close

2010年9月1日
経営センサー9月号 2010 No.125

■特別レポート

『クラウド経済の時代は地方が主役』

東京大学 総長室アドバイザー 村沢 義久

【要点(Point)】
(1)21世紀の情報処理ではクラウド・コンピューティングの役割が大きくなる。
(2)自動車産業も電気自動車普及とともに地方分散生産の比率が高まる。
(3)電力事業でも分散発電とスマートグリッドによる「クラウド化」が起こる。

■経済・産業

中国:第11 次5 カ年計画の成績表と今後の注目点

株式会社 大和総研 投資調査部 シニアエコノミスト 齋藤 尚登

【要点(Point)】
(1)2006年~2010年までの第11次5カ年計画の達成度合い(途中経過)をみると、国内総生産など量的拡大目標は、2009 年の段階で計画を大幅に超過達成した項目が多い。一方、直近で未達成の項目には、(1)単位GDP 当たりエネルギー消費量の削減率、(2)水質汚染物質であるCODの削減率、(3)第三次産業の就業者数構成比、(4)都市化率、(5)R&D投資のGDP比率、といった項目がある。課題は、省エネ・省資源と環境保全、産業構造の高度化である。
(2)現地ヒアリングによると、2011年~2015年までの第12次5カ年計画では、省エネ・省資源を含む環境保護投資は現5カ年計画の1.4兆元から、3兆元(約39 兆円)へと倍増以上となるとされる。今後の中長期的な方向性は、(1)高エネルギー消費・高汚染物質排出産業における質の高い投資実施と劣後設備の淘汰、環境対策の強化、技術導入・技術開発による第二次産業の高度化、(2)第三次産業では、知識集約的サービス業の育成と労働集約的サービス業のスキル向上による雇用増加と所得増加であり、これらが、今後、中国がエネルギー効率の向上と環境改善、さらには産業構造の高度化を伴った安定成長を実現できるか否かの鍵を握ろう。

 

米・中の住宅金融政策の動向と住宅市場の今後 -転換期を迎えた米国市場と、バブルが懸念される中国市場- 

国際公共政策研究センター 主任研究員 大竹 喜久

【要点(Point)】
(1)米国経済の先行き不透明感が強まり、それを裏付けるかのように米国住宅市場にも黄信号を示す兆候が現れてきている。政府の住宅市場支援策の終了により、それを梃子として自律的回復を期待された住宅市場は、景気回復の遅れによる雇用不安によって足踏みを余儀なくされている。
(2)住宅ローン担保証券(RMBS)市場は、FRBの買取策終了後も高水準の発行を続けており、機関投資家等により吸収されているが、発行主体であるファニーメイ等のGSE の財務状況が悪化の一途である。金融規制改革法の一環でGSE改革も準備されているが、住宅金融をささえる不動産証券化市場の本格的機能回復が住宅市場の回復には不可欠。
(3)差押さえ物件や支払い遅延の増加、オプションARMのリセットなど、米国住宅市場は二番底に誘導するリスク要因も多々存在することから、ボトムアウトまでにはまだまだ時間を要する。
(4)不動産ブームによりバブルが懸念される中国不動産市場は、政府の不動産金融規制が功を奏し、価格調整は進むもののソフトランディングとなる可能性が高いと判断される。

 

ナノ物質リスク管理という“ビッグ・チャレンジ” -国内外で活発化するナノ物質リスク対策の現状と課題-

岩谷 俊之 産業技術調査部

【要点(Point)】
(1)ナノ物質リスクは、従来の化学物質リスク以上にその評価が難しく、ナノ物質のハザードやばく露に関する化学的知見・データは圧倒的に不足した状態にあり、ナノ物質リスク管理のための新たな法規制整備は容易ではない。
(2)新しい法規制の整備が困難であるという前提に立ち、米国などでは「既存の法規制にナノ物質を組み込む」という現実路線によるナノ物質リスク管理が進行。
(3)わが国では主に職業的ばく露を念頭に、ガイドライン等の形で予防的対応が進められており、ナノ物質メーカーや、それを使うユーザーの工場従業員が当面のリスク予防の焦点になっているが、職業的ばく露を重視する傾向は米国でも同様である。

PDF : 詳細(PDF:1,062KB)

■視点・論点

「犯罪加害邦人」の援護を考える 

危機管理アドバイザー 柴田 信之

毎年多くの邦人が、旅行や仕事などで海外へ出かけている。外務省の邦人援護統計や法務省の出入国管理統計でみると、所得の低迷や原油価格の高騰に伴う航空運賃の上昇などの影響によって、一時の伸びほどではないが、それでも昨年だけでも約1,545万人が出国している。 

■マネジメント

中国企業再編 -資産買収-

望月コンサルティング(上海)有限公司 パートナー 公認会計士 望月 一央

【要点(Point)】
(1)中国においては合併または個別資産負債の譲渡が企業統合の主な手法であり、現段階では後者が一般的である。
(2)中国においては事業譲渡制度が存在しておらず、資産買収では事業を構成する資産負債、雇用契約を含む契約関係を個別に移転することになる。
(3)資産買収に当たっては、外国投資管理及び税務上の観点から一定の規定が設けられており、一連の複雑な手続が必要となる場合がある。

PDF : 詳細(PDF:1,029KB)

 

現代インド最新事情(2) 「ナノ」の迷走 -インドの工業化と農民-

東京大学 名誉教授 中里 成章

【要点(Point)】
(1)インドでは工場用地や経済特区の用地の取得(=収容)に反対する運動が各地で起こっている。
(2)「1894 年土地取得法」は植民地時代の法律であり、農民の意思を無視して土地を取得することを可能にする悪法である。不透明な土地取得制度は腐敗の温床にもなっている。
(3)農民の意識が変わり、昔のような官尊民卑、上意下達のやり方は通用しなくなっている。
(4)インドの農村の社会構造は複雑であり、土地持ち農民の下にさまざまな形で貧農層が存在する。現行の土地取得制度では貧農層への補償が盲点になっている。

■人材

MOT における技術マーケティングの考え方 “顧客創造” に必要な視点とは?

東京理科大学専門職大学院 総合科学技術経営研究科 宮永 博史 教授 インタビュー インタビュアー: MOT チーフディレクター 宮木 宏尚 記     録:フリーランス・ライター 山崎 阿弥

【要点(Point)】
(1)いかに優れた技術を開発しても、これを生かすも殺すもマーケティング次第。ここにMOT の重要性がある。
(2)競争力をつけるためには、技術、マーケティング、マネジメントの間のコミュニケーションが重要。上手なコミュニケーションのためには、まず聞き上手になること。そして、最終的にはお互いの信頼関係の構築である。
(3)技術のイノベーションでは、先に技術開発を行ったものが成功するとは限らない。周辺技術やマーケットの立ち上がりを待つ忍耐力とブレイクする時期を逃さないマネジメント力が必要。
(4)技術の方向性を決定することがマーケティングの大きな役割であり、本来の目的。これが顧客創造につながる。マーケティング担当は、自社と顧客の両方の分野の技術トレンドを理解し、目標設定を行うことが求められる。
(5)死の谷にはたくさんの種(宝)が眠っていると考えるべきであり、これを活かすことで成功した例は多い。
(6)MOT では、虫の目(自分の特徴)、鳥の目(顧客・競合・補完などの広い視野)とともに時間の目が重要。常に競合技術の進化や想定外の事態に注目し、これを生かす組織能力が成功につながる。
(7)ビジネスに正解は存在しない。広い視野と色々なことへの好奇心で経営センスを磨くことが求められる。

PDF : 詳細(PDF:1,379KB)

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード

「広域FTA」「3D テレビ」

■お薦め名著

『ルポ資源大国アフリカ』暴力が結ぶ貧困と繁栄 −巨大な格差から生じる増悪、そして暴力の拡散−

白戸 圭一 著

■ズーム・アイ

その業務必要ですか?

森本 有紀 市場調査部

■今月のピックアップちゃーと

中国ビジネスは収穫期を迎えたか?

~ 世界同時不況後も、対中投資の収益率は右肩上がり ~

■TBR の広場

東レ経営研究所 主催 特別講演会 「日本社会・企業の進むべき道」