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2010年8月1日
繊維トレンド7・8月号 2010 No.83

■海外動向

下期の市況を読む -世界景気は持ち直し続く、中国など新興国がけん引-

向川 利和 特別研究員 繊維産業アナリス

【要点(Point)】
(1)世界経済の回復は、予想された以上に進んでいる。しかし、日米欧と新興国など地域間で回復のスピードは大きく異なり、多くの国で失業率は依然として高く、雇用回復に遅れが目立つ。新たなる主役たち -BRICsやVISTAの高成長は続き、成熟化に直面する日米欧との勢いの差が金融危機を経て鮮明になった。
(2)最強アメリカ経済は予想外の復活だが「雇用なき回復」の懸念がある。EUは回復遅れが鮮明。ギリシャショックで緊急事態。外需頼みの日本の景気回復は緩慢で、デフレが続き、出口は遠い。
(3)合繊原料価格、合繊ファイバー価格は、在庫調整を終えてほぼ1年半ぶりの高値圏にある。中でもN-FY、A-SFは値上がりが急で、今後の商内に懸念が出てきた

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中国ビジネス発想の転換(前編) -日本企業が中国進出に失敗する理由-

坂口 昌章 客員研究員 有限会社シナジープランニング 代表取締役

【要点(Point)】
(1)日本市場の拡大が見込めないことから、成長著しい中国市場を改めて重点テーマとして狙う日系企業が増えているが、中国市場は日本市場以上に国際競争が厳しい。日本市場で売れている商品、ブランドであっても中国市場で通用するとは限らない。まして、日本市場で売れていないブランドを中国市場で販売することは難しい。
(2)中国の消費者にブランド認知度を高め、信頼を獲得するには中国語の情報発信が欠かせない。中国語のWEB、中国のポータルサイトへの広告等は必須条件である。
(3)日本人は日本製品の技術、品質の高さを訴求する。長持ちすること、手入れがしやすいこと等が主な訴求ポイントである。しかし中国人富裕層は「豪華なデザイン」を優先して求める。シンプルなデザインの商品にお金を掛けようとは思わない。
(4)中国人富裕層は欧州のラグジュアリーブランドを好む。彼らにとって、ブランドとは一目で高級品であることが分かり、社会的ステイタスを外部に主張できるものを目指す。日本のアパレル製品はファッションとは認識されているが、ブランドとは認識されていない。
(5)日本企業は、中国現地法人の社長に日本人を据えることが多いが、日常的な判断、現地政府との交渉、現地社員とのコミュニケーション、現地取引先、中国人消費者とのコミュニケーションができない日本人では日常的なマネジメントさえ困難である。
(6)日本の独資企業は、中国政府、中国の業界や同業者、中国人消費者にとって、支援、応援する根拠が希薄である。孤立無援で経営をしなければならない。自社の製品を現地企業にコピーされても、政府機関がそれを取り締まる積極的理由はない。
(7)中国での日本のアパレル企業は直営店戦略が主流だが、中国アパレル企業は代理商戦略が主流である。また、成熟した日本市場ではリピーター獲得が重要だが、成長期の中国市場では、新規顧客獲得が重要であり、スケールとスピードのある経営が求められる。
(8)中国における代理商ビジネスでは、地域ごとに独占販売権を与えることが基本である。そのため、販売権の譲渡という発想が重要になる。現地法人を設立しなくても、中国企業に自社製品の販売権を譲渡するという発想があれば、市場参入が可能になる。
(9)中国は中国共産党の一党独裁国家であり、政府とビジネスは密接な関係を持っている。また、大学も企業と合弁事業を行うなど、ビジネスに積極的に関与している。日本の常識に捕らわれずに、中国政府機関や大学等とのコミュニケーションを図り、中国への貢献を打ち出した営業活動が重要である。

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若手デザイナーの登竜門:ニューヨーク・ファッションウィーク

英字ファッション情報誌「NY Street Fashion: Multicultural Fashion & Lifestyle Magazine」シニアエディター マヤ・カワムラ

環境保全時代に向けたエコカー動向と繊維・樹脂素材の対応

テキスタイルジャーナリスト 米長 粲

【要点(Point)】
(1)世界の自動車需要と生産は世界的経済不況により大きく落ち込んだが、2009年後半より新興国市場がけん引となって急速に回復の傾向である。
(2)この中で、世界的に地球環境と資源の維持の概念の高まりから、エコカーの開発が急速に進んでいる。先行しているハイブリッド自動車から、プラグインハイブリッド自動車、更に化石燃料を全く使わない電気自動車へと世界的に開発が進んでいる。
(3)エコカーの主な動力源はリチウム電池である。将来はリチウム電池や太陽電池などのエネルギー源を中心に産業と社会の仕組みが変化することが予想される。
(4)エコカーの基本設計は車体の軽量化であり、これを支える部品素材として機能性樹脂や炭素繊維複合体が注目されている。
(5)地球環境維持の点から自動車内装資材には植物資源由来のバイオマス素材の開発が進んでいる。

■国内動向

シリーズ 日本ファッションアパレルの課題と今後の展開 第9回 パリメゾンPの設計製造過程と東京進出 -百貨店Aとのライセンス契約でパリと同じモノができるのか-

杉野服飾大学 服飾学部教授 矢野 海児 信州大学 名誉教授 繊維学部 特任教授 大谷 毅

【要点(Point)】
(1)メゾンPから見本、仕様書、指定生地など資料と素材一式を入手し、ライセンシーにその設計製造過程とその内容を十分に理解できる人材(リエゾン機能2)がいれば、日本の縫製工場でも、メゾンPパリ店で販売している商品にかなり近いものができる。
(2)オートクチュールよりも“プレタポルテ”<ヌーベルクチュール>のほうが、最大の品質基準であるドレープ・シルエットにバラツキが生じやすく、ライセンサーからのクレームが発生しがちであった。
(3)リエゾン機能を果たすには、ライセンサーのコンセプトや服飾造形のノウハウを十分に理解し、クチュリエPやstudio部門のアシスタントデザイナー、atelier部門のシェフと十分に気心を通じている必要がある。
(4)この業界で通用するフランス語の取得のほか、業界で要する知識をすべて経験取得するのは効率が悪く、教育(offJT)がそのボトルネックの解消に役立つ。
(5)いまやメゾン直営売場が百貨店に並ぶ。百貨店Aにとってライセンス契約は必ずしも得策ではなく、インポートに代替した。しかし、百貨店Aがパリメゾンを買収するスキームもありえたのではなかろうか。

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北陸座談会 -織物業界の景気の現状と下期の見通し-

社団法人福井県繊維卸商協会 専務理事 河野 喜澄 氏 ケイテー株式会社 代表取締役社長 荒井 由泰 氏 株式会社カツクラ 代表取締役社長 勝倉 雅己 氏 松文産業株式会社 代表取締役社長 小泉 信太郎 氏 熊澤商事株式会社 代表取締役社長 熊澤 喜八郎 氏 司会:東レ経営研究所 特別研究員 小山 英之

 2008年7月から戦後第13回目の不況に入り、産地の景気は低迷していたが、2009年の下半期を大底として、2010年に入り若干の回復傾向が見える。3月には福井産地の大手中堅工場の電力消費量は、ニット等の工場もあって、対前年比23%増加し(2009年は前年同期比4割減)その後も産地織物・ニット等の生産量はおよそ不況前の8割の水準で推移している。しかし、中小零細の工場については、依然として低迷状態が継続しており、中堅大手と中小零細の格差が大きくなったとも言える。足元の産地の景気は、トリコットを中心にニットの回復が先行している。一方、織物ではスポーツ中心に高機能分野で回復感が出てきたものの、婦人衣料関係は相変わらず停滞しており、業種間、品種間にも格差が出ている。  2010年7月で不況に入って3年目となるが、3月には石川の大手産元商社である岸商事の経営行き詰まりが表面化するなど、産地では各企業の体力が限界に近づいているという指摘もある。産地の状況を概観すると、全体の景気は回復傾向にあるものの、経営面では胸突き八丁の坂道にあると思われる。   そこで今回は、回復がやや遅れている織物業界を中心に、(1)産地の現状、(2)構造問題、(3)下半期の景況予測という3つの観点から、福井産地を代表する方々に解説いただいた。

ルームウエア人気の背景と市場の広がり

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)08年以降は消費不況を背景に、節約志向の低価格路線が目立った。そんな中で、ヤングをターゲットとするルームウエア人気が顕著となる。
(2)ルームウエア人気の背景には、なるべく外出を控えて、できるだけ家で過ごしたい、という巣ごもり消費がある。
(3)現在のファッション性の高いルームウエアをけん引しているのは「ジェラート・ピケ」だが、モコモコ素材とスイーツのようなカラーが人気の要因となっている。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

Ustream(ユーストリーム)

坂口 昌章 客員研究員 有限会社シナジープランニング 代表取締役

■統計・資料

主要国の合繊主要4 品種の需給動向

I.主要短繊維糸・織物の相手国別輸出入統計 II.主要合繊糸・綿・織物の相手国別輸出入統計