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2021年4月5日
【TBRカナリアレポート】No,21-02
日本企業とTCFDへのコミットメント
気候変動対応に関する積極的な情報開示で日本は世界を牽引できるか
研究員
川野 茉莉子

 TCFDとは、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略で、企業や機関投資家に対して気候変動が及ぼす影響の開示を求める国際的な枠組みです。気候変動は金融市場に危機的な影響を及ぼし得るとの認識が広がったことから、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)1により2015年に設立されました。機関投資家に対しては投融資・保険の対象企業の業務が気候変動から受ける影響への考慮を求め、企業に対しては「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標」の4項目について、自社への財務的影響のある気候関連情報の開示を求めています(図表1)。  TCFDに賛同する日本企業は2017年以降年々増加しており、2020年末時点で332社・機関に達しています(図表2)。また、賛同機関数は2020年末時点で日本が最も多く(20%)、イギリス、アメリカを含む3ヵ国で全体の約50%を占めています。  ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が世界的潮流となる中、欧米の機関投資家はE(環境)の「気候変動」をポートフォリオの重要なリスク要因に位置づけています。投資判断に活用する上で、機関投資家はTCFDを重要視しており、開示が不十分な企業に対しては議決権を行使して改善を求める動き(エンゲージメント)や、気候変動対策への取り組みが不十分な企業からの投資を引き上げる動き(ダイベストメント)が国内外で広がっており、日本企業も危機感を高めています。また、機関投資家だけではく、各国政府は自国の企業に対してTCFD提言の情報開示を推奨しており、英国やニュージーランドなど一部の国では開示義務化に向けた議論が進められています。  日本企業のTCFDへの賛同数の増加は国際的には一定の評価を得ているものの、その開示情報は不十分とも見られています。TCFDへの国際的な注目が高まる中、企業は投資家からの求めに応じて仕方なく対応するという受け身の姿勢ではなく、気候変動をビジネスチャンスと捉え、自社の強みを積極的に開示し、自社の企業価値向上や有利な資金調達に繋げていくことが求められています。

1  各国の金融関連省庁及び中央銀行からなり、国際金融に関する監督業務を行う機関
「TBRカナリアレポート」では、東レ経営研究所の研究員が時事的なトピック等について解説します。
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PDF : TBRカナリアレポート No.21-02(212KB)