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2014年12月1日
経営センサー12月号 2014 No.168

■今月のピックアップちゃーと

中国勢の世界のプラント案件獲得は史上最高に ~依然として振るわない日本勢の海外プラント成約実績~

■特別講演会抄録

自然に学ぶ準最適経営 ─渋滞学から考える、科学的「ゆとり」の効用─

東京大学 先端科学技術研究センター 教授 西成 活裕 氏

【要点】
(1)
ムダを省く知恵を自然に学ぶ。例えばアリは適切な間隔を取っているため渋滞を起こさない。
(2)
車間距離が短く交通量が多い状況を「メタ安定状態」という。一瞬にして渋滞が起きる状況で、これは仕事にもあてはまる。
(3)
仕事の渋滞をなくすには、70%程度の力で維持できるようにすることが必要。これは、「科学的ゆとり」を持つことで、数学的にも証明できる。
(4)
「損して得をとる」意味を知る。ローカル社会と「利他」の行動で、全体最適を実現する。

■経済・産業

軽量化への取り組み進む欧米自動車メーカー ―日本の材料メーカーは欧米企業や異業種との連携強化を―

産業経済調査部門 シニアエコノミスト 福田 佳之

【要点】
(1)
2014年は自動車材料としてアルミニウムやCFRP(炭素繊維強化樹脂)が本格的に用いられた年として記憶されるだろう。
(2)
アルミニウムやCFRPが自動車に本格投入された背景に、世界的な燃費規制の強化がある。燃費改善の方策の一つとして自動車車体の軽量化への取り組みが行われている。
(3)
これまで自動車材料として使用されていた鉄鋼は徐々に使用比率を下げているものの、鉄鋼におけるハイテン(高張力鋼)の比率は高まっており、軽量化に即した動きとなっている。
(4)
代わってアルミニウムが自動車材料として台頭しており、自動車外板への採用が進展している。その軽さが評価されているものの、原料・加工コストの高さや成形の難しさなどの課題が存在しており、関連メーカーが課題解決に向けて取り組んでいる。
(5)
CFRPは軽さだけでなく、強度や弾性においても鉄鋼より優れており、次世代自動車材料として注目されている。しかし、炭素繊維の製造コストが高く、CFRPの成形に時間がかかるなどの課題があり、熱可塑性CFRPに期待が集まっている。
(6)
材料を単体で使用するのではなく、複数の材料を直接接合して機能の「いいとこ取り」をする異種材料接合が注目されており、日本の自動車メーカーや部品メーカーによって実用化されている。また日本発の異種材料接合技術の国際標準化も進んでおり、日本企業の競争力強化に寄与すると期待される。
(7)
今後、自動車材料は複数の材料が共存するマルチ・マテリアル化が進行すると考えられ、日本の材料メーカーは軽量化に積極的な欧米の自動車メーカー等との連携、および自社が持たない材料を持つ材料メーカーとの連携という二種類の連携を進めていく必要がある。

PDF : 詳細(1436KB)

■アジア・新興国

工業化戦略に挑戦するベトナム

日本貿易振興機構 海外調査部 アジア大洋州課 大久保 文博

【要点】
(1)
2012~2013年の景気は政府の政策転換の影響により停滞したものの、問題となっていたマクロ経済指標は健全化している。政府は2014年の経済成長を5.6~5.8%と見込む。
(2)
2013年の日本の対越直接投資は、件数ベースで過去最高を記録した。2014年に入っても勢いは衰えず、1~9月の実績は前年を上回る。2012年前半以降、主に100万ドル未満の中小企業による投資が中心。
(3)
ベトナムの投資環境のメリットでは「安定した政治・社会情勢」、「市場規模・成長性」、「従業員の雇いやすさ」が挙げられている。東南アジアでもトップクラスの親日国家であることも好評価の対象。
(4)
2020年の工業化に向けて、電気・電子、食品加工、造船、農業機械、環境・省エネ、自動車・同部品が優先発展業種に選定された。2014年7月には電気・電子など4分野で行動計画が示された。
(5)
スマートフォン、プリンターや複合機など電気・電子産業、自動車産業、旺盛な消費市場は有望産業・市場として注目を浴びている。ただし、ASEAN域内の関税撤廃は目前で、ベトナムは市場開放に対抗しうる個別産業の競争力強化が課題。

■視点・論点

労働不足経済に製造業はいかに対応すべきか

早稲田大学ファイナンス総合研究所 顧問 野口 悠紀雄

労働供給が著しく減少する長期的な観点から日本経済が抱えている大きな問題は、労働力人口が著しく減少することだ。製造業の立場からすると、これは、賃金上昇、企業利益の圧迫という問題をもたらす。それを製品価格に転嫁すれば、コストプッシュインフレになる。

■マネジメント

B2B企業のブランド・マネジメント

元青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)教授 松浦 祥子 氏 〈企画・取材〉 経営センサー編集部 石川 裕子

【要点】
(1)
企業がグローバル市場で競争力を高めるには、「モノづくり」だけでなく、「ブランドづくり」を強化することが必要である。
(2)
B2B企業はブランドづくりの先達であるB2C企業に積極的に学ぶ姿勢が重要である。
(3)
素材もインテルの事例のようにブランディングすることで、エンドユーザーから選ばれ、売り上げアップの効果が期待される。

素材メーカーによるブランド戦略

東レ株式会社 顧問 斉藤 典彦 〈企画・取材〉 経営センサー編集部 石川 裕子

【要点】
(1)
企業ブランディングとは「企業評価を確立すること」であり、終わりのない取り組みだからこそ、そのプロセスが重要である。
(2)
BtoB企業であっても最終顧客との連携による行動変革を推進し、それを分かりやすく情報開示することで“変革”をアピールできる。
(3)
「あるべき実態」に向けて改善に取り組み、「改善した実態」に即して戦略的な情報発信を積み重ねることが、企業価値向上の王道である。

eラーニングが世界の「学び」の場を変える ―各社の研修を軸に、業界No.1企業に躍進― ~株式会社ネットラーニング 岸田代表インタビューをもとに~

フリージャーナリスト 土井 弘美 株式会社ネットラーニング 代表取締役 岸田 徹 氏

【要点】
(1)
ネットラーニング社は、eラーニングがあまり普及していなかった1998年にスタート、「学びを変える」ことをスローガンにビジネスを展開してきた。
(2)
各企業にカスタマイズし、研修をeラーニングによって「就業時間中に自分のデスクで」できる形に変え、大きな反響をよび、業界トップ企業となる
(3)
マサチューセッツ工科大学(MIT)の講義の無償配信など、大学関係にもビジネスの駒を進めつつある。
(4)
ワークライフバランスへの取り組みも先進的で、女性の産休後の復帰率は100%となり、多くの逸材を抱えている。

PDF : 詳細(1663KB)

■環境・エネルギー

国連気候サミットが企業活動に示唆するもの

京都大学 名誉教授 地球環境戦略研究機関(IGES)シニア・フェロー 松下 和夫

【要点】
(1)
2014年9月に開催された国連気候サミットでは、アメリカや中国が野心的な温室効果ガス排出削減目標を掲げる意向を示すなど、各国首脳や各界リーダーが、低炭素経済成長への行動と約束を表明する場となった。
(2)
特にカーボン・プライシング(炭素の価格付け)について、多くの政府と企業の指導者が支持し、化石燃料への補助金撤廃を求めた。
(3)
機関投資家を中心として温暖化対策に反する投資の引き揚げの動きが進んでいる。また投資先企業にも、気候変動に関するリスクの最小化とビジネス機会の最大化、関連する情報の公開がますます求められることとなる。

■ワーク・ライフ・バランス

働きがいのある企業の条件とは ―高まるイノベーション創出効果への期待―

ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部長 宮原 淳二

【要点】
(1)
景気は回復基調にあり、企業の雇用意欲は高まってきている。今年9月末の雇用者総数は総務省が統計を取り始めた1953年1月以来最大の5,626万人である。その要因は女性や高齢者の労働市場への参入だ。一方で人手不足感は強く、特に建設業や宿泊・飲食サービス業などで顕著だ。今後慢性的な人手不足時代が到来する可能性は高い。
(2)
企業は、優秀な社員をいかに採用し、企業内で十分な成果を発揮してもらいつつ、長期間働いてもらえるか、真剣に考える時代になってきた。専業主婦や高齢者、障害者などこれまで労働市場に参画してこなかった人材にも参画してもらう必要があり、「時間制約」を抱えるそうした人材を活かす人事制度の見直しが必須だ。
(3)
そもそも、従業員にとって「働きがい」とは何か? その鍵は最近「働きやすさ」を表彰する国や自治体などの認定制度に名前の挙がっている企業にヒントがある。具体的に実践している企業事例を本稿で紹介する。

PDF : 詳細(1560KB)

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

「GPIF」 「種類株」

■お薦め名著

『ビジョナリーカンパニー③ 衰退の五段階』 ―衰退の芽は早期に発見できる―

ジェームズ・C・コリンズ 著 山岡 洋一 訳

■ズーム・アイ

イマドキ女子のよもやま苦労

ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 金子 真弓

巷では最近、“マウンティング女子”なる言葉が流行っているようです。