close

2011年11月1日
経営センサー11月号 2011 No.137

■経済・産業

米国経済は、なぜもたついているのか ―不良債権先送り政策の混迷―

株式会社日鉄技術情報センター 市場調査部 チーフエコノミスト 北井 義久

【要点(Point)】
(1)米国経済は、2010年春以降、一次産品価格の高騰、東日本大震災の影響、景気対策効果の一巡により一時的低迷を余儀なくされた。
(2)さらに、ギリシャ債務問題のフランスなどへの波及、米国における住宅ローン不良債権問題の再燃が先行きの不透明感を高めた。
(3)ただし、追加経済対策が策定され、企業収益が高水準を保ち、過剰債務の削減も進んできたことから一挙に不況に突入することはない。

 

大震災の影響、そして未来に点を打つ ―二十一世紀の予言―

株式会社日本政策投資銀行 産業調査部 チーフエコノミスト 鍋山 徹

【要点(Point)】
(1)震災による事業活動への今後の影響は、製造業では「電力不足」が最大。製造業の海外シフトには、“不可逆性” がある。
(2)成熟社会では、成長市場は多様化し細分化していく。三つの色でくくればグリーン(環境)、シルバー(高齢化)、プラチナ(高効率、高精度、高密度)。
(3)今後四半世紀は、技術もスピード化。IT 製品の普及、そして新エネルギー、バイオ技術、再生医療、植物・水産工場など“柔らかい技術” へ。

■業界展望

重電・インフラ需要拡大の追い風受ける総合電機メーカー ―日立製作所の昇降機事業、三菱電機のファクトリーオートメーション事業の事例に見る   総合電機メーカーの「つなぐ力」―

産業経済調査部 シニアアナリスト 永井 知美

【要点(Point)】
(1)大手電機メーカーの2012年3月期連結業績は、東日本大震災で生産拠点の被災等、大きな打撃を受けたにもかかわらず、8社合計でみると回復基調をたどる見通しである。家電メーカーが、主要製品の価格下落で苦戦が予想されるのに対して、総合電機メーカーは得意とする重電・インフラ分野の需要拡大で業績堅調が見込まれる。
(2)発電、鉄道、工場、通信網などのインフラ市場は、過去30年間伸び悩んでいたが、先進国の更新需要、新興国の新規需要により、再び需要が拡大している。重電・インフラ分野の競合は主に欧米企業であり、新興国企業の参入は少ない。日本メーカーは技術力、ノウハウの蓄積で新興国企業に比べ一日の長がある。日本の電機メーカーは新興国企業に荒らされていない同分野に活路を見出すべきだろう。
(3)本稿は、重電・インフラ分野の中でも、企業間取引が多く、日本の総合電機メーカーが強みを持つ領域の事例として日立製作所の昇降機事業、三菱電機のファクトリーオートメーション事業を取り上げた。

PDF : 詳細(PDF:1,938KB)

■産業技術

ポスト原発を担う節電パワーと自然エネルギー

東京大学 総長室アドバイザー 村沢 義久

【要点(Point)】
(1)2011年夏の2カ月間、東電管内では平均して昨年比で16.2%(670万kW)の節電を行った。これは原発7基分に相当する。節電パワーは重要な「エネルギー資源」である。
(2)2012年夏には原発が全て止まる可能性も出てきた。電力危機の深刻化を懸念する声もあるが、東電はかつて原発なしで夏を乗り切った実績がある。
(3)しかし、節電にも限界があり、根本的な解決策は自然エネルギーの推進加速である。参考になるのはドイツの太陽光発電。

■視点・論点

国内・海外市場のインフラ事業の本質と責任について ―改正PFI 法と新JBIC の機能強化策との関連において―

ストラクチャードファイナンスコンサルタント 永田 国幸

【要点(Point)】
(1)改正PFI法による「公共施設等運営権(コンセッション方式)」制度の導入は、これまでの周辺的なインフラ事業から主要なインフラ事業展開への本番である。
(2)インフラ事業に参入を検討する際には「常時バッターボックスに立ち、案件を吟味し、ボールを見送る勇気も必要」。
(3)金融手法は内外市場ともプロジェクト・ファイナンスを活用するも、インフラ事業の本質は長期間にわたるマネジメントのリスクにある。

■マネジメント

日本経済失速の逆風の中、改革の大ナタを振るい業績をV字回復へと導く

一村産業株式会社 代表取締役社長 石井 銀二郎 氏

【要点(Point)】
(1)一村産業は、「45の企業改革」を実施しつつ、見事に業績をV字回復させた。
(2)その原動力は、3S(Slim, Smart&Survive)プロジェクトの推進と「45の企業改革」である。
(3)今後力を入れていくのが、環境配慮型分解ポリエステル繊維「ecoface」と「炭素繊維」などのテクテキスタイル(高機能・高性能)分野。ことに炭素繊維は、自動車業界への販路拡大を目指している。

■アジア・新興国

中国 研究者シリーズ(第3回) 日本企業の経営行動基準の特徴とその啓示

天津社会科学院 日本研究所所長 研究員 程 永明

【要点(Point)】
(1)行動基準は経営理念の補充、拡張として経営理念と具体的な経営計画、経営活動との間で架け橋としての役割を発揮するのである。
(2)日本企業の経営基準は五つの特徴を持っている。
(3)日本企業の経営理念、行動基準の設定及び具体的な実施のためのメカニズムといった方面の経験は中国にとって、重要な価値を有する。

 

中国証券市場における上場について

望月コンサルティング(上海)有限公司 パートナー 公認会計士 望月 一央 あかし法律事務所 弁護士 曉 琢也

【要点(Point)】
(1)経済発展の目覚ましい中国の証券市場は、国際的にもその重要性を増してきている。
(2)中国証券市場は、その歴史的背景から、国有系企業の比率が高く、かつ個人投資家の割合が高いという特異な市場として発展してきた。
(3)中国国内の証券市場は、深セン、上海の証券取引所のほかに店頭登録市場(新三板)があり、さらに外国企業による中国国内投資家向け市場(国際板)の導入が予定されている。
(4)外商投資企業の上場は、法制上可能となっており、上場のステップとして株式会社化のほか、バックドア上場も選択肢の一つである。

■ワーク・ライフ・バランス

自治体に見るワーク・ライフ・バランスへの本気度 ―鳥取県・石川県の事例紹介―

ダイバーシティ& ワーク・ライフ・バランス推進部長 宮原 淳二

【要点(Point)】
(1)1990 年代から自治体の財源不足が指摘され、改善が望まれている。日本の長期債務残高は先進国でも最悪レベル。ギリシャ不安も対岸の火事では済まされない。
(2)鳥取県の「スマート県庁5(GO)5(GO)プロジェクト」は、業務改善を推進している自治体への手本となる取り組みであり、財政再建を目指す自治体への処方箋となるであろう。
(3)石川県のユニークな子育て支援策(ワーク・ライフ・バランスコンサルタント企業派遣制度やワーク・ライフ・バランス普及啓発商品)は中小企業へのWLB 浸透のきっかけとなる。
(4)自治体のワーク・ライフ・バランスに対する本気度が日本社会を変える。

PDF : 詳細(PDF:1,653KB)

■人材

人材育成の視点 「キャリア教育」の進展と現状 ―採用担当者としての視点から―

人材開発部長 小西 明子

【要点(Point)】
(1)「キャリア教育」の概念が大学に広がり始めたのは2000 年前後からと見る。
(2)企業サイドでも採用したい人材を明確化し、大学に要望する動きが出てきた。
(3)大学でも入学から卒業までを見通して自らのキャリアデザインを課す、本格的な「キャリア教育」を提供する大学が出てきた。
(4)こうした取り組みは成果が出るまで辛抱強く取り組む必要がある。
(5)企業としてもしっかりとしたキャリア観を持った人材を確保し、また教育界でそうした人材を育てようとする試みにアンテナを立てて積極的に協力することが使命。

PDF : 詳細(PDF:1,457KB)

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

「共通番号制度」「所在地別営業利益」

■お薦め名著

『新ネットワーク思考』 ―自然界の生態系にシステムの「頑健性」を学ぶ―

アルバート=ラズロ・バラバシ 著 青木 薫 訳

■ズーム・アイ

言葉を大切にしよう――PART 2

常務理事 深津 孝男

以前、他の雑誌に「言葉を大切にしよう」と題して、短文を寄稿したことがある(PART1)。 国会中継で「“ケンケンガクガク”の議論」うんぬんというフレーズに出会い注意喚起したつもり。もともとは、侃侃諤諤(カンカンガクガク)、広辞苑によると「遠慮することなく論議すること」。喧喧諤諤は、喧喧囂囂(ケンケンゴウゴウ)と侃侃諤諤が混交してできた語で、「多くの人が色々な意見を出し、収拾がつかないほどやかましいさま」と辞書にあるが、喧喧囂囂の意「たくさんの人が口々にやかましく騒ぎたてるさま」に近いものなってしまう。(実際はそうなのかも…)

■今月のピックアップちゃーと

電気自動車がブレイクするのは中国とインド? ~ 日本の消費者の購入意欲は主要国で最低 ~