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2019年9月26日
激変する時代を生きるリーダーに必要なもの
シニアコンサルタント
手計 仁志

 リーダー層向け研修や組織開発支援をしていて最近特に感じるのが、迷いや悩みを抱えるリーダーが急増していることです。「日々仕事に追われ、何のために忙殺されているかをふり返る余裕すらない」という声も聞いた上であえて申し上げますが、生きる目的が分からないままでは、これからも何かに振り回される時間を過ごし続けることになります。  どんなに激動で不透明な時代になろうが変わらない価値、それは人としての徳です。徳を積むということは、目に見えない宇宙自然の理ことわり(=道)の存在を認め、それに従う心を持つことです。これが道徳です。現代社会では「SDGs」「サステナビリティ」「シェアリングエコノミー」など目新しいキャッチコピーが流行っていますが、ほんの150 年ほど前まで、数千年にわたり誰もが実践していた当たり前のことです。地球も人間も疲弊しつつある激動の時代だからこそ、これからは徳のないビジネスモデルは淘汰されるでしょう。  中国の古代経典『大学』では、社会を治めるリーダーになるために何をどういう順序で意識すべきか、次のように説かれています。「格物、致知、誠意、正心、修身、齊家、治國、平天下(念が発生する、自分の念を知る、誠意を持つ、心が正しくなる、身を修める、家族を齊える、国を治める、社会を平和にする)」。どんな偉大なリーダーや経営者も、すべては自分の中にある小さな念を意識することから始まります。良くも悪くもどんなときに気持ちが動くのか心の奥底に向き合う、その中で邪 な考えをそぎ落とすように努力する、そして何事にも動じない正しい念にしていきます。正しい念によって自分を修めることができる人は最終的に社会を平和にできる、逆にいえば自分の念と社会平和はすべてつながっているという考えです。一足飛びにはいきません。近道もありません。リーダーとなるべき人は、この8 つの過程を順序立てて1 つ1 つ磨いていくことが大切です。  「仁」という漢字があります。文字通り「人が二人」と書きます。これは自分と他者を一体と見なして分け隔てなく愛情を注ぐという意味です。私は以前、考えの合わない人には何とか説得しようとし、また誰かに説得されることにはストレスを感じていました。しかしそれは一体化ではなく同化、同化は持続しないことに気づきました。自分と他者は違うからこそ遠心力と求心力のように一体化する、違うことを対話の大前提にするように意識してからは、むしろ他者の価値観を認められるようになり、同時に自尊心も保たれるようになりました。私の名前には「仁」という漢字が入っています。自分の念を正しくして徳を積むこと、それを次の世代や社会につなげること、これらを全うすることが利己と利他の一体化につながるのだと信じています。  最後に宣伝で恐縮ですが、徳を積む具体的な方法についてご興味のある方は、拙著『リーダーとして論語のように生きるには』(クロスメディア・パブリッシング)をご参照いただければ幸いです。