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2015年11月9日
自動運転技術の進展と国内経済・産業への影響(下)
自動運転の取り組みに見る今後の自動車産業の方向性
シニアエコノミスト
福田 佳之

・自動運転の開発は、現在、内外の自動車メーカーだけでなく、メガサプライヤーや異業種のIT企業も積極的に取り組んでいる。自動車メーカーが取り組む背景として、事故減少や人手不足の解消の他に、運転に消極的な高齢者などの潜在的な市場獲得がある。 ・内閣府の工程表では、2020年代後半には運転者がいない完全自動運転が実現すると見ており、調査会社やコンサルティング企業の予測も2035年には自動運転車が世界の自動車市場の1~3割程度を占めるとしている。 ・物流分野での自動運転の応用が考えられており、高速道路の自動運転車の専用ラインが設けられれば、10年以内に自動運転トラックとITを使った中継輸送が可能となるだろう。また無人化は物流業界に事業再編など構造的なインパクトをもたらす。 ・ただし、自動運転には技術的・社会的課題が山積である。技術的課題として、高精度の3次元地図、協調型自動運転、センサーの低価格化、人工知能(AI)のさらなる進化、人間と機械のかかわり方(HMI)、サイバー攻撃への対策などがある。社会的課題として、内外の法制度の変更、事故時の責任の所在、トロッコ問題への対応などがある。 ・異業種は、クルマとインターネットをつなぐことで新たな価値を付加することを考えている。また電気自動車を蓄電池として利用することも想定される。一方、自動車メーカーは、自らインターネットとの接続に取り組み、クルマ作りの主導権を維持するため、今後数年程度については彼らが自動運転技術の開発の主体となるだろう。 ・2020年以降の自動運転事業の展開は不透明だ。どんな企業でも自動運転事業に乗り出すチャンスがある。特に使い勝手のいい 車体が提供された場合は、異業種主導で自動運転技術を用いた新しいクルマが普及して自動車産業に地殻変動が生ずる可能性もある。 ・材料メーカーは、自動運転の進展でもたらされるクルマの車内空間の変化に対応した材料を提供すべきである。また、異業種まで視野に入れた全方位外交で臨み、さらにビッグデータにアクセスできる企業と提携する必要がある。

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PDF : TBR産業経済の論点 No.15-10(864K)