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2012年9月1日
経営センサー9月号 2012 No.145

■経済・産業

どうして日本はドイツに後れをとったのか もう1つの輸出大国ドイツの強さを探る

産業経済調査部 シニアエコノミスト 福田 佳之

【要点(Point)】
(1)ドイツ経済は比較的好調さを維持しているが、その背景に輸出競争力の強さが挙げられる。2011年の貿易収支は中国を抑えて世界一の黒字額を記録している。
(2)ドイツの輸出構造について業種別に見ると化学や輸送機械の輸出が伸びており、地域別にはEU向けが圧倒的である。
(3)ドイツ輸出が伸びた理由としてユーロ導入が挙げられる。ユーロ導入後のドイツのユーロ圏内向け輸出伸び率を同導入前の90年代と比較した場合、域内の景気動向を考慮しても30%程度伸び率を高めていることが明らかとなった。FTA締結などで貿易環境を改善することは、輸出大国ドイツから得られる1番目のインプリケーションである。
(4)ドイツの輸出は中小企業に支えられている要素が日本に比べて大きい。ドイツにはニッチ市場を支配している多数の「隠れたチャンピオン企業」が存在しており、グローバル化を推し進めて売り上げと雇用を大きく伸ばしている。
(5)「隠れたチャンピオン企業」は、①直接取引重視、②顧客重視、③環境適応能力の高さで日本の技術志向の中小企業と大きく異なる。日本の中小企業のグローバル化を進めることが2番目のインプリケーションである。

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■業界展望

鉄鋼業界復活のカギは? ―厳しさを増す収益環境、新興国需要取り込みで活路を拓けるか―

産業経済調査部 シニアアナリスト 永井 知美

【要点(Point)】
(1)世界最高水準の技術力を背景に、構造不況業種から力強い復活を遂げた日本の大手鉄鋼メーカーの収益環境が再び厳しさを増している。
(2)業績悪化の背景には、世界的な景気先行き不透明感による鉄鋼需要の伸び悩み、スプレッド(鋼材価格―主原料価格)悪化、中韓メーカー増産による競争激化、円高がある。
(3)新興国需要の増大により、世界の鉄鋼需要は中長期的には年率5~6%の安定成長を続けると見られる。新興国台頭により日本をはじめとする先進国のプレゼンスは相対的に低下している。
(4)新興国需要の増加により鋼材に求められる質も変化している。日本の大手鉄鋼メーカーは世界最高水準の技術力を誇り、自動車鋼板等高級鋼に強みを持っているが、汎用品を中心とする新興国需要への対応も迫られている。
(5)日本の大手鉄鋼メーカーは、高級路線を堅持する一方で、新興国需要の取り込みも図っている。海外メーカーとのアライアンスを強化する新日本製鐵、ベトナムでの高炉建設の事業性検証を開始したJFEスチールの取り組みが注目される。

PDF : 詳細(PDF:2,454KB)

■視点・論点

英国・カナダ・米国の年金基金のインフラ投資に対する基本姿勢とリスクの捉え方について

ストラクチャードファイナンスコンサルタント 永田 国幸

【要点(Point)】
(1)「直接投資」を早い時期に経営判断、約5年間で経営上の責任とリスクを習熟、体制構築の上、3カ国の大手年金基金である英国USS基金、カナダCPPIB基金、米国CalPERS基金とも投資は順調。
(2)セクターの「規制」内容の確認が投資の大前提、経営を共にする「主たる出資者」の信用度・経験を重視。この2つが基金側のリスクヘッジ。
(3)融資銀行側は「規制」内容の確認するも、それ以上に重要視するのが「主たる出資者」の投資の経営判断と信用度。

■マネジメント

日本コカ・コーラ株式会社 ミネラルウォーター「い・ろ・は・す」の製品開発事例 「エコは売れない」ジンクスを“しぼれるボトル”で打ち破る

フリージャーナリスト 土井 弘美

【要点(Point)】
(1)「い・ろ・は・す」はミネラルウォーター部門では後発組。開発チームは、エコを前面に出した商品を作ろうとしたが、「エコだけで本当に売れるのか」という不安があった。
(2)これを打ち破ったのが、国内最軽量12gのボトルを“しぼる”というアイデアだった。ここから「シンプルなエコアクションで世界を変える」というコンセプトが生まれる。
(3)「い・ろ・は・す」は年を追うごとに成長、ブランドイメージを定着させた。
(4)海外でも高く評価、「デュポンアワード フォア パッケージング イノベーション」で銀賞を受賞。

■環境・エネルギー

グリーン経済実現へ ―リオ+20の結果を受けて―

京都大学大学院 地球環境学堂 教授 松下 和夫

【要点(Point)】
(1)去る6月20日からリオデジャネイロで開催された「リオ+20」会議の結果は、今後の世界の環境と開発の方向に長期的影響を与える。
(2)なかでもグリーン経済が国連レベルで認知され、持続可能な開発目標の検討開始が合意されたことは会議の成果である。
(3)特にグリーン経済については今後各国で多様な取り組みの展開が予想され、環境未来都市市場などをめぐり、協調と競争が予想される。

■アジア・新興国

間接税が直接税の2倍以上! 中国の税収の現状と展望 ―歳入の観点から見た税制―

望月コンサルティング(上海)有限公司 パートナー 公認会計士 望月 一央

【要点(Point)】
(1)中国税収は2011年度8兆9,700億元(約112.5兆円)であり、間接税である増値税、営業税、消費税で全体の65.1%を占め、国際的に直間比率が低い。
(2)中国税収は近年、年20%前後の水準で継続的に増加しており、2011年度GDP(47兆元)に占める租税負担率19.15%であり、日本、米国とほぼ同水準である。
(3)2012年上半期においては、経済成長の鈍化と合わせて税収増加率にも鈍化傾向が見られ、今後は、直接税の管理強化により税収確保がなされる可能性が考えられる。

■人材

人材育成の視点 体験的リーダーシップ論(第3回)

特別研究員 武澤 泰

【要点(Point)】
(1)どのような場合にも適用できる普遍的なリーダーシップの在り方とはまた別の、状況によって異なるリーダーシップが必要だとする考え方がある。
(2)ハーバード大学大学院講師のディーン・ウィリアムズは、集団の置かれた状況を6つに分類し、各状況に応じたリーダーシップの在り方を提示している。
(3)上記6つの状況の中から、「集団の苦境を克服する名案をリーダーが持ち合わせず、集団メンバーの創造的討議に解決を委ねる」というケースを体験とともに紹介したい。

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■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

「所得収支」 「ナノ材料」

■お薦め名著

『幸せを科学する』 ―心理学が明かす幸福へのヒント―

大石 繁宏 著

■ズーム・アイ

日本人ってリスクが取れない民族なの?

産業経済調査部長 チーフ・エコノミスト 増田 貴司

「日本人は水と安全がただと思っているので、リスク認識やリスク管理が苦手だ」 昔はよくこう言われましたが、最近は様子が変わってきました。

■今月のピックアップちゃーと

ゆるキャラは滋賀県がリード? ~中部・関西圏は投入に前向き~