタル化」という世界的な現象の一断面だ。それだけに見逃しがちだが、最近の農業・物流分野でのデジタル変革の取り組み・実用化のスピードの速さには目を見張るものがある。  スマート農業ではその関連サービスを含めて、関わる企業が急増している。大手農機メーカーは自動運転トラクターなどのロボット農機の販売、IoTを活用した営農支援サービスを始めた。農薬散布用ドローンも急速に普及している。スマート農業に関連するデータの共有を目指す「農業データ連携基盤」も今年4月から本格稼働する。  物流分野では棚の間を動き回って商品棚を自動搬送するロボットや、画像認識技術を活用したピッキングロボットを省力化と無人化に向け導入する事例が増えている。自動運転トラックの開発も進んでいる。昨年には高速道路でトラックの隊列走行の実証実験が、政府の主導で行われた。 スマート農業と物流テックが広まる背景には共通点がある。いずれも深刻な人手不足の危機を乗り越えようという、動機の強さがデジタル変革を後押ししている。つらい作業から人間を解放する技術革新、きつい仕事というイメージの払拭につながる取り組みが渇望されている領域だからこそ、イノベーションが加速している。  だが、人手不足対策として省人化・省力化目的のスマート農業・物流テックが普及するのはデジタル変革の第一幕に過ぎない。デジタルの真の威力は、これまで不可能だったコトやサービスを可能にすることだ。第二幕として、従来型の農業や物流にはなかった新たなビジネスや市場が創出される展開が見られることを期待したい。 (本稿は、2019年2月21日 日本経済新聞夕刊「十字路」 に掲載されました)