close

2019年9月25日
繊維トレンド2019年9・10月号 2019 No.138

■ファイバー/テキスタイル

2018年のアジアの合繊産業

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主席部員 鍵山 博哉

2018年および直近のアジア主要国の合繊産業 2018年のアジアの化繊産業は、アジア域内の各国・地域の堅調な経済成長、川下製品の主要市場である欧米の繊維需要が回復に転じたことから、おおむね好調に推移した。 ただし、2019年に入ると、一部の国では、世界的に景気の先行き不透明さ、貿易摩擦の表面化などで、厳しい状況に転じている。

(1)合繊市況 原油価格の動きに合わせ2018年後半に大きく下落
(2)日本 構造改革もあり化繊生産の長期減少が続く
(3)韓国 合繊生産は減少に転じる
(4)台湾 化繊産業の規模縮小が続く
(5)中国 繊維産業の構造改革が進む一方、化繊生産は高い伸びを維持
(6)タイ 化繊産業は、生産、輸出とも堅調に推移
(7)インドネシア 化繊生産、内需とも増加、レーヨンSFで新規投資
(8)マレーシア 化繊産業は規模縮小
(9)インド 化繊生産、輸出とも堅調
(10)パキスタン ポリエステルSF産業は比較的安定

キチンナノファイバーの展開と 鳥取大学発ベンチャー「(株)マリンナノファイバー」

技術ジャーナリスト 塩谷 隆

【要点(Point)】
(1)キチンはエビ、カニをはじめとして、昆虫、貝、キノコに至るまで、極めて多くの生物に含まれている天然の素材であるが、普通の溶媒には溶けないためにほとんど利用されていなかった。
(2)伊福伸介教授を中心とする鳥取大学の研究チームが、鳥取県の特産品である「カニ」の殻からキチンをナノファイバーとして抽出することに成功し、驚くほどの多様な機能を解明してきた。
(3)キチンナノファイバーには、創傷治癒促進効果、皮膚炎の緩和効果、育毛効果、服用に伴う腸管の炎症抑制効果、植物の成長促進効果、ダイエット効果などが認められ、生体適合性が高いので、医療・美容・食品用途などへの展開が有望である。
(4)キチンナノファイバーの機能を活かして実用化を推進するため、2016年に鳥取大学発ベンチャー「(株)マリンナノファイバー」を起業し、キチンナノファイバーを機能性原料として販売するとともに、ナノファイバーを配合した化粧品も自社製品として販売している。

PDF : 詳細(1,686KB)

フィレンツェ(PITTI IMMAGINE FILATI)とミラノ(FILO)の展示会で見た 2020年春夏から2020/21年秋冬まで通年の糸素材のトレンド

株式会社インテグレード 代表取締役社長 欧州繊維専門月刊誌『Twist』在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)フィレンツェでのPITTI IMMAGINE FILATI 2020年春夏向け糸については新たな機能性を備えた糸、履物に採用されたウール、アーバンスポーツからインスピレーションを得た糸がハイライトとして挙げられ、着心地の良さ、皮膚にやさしい柔らかさ、素材の由来と出所、そして低い環境負荷などが強調されており、天然素材が最高だとの評価が行きわたっている。
2020東京オリンピック・パラリンピックに新たに組み入れられた種目などのスポーツを含めて洗練されたクールな都会の若者たちに受けるような、さまざまなアイデアや機能性を備えたレジャーウエアが展示されている。ブルー、グリーン、ピンク、イエロー、ゴールドなどの明るく淡い色に光沢あるアクセントカラーを加えたファンシーヤーンに人気が集まっている。
(2)ミラノのフィロ展示会は、2020/21 年秋冬向け糸素材について世界で最も先行してトレンドを発表する場であり、“Sustainability Projects in Yarns”としてサステナビリティへの取り組みを中心課題としている。次いで9 月開催予定の2021年春夏向けフィロは、出展業者に、サステナビリティへの取り組みの実績を明確にし、その展示商品に環境と社会への責任の認証エビデンスを提示することを求めている。
パステル色を主に、ラグジュアリーのみならず一般品でも透けて光沢のあるテキスタイルが引き続きトレンドで、使用素材はウール、麻、シルク、モヘア、カシミアから、Lurex などのラメ糸、ポリエステル、テンセルなど他の化合繊までのブレンド素材で構成されていて、バラエティに富んだ色彩と風合い、機能、それに糸コストが比較考量されている。展示で目に付くのはウール素材の多用、特に極細のウールをブレンドした織糸の採用だ。ファンシー糸についてはスラブ、ブークレ、巻き毛カール、ネップのストレッチタイプなど、高級天然素材や化合繊を取り混ぜて多様な色彩と表面効果を提案しており、それらを充実したストックサービスで即納する体制を整備している。
(3)英国をはじめ欧州での糸・テキスタイルの展示会では、伝統的な天然繊維素材を核として合繊や特殊機能素材をブレンドした製品の開発が基本だ。なかでもウール素材は、寒暖などさまざまな天候条件の下でもヒツジが耐えられるようにその機能・品質が進化してきた。そのウール素材については、春夏秋冬季節を問わず人間が健康で豊かな日常生活を営むシーンでも、また激しいスポーツや宇宙探査のような極限状況のシーンでも衣料としての機能を発揮できるように研究開発が進んでいる。それについてIWTO(国際羊毛機構)の報告を紹介する。

2020/21年秋冬物の糸の展示会 (PITTI IMMAGINE FILATI)

デザイナー 小川 健一

 去る6月に開催されたPITTI IMMAGINE FILATI は欧州を中心に世界各国から5,350 人のバイヤーを集めた。本稿では、イタリアトップブランドの仕事も手掛けるイタリア在住のデザイナー小川健一氏に、同展示会について、会場内で注目した展示内容を各社のブースの画像を中心として紹介いただく。  なお、展示会全体のテーマは「HERITAGE」(文化遺産、継承)。また、2020/21年秋冬シーズンの新しいトレンドカラーのガイドラインとして「SU MISURA」「PARFUM」「LIBIAMO!」「PRECIOUS」「COUPé」「PATTERN-T」という6つのテーマがあげられている。

ファッションとテクノロジーを考える あつまる山鹿シルク -周年無菌養蚕による新シルク蚕業-

国際ファッション専門職大学 国際ファッション学部 准教授 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)新シルク蚕業構想「SILK on VALLEY YAMAGA」プロジェクトとは、株式会社あつまるホールディングスが熊本県・山鹿市他の協力の下に進める、伝統蚕糸業の継承と革新的シルクの創造を目指す事業。
(2)「やまがシルク」の特徴は周年無菌養蚕による生産。
(3)あつまるホールディングスが養蚕業に参入した理由は、(1)基幹事業の顧客と競合しないため、(2)雇用創出に寄与するため。
(4)NSP山鹿工場では製糸工程がボトルネック。
(5)NSP山鹿工場では今後遺伝子組換え蚕に注力。
(6)SILK on VALLEY YAMAGA では、(1)遊休地・耕作放棄地の解消、(2)地元雇用の創出、(3)6次産業の推進や地場産業の活性化、(4)「やまがシルク」によるジャパンブランド力の向上と交流人口の増加、の4点の目的を達成。

■新市場/新商品/新技術動向

ワンピース流行の背景

ムーンバット株式会社 顧問 山田 桂子

 近年の国内衣料品市場は、勢いを欠く状況が続く。「購買意欲の低下」が指摘されるようになって久しいが、実際には衣料品は売れており、バブル期からは大きく縮小しているものの、いまだ9兆数千億円の市場規模を維持している。勢いを欠いているのは大量生産・大量消費という20世紀型のモデルといえる。ニーズの多様化・細分化がもたらした従来モデルの崩壊は、衣料品販売に新たな成長モデル構築を迫ったが、答えの一つとして注目されるのがマスカスタマイゼーションやパーソナライゼーションだ。新潮流として広がりを見せつつある。

【要点(Point)】
(1)18年春夏からワンピースが売れている。久しぶりの大ブームといってよく、19~20年秋冬もこの勢いは継続する。
(2)昨今売れているワンピースは6 タイプある。その中で注目すべきなのは、ボリュームシルエットと羽織るコーディネートとして着用される前開きワンピースだ。
(3)19年春夏のワンピースを見ても明らかなように、従来のワンピースとは大きくイメージが変化した。カジュアル感覚が強く、羽織ったり、重ねたり一工夫して着用でき、足元はスニーカーが増大。
(4)この背景には、(1)マーケットにおけるカジュアル化、(2)ライフスタイルの変化、(3)女性のファッション観の変化がある。

■キーポイント

技術等情報の管理に係る認証制度

日本化学繊維協会 常務理事 杉原 克

 営業秘密の管理が重要になっているが、経産省によると、過去5年間の技術漏洩事例において「取引先による流出」が最も多い。全体の55.5%と過半を占めている。次いで多いのは「退職者による流出」である。  そうなると、取引先企業における情報の漏洩防止の対策が重要となるが、現時点では、契約書(秘密保持契約)での対応が中心となっている。取引先の情報管理体制や実施状況を確認(監査)するのは、手間もコストもかかり、取引先がどこまで情報漏洩の対策を講じているか、そのレベルを確認するのは実質的に困難である。

■統計・資料

主要合繊・国別・メーカー別設備能力(現状および増設計画) ・ナイロンフィラメント ・ポリエステルフィラメント ・ポリエステルステープル ・アクリルステープル ・レーヨンステープル ・スパンデックス ・スーパー繊維