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2018年12月20日
経営センサー12月号 2018 No.208

■今月のピックアップちゃーと

年々増加するシェールオイルの開発コスト ~中期的には原油価格の上昇要因に~

産業経済調査チーム

■産業経済

注目されるクルマのMaaS(モビリティサービス) ―自動車メーカーは新たなビジネスモデルを模索―

産業経済調査部 シニアエコノミスト 福田 佳之

Point
(1)「クルマ」を売るのではなく「移動サービス」を提供するMaaS(モビリティサービス:Mobility as a Service)が脚光を浴びている。モビリティサービスには、カーシェアリングやライドシェアリングなどがある。
(2)カーシェアリングに対して、P2Pやサブスクリプションサービスのようなバリエーションを含めて欧州の自動車メーカーが積極的に進出している。ライドシェアリングについては当初IT企業主導で進んでいたが、近年、自動車メーカーも参入している。自動車メーカーがモビリティサービスの事業化に向けて取り組んでいる背景に、自動車産業の成長領域がモノからサービスにシフトすることが挙げられる。
(3)今後のモビリティサービスの展開として多様なモビリティを統合した交通などのプラットフォームを形成する動きがある。モビリティが統合されたプラットフォームが提供されれば都市や地域の魅力が向上するだろう。
(4)モビリティサービスの普及は二段階に分けられる。まずモビリティサービスのプラットフォームが形成されてユーザーのビッグデータを集める仕組みが作られる。次にこれらのビッグデータ解析の結果をうまく活用しながら、プラットフォーム上で多様なモビリティサービス事業が展開していくような生態系が構築されていく。
(5)自動車メーカーはモビリティサービスの生態系の中で収益を確保できる事業領域を探す必要がある。重要なのはデータ収集にしても、生態系構築にしても、ビジネスモデル探索にしても1社単独ではなく、企業間連携が必要なことである。
(6)ユーザーとの直接の接点がない自動車メーカーのプラットフォームはユーザーの消費スタンスの構造変化に弱い。しかし、自動運転技術を持つ自動車メーカーは交通等のプラットフォームの弱点であるラストワンマイルの交通手段を提供することで一転してこれらのプラットフォームまで支配する可能性もある。

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■技術・業界展望

中国・深圳レポート ―世界の工場からイノベーション都市への転換を目指す深圳―

チーフアナリスト(産業調査担当) 永井 知美

Point
(1)広東省深圳市は、中国で最初の経済特区のひとつで、長らく「世界の工場・中国」の象徴的存在だった。人件費高騰に伴い下請け量産基地としての魅力は低下しているが、時代の変化に応じてハイテク化、イノベーション都市化を進めた結果、新サービス、新製品が街にあふれる「実験都市」の様相を呈している。
(2)深圳出身の世界的企業も誕生している。代表例としては通信機器メーカーであり、世界第2位のスマートフォン・ベンダーの華為技術(ファーウェイ)、民間用ドローンで世界シェア約7割を占める大疆創業(DJI)、中国最大のSNS「WeChat」 1 を展開するテンセントがある。本稿では、通信機器メーカー、ファーウェイに注目し、成功の背景を探る。
(3)人口3万人の漁村から、経済特区に指定されわずか40年弱で中国4大都市の一角に収まった深圳。なぜ深圳は人件費高騰を克服して高成長を遂げ、次々にイノベーションを生み出しているのか、「5G、AI」等、先端分野に軸足を移している深圳の課題は何か、深圳の動向から日本企業が読み取れるものは何かを考えたい。

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■視点・論点

本気で取り組む女性活躍推進とは

株式会社HRインスティテュート 常務取締役 チーフコンサルタント 染谷 文香

1.企業が注目する「女性活躍推進」の動き マッキンゼー・グローバル・インスティテュートが行った調査によれば、労働環境における男女平等を促進するだけで、アジア太平洋諸国のGDP(国内総生産)は2025年までに全体で年間4.5兆ドル(約500兆円)も拡大するといわれている。これは日本のGDP(2017年 約550兆円)に匹敵する額である。つまりそれだけの生産性が眠っていることになる。

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■マネジメント

サステナブル経営と資本市場 ―取締役会の新たな役割とは何か―

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科 教授 北川 哲雄

Point
(1)わが国のコーポレートガバナンス改革は近年、株主主権に舵をきってきた。経営者主権の乱用が極端に見られたりする、あるいは資本市場に極めてナイーブ(鈍感)な企業には強い刺激を与えてきたが長期的企業価値向上との関連性を論じるのは時期尚早であろう。こういった状況下で欧州のコーポレートガバナンス改革は企業主体の理念(企業体理論)に基づいた制度設計が模索され始めているように思われる。
(2)企業体理論とは元々は会計学において使用されてきた概念であるが、今日の欧州企業の動向を観察すると、経営者の八方美人的なステークホルダー論と狭量な投資家によるむき出しの株主主権論という噛み合わない関係を結びつけるための有用な考え方のように思える。
(3)投資家側に関して欧州においてはアセット・オーナーの強い意向も受けたESG投資が隆盛化している。長期投資家、ESG投資家、さらにESGを重要視したパッシブ投資家の台頭は正に広汎なステークホルダーを意識したコーポレートガバナンス体制の確立が企業側に急務となる。すなわち資本市場は企業のサステナブル経営を推し進めることを主眼としなければならない時代がやってきた。
(4)そして企業主体を貫く鍵となるのは取締役会である。すなわち企業体理論の実践者は取締役会である。推進者は社外取締役である。取締役会議長とCEOの分離がほぼ100%果たされている欧州の場合、とりわけ取締役議長の役割は重要となる。取締役会の主要な機能はサステナブル経営を推し進めるための優れた企業文化の醸成とそれを実践する経営者の育成・指名である。

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日本企業が陥るパラダイムの不条理 ―取引コスト、ダイナミック・ケイパビリティ、そして価値判断―

慶應義塾大学 商学部・大学院商学研究科 教授 菊澤 研宗

Point
(1)日本人は真面目である。成功後も絶えず努力を積み重ねると、現状に非効率や不正があっても変革コストが大きくなるため、変革しない方が合理的という不条理に至る。
(2)この変革の不条理を回避する方法の一つとして、既存の資産・資源・知識を再構成し、再配置する能力、つまり「ダイナミック・ケイパビリティ」を用いてベネフィットを生み出す必要がある。しかし、これだけでは不十分である。
(3)改革の不条理を回避し、変革を起こすには、最後はリーダーがあえて「正しいかどうか」主観的な価値判断を行って組織をリードし、その責任を取る覚悟が必要となる。

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■ヒューマン・ディベロップメント

仕事と介護の両立のためには ―「介護はプロに任せる」という視点と職場からのサポートが重要―

NPO法人 となりのかいご 代表理事 社会福祉士、介護支援専門員、介護福祉士 川内 潤 氏 聞き手 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 コンサルタント 永池 明日香 ライター フリージャーナリスト 土井 弘美

Point
(1)「うちの親は大丈夫」と思わずに、しっかりと予兆をとらえる。
(2)離職を防ぐために、地域包括センターに相談し、ケアマネジャーを慎重に選ぶ。
(3)会社の上司や同僚には、要介護認定1の申請を出した段階で相談しておく。会社側は、戻ってくることを前提にサポートする。
(4)介護はプロに任せるという視点を持ち、介護のための離職・異動をしない、させないようにする。

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対談 家事にまつわる『呪い』から日本のパパ・ママを解放するために

翻訳家、ナチュラル・ライフ研究家 佐光 紀子 氏 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 上席シニアコンサルタント 塚越 学 企画・司会・執筆 人材開発部長 兼 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 チーフコンサルタント 小西 明子

司会 佐光さんは東レを退職された後、証券会社で海外調査のお仕事を経てフリーで翻訳を始め、その後自然素材を使った掃除の本の翻訳をきっかけに、自然素材を使った家事に目覚め、この分野の著作活動やお掃除講座などの啓発活動を精力的に続けてこられました。素人目には「お掃除講座」というと、「丁寧な暮らし」や「手作り」「ミニマリズム」などの見出しが並ぶ雑誌で紹介されているイメージがあります。しかし、昨年11月に上梓された『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』(光文社)では、日本人が家事をきちんとこなすことや配慮の行き届いた子育てを理想としがちなことが、母親への見えない圧力となり、家事分業を阻んでいることを指摘していらっしゃいます

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■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード

「ジェロントロジー」 「ユニコーン企業」

■お薦め名著

『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』

スコット・ギャロウェイ 著 渡会 圭子 翻訳

■ズーム・アイ

子曰、性相近也、習相遠也

人材開発部 森本 有紀

子曰、性相近也、習相遠也 『先生がおっしゃった「人間の生まれつき持っている性質は、互いによく似たものである。しかし、その後の習慣によって互いに隔たりが大きくなるものである」と』