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2009年3月1日
その飛行機は飛びますか?
研究員(繊維調査担当)
安楽 貴代美

少し前の話ですが、出張でフランスに行く機会がありました。ちょうど観光シーズンと重なり混み合っている時期で、希望した日系航空会社の航空券は手に入らず、フランスの航空会社を利用することになりました。 午前中に3便あるうちの真ん中の便に搭乗予定で、当日は早めに入国審査等を済ませ、飛行機を目前にして搭乗口付近で陣取っていましたが、最初の便が飛び立ち、さあ次だ、という頃になっても、なぜか搭乗開始時刻は延び延びに遅れ、なかなか案内されません。ついに、当初予定の1時間を過ぎ、3本目の便も乗客が搭乗を終えた頃、「機体不良のため、本日この便はキャンセルになりました」という信じられないアナウンスが聞こえました。 状況を理解するのに、どの位の時間が必要だったかよく覚えていませんが、とにかく今飛行機に乗れないと、移動時間の関係から到着は翌日となり、すべての予定に支障が出ます。 カウンターには、驚いた200人からの搭乗予定者が殺到しており、担当者は同じ謝罪を繰り返すばかりです。 一方で、隣のカウンターを見れば、既に乗客を乗せた同じ航空会社の次の便が、出発を待つばかりの様子です。 他にいい方法も思いつかず、急いでその便のカウンターに駆け寄り、「たった今、向こうのカウンターで、キャンセルされた。混んでいる時期とはいえ、こちらの飛行機にも多少は空席があるはずだから、乗せてほしい」と訴えました。しかし「空席は、確かに無いとは言い切れませんが、200人のお客様がいらっしゃるのに、貴方お1人を乗せるわけには参りません」と、言葉の意味は分かるものの到底理解できない答が返ってきました。 絶望的な気分でいると、キャンセルされた客向けに、「皆様にお飲み物を用意させていただきました。これから順次、皆様をホテルにご案内し、今後の対応をご説明させていただきます」といった声が聞こえます。今、飲みものなんかに釣られていては、出発は間違いなく明日になってしまう! そう思い再度、3番目の便のカウンターで食い下がりました。「絶対に今日中に出発しないと困る。この便じゃなくてもいいから、とにかくどうにかして欲しい」 あまりにも、切羽詰まった表情だったのかもしれません。やがて担当者は「それでは、しばらくここでお待ち下さい」と言って席を外した後、「直行便ではありませんが、座席を確保いたしました」と、系列航空会社の別の便を用意してくれました。その時はどんなにほっとしたか分かりません。そして、他の都市を経由し予定時間を6時間程度超過したものの、予定した日にパリにたどり着くことができました。 不測の事態に対応するには、とにかく事情の分かる人にしつこく訴えるしかないということを、身をもって学んだ出来事でした。振替の便は意外にも空席が多く、航空会社が本気で対応していたら、かなりの数の人がその日のうちにフランスに着けたのではないかと思われました。 ただし、あの日、残りの人たちが、そのまま空港近くのホテルで1 泊したかどうかは知る由もありませんが、その人たちの方があるいは、一度仕切り直して落ち着いた良い旅をされたかもしれません。 今となっては、この出来事をなかなかに面白い経験だったと懐かしく思い出せますが、その瞬間は完全なパニックの状態でした。急いでどうにかしないと、まだ乗れる可能性のある飛行機がすべて空港から逃げていく、そう考えたときは焦りで目がチカチカするようでした。 それ以来、どうしても航空券の手配や実際の搭乗の際、誰にともなく問いかけてしまいます。「この飛行機は本当に飛ぶんだろうか?」 もっとも、ここだけの話、対処法は簡単です。同じ航空会社の手の空いている人間を捕まえて、どうにかて振替便を用意するよう迫るのみです。ええ、勿論、最初から定時に飛んでくれればそんな手間も要りませんが。