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2016年12月1日
富める者から富めばいい
主幹(広報・宣伝担当)
寒川 雅彦

私の会社は秋葉原と神田の間にありますので、ちょっと町を歩くと観光バスから降りてくる外国人観光客に遭遇します。2016年の訪日外国人は10月30日時点で初の2,000万人を突破しました。昨年2015年の訪日外国人は1,974万人でしたが、その内、中華圏(中国、香港、台湾)からの訪問者が1,020万人と、なんと全体の約50%を占めています。  訪日中国人は10年前の2005年では65.3万人、翌2006年は81.2万人といったレベルで推移していましたが、日本政府のビザ発給要件緩和や円安によって2014年から急増し2014年では241万人、2015年には499万人となり、2016年はすでに1月~9月で500万人を超えています。外国人観光客のインバウンド効果で国内景気が活気づくのはありがたいことです。    以前、私は中国で勤務したことがありますが、そのころの中国は海外に簡単にはいけない時代でした。わずか十数年でのこの変わりようには目を見張る思いです。2016年の全人代、政府活動報告では「大衆旅行時代」の到来が語られ、海外旅行は一部の富裕層だけのものではなくなりました。  海外旅行だけではありません。知人のご子息ですが、彼は高校から日本に留学していて今も日本で大学生だそうです。別の知人のご子息は中国の国際高校(もちろん私立です)に通われていて、そこの学生は卒業後、100%海外に留学するのだそうです。中国が世界第2の経済大国になった2010年、中国人の海外旅行者数は約5,700万人で、2015年には1億2,000万人に増加しました。中国人にとって海外は身近な存在になったのだと思います。    一方、中国は人口ボーナスの喪失による労働力不足、人件費の高騰によって「世界の工場」としての魅力が薄れつつあり、2012年の尖閣諸島問題に端を発した反日運動から日本企業の中国一極集中に対する危機感がピークに達しました。2012年央をピークとして日本の直接投資は急激に減速しており、今年上半期も前年比マイナスの減少傾向が続いています。日本企業の危機感は「チャイナプラスワン」という形で現れ、インドやベトナムへの投資が増えています。中国経済の減速など、マイナス材料が目について悲観論が増大しています。  中国はリーマンショック後の2009年~2010年に実施された、4兆元の景気刺激策の調整が続いており、過剰投資、債務の拡大、過剰生産能力、鉄鋼などの過剰在庫の調整が景気を下押ししています。2013年に国務院は、鉄鋼、セメント、アルミ、ガラス、船舶の5業種を過剰投資業種として指摘しています。鉄鋼などの過剰在庫は海外へのインフラ輸出となり、鉄鋼価格の世界的な下落を引き起こすなど世界市場への影響も少なくありません。  また、中国で国有鉄鋼大手の東北特殊鋼集団が経営破綻するなど、中国政府は経営改善が進まない「ゾンビ企業」を救済しない産業構造改革にも乗り出しました。    訪日中国人の『爆買い』が失速しつつあります。景気低迷が影を落としていることもありますが、円高、中国政府が4月に実施した海外購入商品に関する関税引き上げ、中国当局が国内航空会社に機内に持ち込む手荷物を2個に制限するなどの影響もあったようです。2010年以降中国の実質経済成長率は消費の寄与度が投資の寄与度を上回っており、輸出・投資主導から消費主導に移行しました。景気減速の影響から国内消費は足元では伸び悩んでいますが、1人当たりGDPが1万ドルの都市の人口は3億人で、中間層やその予備軍が急増しています。これからは価格と性能のバランスが取れた高付加価値商品・サービスが3億人の支持を得ていきます。日本に行かずとも本物の日本商品を欲しがる中国人は多くいます。ネット通販などのサービス産業など、新しい分野か伸びていることも好材料です。経済の成長によって北京、上海、広州などの沿海部都市はすでに先進国並みの所得水準になっており、武漢、重慶、成都などの内陸部主要都市が成長を続けています。そこには豊かになった、あるいは豊かになろうとしている人々の強いニーズが存在しています。豊かになれる人から着実に豊かになっている現状と今後も豊かになろうとしている人々による潜在的な市場性をどう評価するか悩ましいところです。