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2018年12月28日
デジタル変革がなぜ重要か
チーフエコノミスト
増田 貴司

 日本には、デジタルという言葉が嫌いなビジネスパーソンが結構存在する。年配者を中心に、アナログ人間を称し、デジタルを敬遠する人が少なくない。また「デジタル」の入ったカタカナ用語は、IT(情報技術)ベンダーが自社商品のセールスのために、手を替え品を替えつくり出すバズワードで、実態のない空疎な言葉だとみなす人もいる。  そんなわけで、デジタル化を通じた変革、すなわちデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)が課題と言われても、まったく顧みない人もいるだろう。だが、言葉に対するアレルギーを理由に、デジタル変革に目を背けている企業は、第4次産業革命期を生き残れない可能性がある。  今やあらゆる産業分野でデジタル化が進展している。従来なかったデジタルの活用方法が普及すると、産業の境界が破壊され、ゲームチェンジが起こる。その影響は、一見デジタルと縁遠いような企業にまで波及するから、無策でいる企業は衰退を免れない。こうしたメガトレンドを認識すれば、すべての企業にとってデジタル変革の推進が生き残るための重要課題といえる。今求められるデジタル変革は、道具としてのIT活用ではない。ゲームチェンジという激しい環境変化に対応するため、デジタルを活用して、効果的に価値創造ができるように事業や組織を戦略的・構造的に転換することだ。  2018年には、トヨタ自動車が「自動車をつくる会社」から「モビリティ・カンパニー」への変身を表明したほか、パナソニックが「暮らしをアップデートする会社になる」と宣言した。これらは、自社事業の再定義を伴うデジタル変革に本気で取り組む意思表明と言える。19年は、日本企業の生き残りをかけたデジタル変革への取り組みが一段と活発になるに違いない。 (本稿は、2018年12月28日 日本経済新聞夕刊「十字路」 に掲載されました)