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2010年5月1日
子どもに好かれるには
シニアエコノミスト
福田 佳之

  なかなか軟弱なタイトルです。読者の中には(特に男性読者)、子どもなんぞの機嫌をとるなど日本男子も堕落したものだ、とお嘆きの方がいるかもしれませんが、娘を持つ当人はいたってまじめです。   例えば、朝、寝室に娘を起こしにいくと、いつまでもぐずぐずし、父親に抱っこされて居間に連れて行かれることにひどく抵抗します。着替えも食事も父親主導ではさせてくれず、保育園に連れて行くのも、途中まで妻がかかわらないとまったく従いません。現在、父親が単独でできる事柄はあまりなく、妻の援軍あって私の育児がかろうじて成立する状況です。もちろん、娘が生まれたころはこうではなく、着替えや食事、入浴もだいたい筆者一人でできたのですが……。   これも成長の一過程だ、と言われるかもしれません。しかし、筆者の場合、近隣に両親など親族がおらず、家事・育児を妻と二人で分担しなければならないため、筆者が育児を担わないと妻の負担が非常に大きくなります。  確かに、夫は家事に専念して育児は妻に任せるというやり方もあるでしょう。物理的には、そういう労働分担でもよいように見えますが、しかし、これには欠点があります。夫(父親)と子どもとのかかわりが減るだけでなく、妻が育児のストレスをためてしまい、大爆発する恐れがあります。また、家事の一部が妻の気分転換になっているというところもあります。ですから、筆者としては育児も引き受けなければと思うのですが、娘はそんなことはつゆ知らず、筆者に向かって「いらない、いらない!」と手振りをするので、夫としては心苦しく、父親としてはやや切ない気分になったりします。  人は、家事・育児をひとまとめにしますが、実はこの二つは性質がかなり違います。家事は定型でパターン化しやすく、時間が経てば経つほど習熟して上手になっていきます。しかし、育児は、子どもが成長するため、しばらくすると一つのパターンでは通用しなくなるのです。そのたびごとに試行錯誤を繰り返さなければなりません。これまでの経験では、どうやら怒りすぎは駄目なようで、命にかかわることや人間として、してはいけないこと以外は、何かを注意するにしても声のトーンを変えて明るく言ったり、ちょっと突き放して様子を見たり、遊びにつきあって貸し?を作ったりして、硬軟取り混ぜ、うまく「押したり引いたり」することが重要なようです。  なかなか気に入ってくれない子どもに取り入ろうと苦心する筆者ですが、実はこのような姿勢を身につけることはビジネスパーソンとしても重要ではないか、とひそかに思っています。自分のやり方を常に正しいと思うことなく、自ら変わることで対応する姿勢は、混迷する時代に生きていくには不可欠でしょう。さらに、寛容な精神を持ち、ちょっとしたいたずらや過ちでは動じないことは、リーダーに必要な資質と言えるのではないでしょうか。  筆者は、前職の銀行で、女性の管理職が上司であったことが何度かありましたが、印象に残っているのは育児経験のある方でした。彼女は、部下のミスで動じることなく、その成長を見守る姿勢をとってくれたため、筆者を含めて部下は皆、萎縮することなく働いていました。今振り返ると、彼女のその寛容さは、育児経験によるところが大きかったのではないか、と感じています。  筆者もそんな素敵なビジネスパーソンになれることを念じて、娘に嫌がられながらも、かかわりを持ち続ける今日この頃です。